ゴルフ場が理科室になった グリーンの速さ・土・水を学ぶ授業が全米50州へ
GOLF DNA編集部🇺🇸

3行まとめ
- 米国の「ファースト・グリーン」は、ゴルフ場を土・水・数学・生態を学ぶ野外教室として使う教育プログラムだ。
- 2018〜2025年に429回・2万4832人へ広がり、2026年9月8日のニューメキシコ開催で全50州に到達。
- 9月15日時点では2018年以降ほぼ3万人が参加した。
ゴルフ場に来た子どもが、最初に持つのはクラブとは限らない。
グリーンの速さを測り、土を採り、水の流れを調べ、野生生物を観察する。米国の教育プログラム「ファースト・グリーン」は、ゴルフ場そのものを理科や数学の教室として使っている。
2026年9月8日、ニューメキシコ州アラモゴードのデザート・レイクス・ゴルフコースで17人の高校生を迎えた授業が行われた。これでファースト・グリーンのフィールドトリップは米国50州すべてで実施されたことになった。
ゴルフを教える活動が全米へ広がった、という話ではない。面白いのは、ゴルフ場へ来る理由を「プレー」以外に作ったことだ。
グリーンは数学、砂は土壌学になる
ファースト・グリーンは1997年に米国北西部で始まり、2018年から米国ゴルフ場管理者協会が運営を担っている。
2018年の現場紹介では、子どもたちはスティンプメーターを使ってグリーンの速さを測り、ローラーをかける前後の違いを比べた。土を採取し、自生植物や野生生物を観察し、最後にはパッティングも体験している。
現在の教材を見ると、さらに幅が広い。土壌、水質、水の節約、昆虫、生息環境、数学、簡単な電気回路、写真、ゴルフホールの設計まで並ぶ。
普段ゴルファーが何気なく歩いている場所が、そのまま教材になる。グリーンは球を転がす面であると同時に、距離や測定を考える実験場になる。バンカーや土壌は粒の違いを学ぶ素材になり、池や排水は水の循環を考える題材になる。
つまり、新しい校舎を建てるのではなく、すでにあるゴルフ場を「野外の実験室」として使う仕組みだ。
47州・2万4832人から、全50州へ
規模の拡大も数字で追える。
米国ゴルフ場管理者協会によると、運営を引き継いだ2018年から2025年までに429回のフィールドトリップが行われ、2万4832人の児童・生徒が参加した。開催実績は47州まで広がっていた。
そして2026年9月8日のニューメキシコ開催で50州目に到達。9月15日の公式発表では、2018年以降の参加者は「ほぼ3万人」とされている。
ここで「全50州」の意味は少し注意が必要だ。50州に常設の教育拠点がある、という数字ではない。少なくとも一度、各州のゴルフ場でファースト・グリーンのフィールドトリップが開催されたという到達実績だ。
それでも、ゴルフ場を学校教育へ開く型が、地域をまたいで使われたことは分かる。
ゴルフ未経験でも、最初から客にしなくていい
この仕組みで興味深いのは、参加者を最初から「未来のゴルファー」として扱わなくても成立することだ。
公式資料では、多くの子どもにとってフィールドトリップが初めてゴルフ場へ足を踏み入れる機会だと説明されている。目的はまず、土、水、生態、数学などを現場で学ぶことにある。
2024年には100万ドルの寄付を基に、従来の科学・技術・工学・数学へ芸術を加え、高校生向け教材や教室用助成、ゴルフ業界の仕事を知る機会も拡充された。
ここでも入口は「ゴルフを始めよう」だけではない。芝を育てる仕事、環境管理、設計、機械、科学といった別の興味からゴルフ場へ入れる。
約3万人が、その後ゴルファーになったとはまだ言えない
一方で、数字を大きく読み過ぎるべきではない。
今回確認したファースト・グリーンと米国ゴルフ場管理者協会の公開資料には、参加した子どもの何%がその後ゴルフを始めたのか、何%が芝管理などの仕事へ進んだのかを示す長期追跡割合は見当たらない。
したがって「約3万人の新規ゴルファーを生んだ」「人材不足を解決した」とまでは言えない。確認できるのは、ゴルフ場へ来た人数、授業内容、開催地域が広がったことまでだ。
それでも、この取り組みにはゴルフ界にとって面白い発想がある。
ゴルフを知らない人へ、最初から18ホールを回らせる必要はない。まずゴルフ場へ来る理由を作る。その理由は、理科でも、環境でも、仕事でもいい。
ファースト・グリーンが全50州へ広げたのは、ゴルフそのものだけではない。
「ゴルフを始める前に、ゴルフ場へ来る理由」を増やす仕組みだった。
出典:GCSAA(2) / gcmonline.com / thefirstgreen.org(2・3)
関連記事
87分録音して分かった ゴルフ場の「静けさ」は無音ではなく、自然音が主役だった
3行まとめ
- ポーランドの9ホールで、36人への質問と87分間の連続録音を組み合わせた研究が行われた。
- 63%が音環境を好意的に評価し、聞かれた音は自然音が50%超。
- ゴルフ場の「静けさ」は無音ではなかった。