男女156人が1つの順位表で競った Scandinavian Mixedはどう「公平」を作ったのか
GOLF DNA編集部🌐

3行まとめ
- 男子78人・女子78人が同じ順位表で1つのトロフィーを争ったScandinavian Mixed。
- 2022年は女子5,929ヤード、男子7,001ヤード。
- 距離を同じにせず、グリーンを狙う番手を近づける設計で混合競技を成立させた。
「男女混合のゴルフ大会」と聞くと、まず浮かぶ疑問がある。男子と女子は、本当に同じティーから打つのか。
Scandinavian Mixedの答えは、違う。
この大会は男子78人、女子78人の計156人が同じコースでプレーし、1つの順位表、1つの賞金総額、1つのトロフィーを争った。ただし、男女の総距離まで同じにはしなかった。競技としてそろえようとしたのは「ティーの位置」ではなく、その先にあるショットの難しさだった。
同じ順位表でも、同じティーではない
BBCが報じた2022年大会の総距離は、女子が5,929ヤード、男子が7,001ヤード。差は1,072ヤードあった。
この差は、単純に女子を前から打たせたというだけではない。大会ディレクターのMikael Erikssonは、男女がグリーンを狙うときに同じような番手を持てるようコースを設定したと説明している。狙ったのは、同じ距離を打たせることではなく、セカンドショット以降の要求を近づけることだった。
2024年のVasatorps Golfklubbでも、男女別の距離設定は続いた。大会前の報道では、女子5,772ヤード、男子7,295ヤードで、差は1,523ヤード。コースが変われば設定距離も変わるが、女子が前方のティーを使い、男女が同じ順位表で競えるよう調整する構造は続いた。
つまりScandinavian Mixedの「同条件」は、同じ場所から同じ距離を打つという意味ではない。飛距離差をティー設定で調整し、そこから先の競技を1つの順位表で比べる方式だった。
賞金は1つ、シーズンのポイントは別
大会創設時の公式説明では、男女は1つの賞金総額を争い、双方のツアーで世界ランキングポイントの対象になった。
一方で、シーズンを通じたポイント制度まで完全に共通化したわけではない。European Tourの選手には当時のRace to DubaiやRyder Cup関連ポイント、LETの選手にはLETの年間順位に関わるポイントが与えられた。
同じ大会の同じ順位表で競う。しかし、その結果をそれぞれの年間シーズンへ持ち帰る先は別だった。Scandinavian Mixedは、男子ツアーと女子ツアーを完全に一体化した大会ではなく、1大会の勝負だけを共通化した仕組みだった。
Linn Grantの9打差勝利は、何を示したのか
2022年、その仕組みの中でLinn Grantが一気に歴史を変えた。
Grantは通算24アンダーで優勝。2位のHenrik StensonとMarc Warrenは15アンダーで、差は9打だった。GrantはDP World Tour史上初の女性優勝者になった。
ただし、順位表を見ると「女子のティーが有利だったから女性が上位を独占した」という結果ではない。次に成績の良かった女子Gabriella Cowleyは10アンダーで、Grantとは14打差があった。Grantだけが大きく抜けていた。
2年後の2024年は、さらに違う形になった。Grantは最終日を首位と11打差でスタートしながら逆転し、17アンダーで2度目の優勝。DP World Tourでは複数回優勝した初の女性となり、11打差からの逆転は同ツアー史上最大の最終日逆転差として記録された。
そのすぐ後ろは男子だった。Calum HillとSebastian Söderbergが16アンダーで2位タイ。女子のJohanna Wrigleyも13アンダーで4位タイ集団に入った。
2022年はGrantが一人だけ突出し、2024年は男女が上位に混在した。少なくとも結果は、前方ティーを使う女子全体が一方的に有利になる単純な構図ではなかった。
では、この大会は今も続いているのか
ここが現在地だ。
DP World Tourが公表した2025年と2026年の公式日程にScandinavian Mixedはなく、LETの2026年公式日程にも掲載されていない。今回確認できた最後の開催は、Grantが2度目の優勝を飾った2024年大会である。
ただし、両ツアーから「Scandinavian Mixedを恒久的に終了する」とした公式な理由説明は確認されていない。したがって、2026年時点で言えるのは「2025年、2026年の公式日程にはなく、2024年が最後の確認済み開催」というところまでだ。
男女混合という発想そのものが消えたわけでもない。DP World Tourの公式な振り返りには、男女混合チームのGolfSixes、男女を同時開催するAustralian Open、Jordan Mixed Open、World Invitational、障害者ゴルフの混合大会など複数の形式が並ぶ。2028年ロサンゼルス五輪でも混合チーム競技が予定されている。
ただ、それらはすべてScandinavian Mixedと同じ仕組みではない。男子78人、女子78人が1つの順位表で72ホールを競う方式が、そのまま世界標準になったわけではない。
Scandinavian Mixedが見せたのは、「公平」を同じティー、同じ総距離と定義しなくても混合競技は設計できる、という一つの答えだった。
男女で飛距離が違うなら、スタート地点をずらす。そのうえで、グリーンを狙うクラブやショットの要求を近づけ、最後は同じ順位表で決める。
Linn Grantの2勝は、その仕組みの中で女性が参加できただけではなく、男子を含むフィールド全体の勝者になれることを実際の結果で示した。そして2026年現在、その大会自体は公式日程から姿を消している一方、男女を同じ競技空間で戦わせる試みは、別の形で続いている。
出典:DP World Tour(2・3・4・5・6・7・8) / bbc.co.uk / read.nxtbook.com / si.com
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