芝刈りから人が降りる ゴルフ場ロボットが「安くなる」のは8年シナリオから
GOLF DNA編集部🌐

3行まとめ
- 既存芝刈り機を後付けで自律化する日本の研究と、北イタリアの実地比較を追った。
- ロボットは毎日刈れる一方、芝品質は従来リール機が上回る月もあり、5年耐用では年換算費用も安くならなかった。
- 8年シナリオで費用は逆転。
ゴルフ場の朝は、プレーヤーが来る前から忙しい。フェアウェイを刈り、ラフを整え、機械を洗い、刃を確認する。
その芝刈りから、人が降り始めている。
ただし「ロボットに替えれば、人件費が消えて、芝もきれいになって、すぐ元が取れる」というほど話は単純ではない。日本の研究とイタリアの実地比較を並べると、むしろ見えてくるのは、どこまで自動化し、どこを人に残すかという現実的な線引きだ。
日本では「今ある芝刈り機」をロボット化
芝浦工業大学や西武建設などが進めた「HerbF」プロジェクトは、2018年に始まった。
発想が面白い。新しいロボット専用機を買うだけではなく、ゴルフ場がすでに持っている芝刈り機へ後付けの自律走行装置を載せる。さらに、熟練キーパーの刈り取り操作を自律機へ移すことを目標にした。
2023年に公開された論文の抄録では、実際のゴルフ場で行った試験から、後付け型の自律走行による芝刈りに実用可能性が示されたとしている。
つまり日本側の問いは、「人をロボットに置き換える」より少し現実的だ。
今ある機械と、今いる熟練者のノウハウを、どう自動化へ持ち込むかである。
イタリアでは同じフェアウェイを半分ずつ
では、専用の自律芝刈り機に替えると、芝は本当に良くなるのか。
北イタリアのMontecchia Golf Courseでは、2023年に2本のフェアウェイを半分ずつ分け、一方を従来のリール式芝刈り機、もう一方を自律芝刈り機で管理した。
刈高はどちらも16mm。従来機は週2回、自律機は毎日、週7回刈った。
自律機は「人が乗らないから、こまめに刈れる」。これは大きな強みだ。ところが、結果はロボットの圧勝ではなかった。
芝の見た目は、まだ従来機に分があった
芝の品質を1〜9で評価し、6を許容水準とした月別データでは、従来機の平均値が5月、7月、8月、9月に自律機を有意に上回った。
自律機は6月6.2、7月6.0、8月6.0で許容水準に届いた一方、5月は3.7、9月は5.3だった。
論文の結論では自律機でも概ね許容できる品質を維持できたと整理されているが、月別の数字を見る限り、季節を通じて常に同等だったわけではない。
「毎日刈れば、必ず従来機よりきれいになる」とまでは言えない。
一方で、根の長さや重さ、土壌温度、硬さなどでは大きな差が確認されなかった項目もある。短期間の一つのコース試験なので一般化はできないが、自律化で芝がすぐ悪くなる、という結果でもなかった。
「無人化=安い」ではなかった
さらに面白いのが費用だ。
研究では、27ホールのMontecchiaを想定し、フェアウェイ約10.69haを管理する年間費用を試算した。
従来のリール機は年間6万2007ユーロ。自律機は、耐用年数を5年と置くと6万3689ユーロで、むしろ少し高い。
ところが8年使える想定では4万6336ユーロ、10年では4万552ユーロまで下がる。
表の試算では、8年シナリオから年換算費用が逆転する。著者は、自律機が8年を超える耐用年数を確保できれば、従来機の現実的な代替になり得ると結論づけた。
つまり勝負を決めるのは「ロボットか人か」だけではなく、機械が何年もつかでもある。
環境面でも、同じ27ホールを想定したCO2排出量は、従来機が年間1万3953kg、自律機が4713kgという試算だった。ただし、これは燃料や電力の条件を置いたモデル計算であり、どのコースでも同じ数字になるわけではない。
人がいなくなるのではなく、乗らなくなる
そして「自律」という言葉にも注意したい。
この研究でも、人の仕事をゼロにはしていない。機械の移動、洗浄、刃交換などの作業時間を約1時間、アプリによる日常点検と設定を約5分として費用計算に入れている。
芝刈り機に乗り続ける必要は減る。でも機械を見る人、刃を替える人、コースの状態を判断する人は残る。
単純な走行作業を機械へ渡し、人は判断や仕上げへ移る。ゴルフ場の芝管理にとっては、その方が現実に近い未来なのだろう。
出典:jstage.jst.go.jp / acsess.onlinelibrary.wiley.com / husqvarna.com
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