徹夜行列をやめた聖地が残した条件
GOLF DNA編集部🌐

3行まとめ
- セントアンドリュースのオールドコースでは、12時間を超える徹夜待ちまで生んだ一人客の行列を2024年に無作為抽選へ変更した。
- ところが、現地で本人が登録する条件は残した。
- 何を捨て、何を守ったのか。
セントアンドリュースのオールドコースで、一人で空き枠を狙うゴルファーには、かつて「早く並べるほど有利」な世界があった。
一人客向けの待機列は1990年代に正式な運用として定着した。ところが需要が増えた過去10年ほどは、プレーの機会を求めて12時間を超えて夜通し待つケースまで生じていた。
2024年3月12日、セントアンドリュース・リンクス・トラストはこの仕組みをやめ、無作為抽選へ切り替えた。
消したのは「長く並んだ人が有利」という部分だった。残したのは「本人が現地まで来ている」という条件だ。
なぜ徹夜行列をやめたのか
運営側が示した理由ははっきりしている。
新制度の目的は、オールドコースへのアクセスをより安全に、公平に、そして楽しめるものにすることだった。最高経営責任者のニール・コールソンは、待機列の拡大が利用者の体験を損ね、スタッフにとっても期待値を管理しにくくなっていたと説明している。
つまり問題は、人気そのものではなかった。
限られた空き枠を取るために、徹夜できる時間や体力まで競争条件になっていたことだ。そこで運営側は、空き枠の数を増やすのではなく、「誰をその枠へ入れるか」の決め方を変えた。
先着順を捨て、17時に無作為抽選
2024年導入時の一人客向け抽選「シングルズ・デイリー・ドロー」は、プレー前日に本人が現地で登録する方式だった。
受付は9時から17時。オールド・パビリオンかリンクス・クラブハウスの端末で登録し、17時に無作為抽選を行う。結果はショートメッセージとメールで届く。
大きな違いは、朝9時に登録しても16時台に登録しても当選確率が変わらないことだ。従来は長く待つほど前に出やすかったが、新制度では受付時間内に登録すれば、その後は抽選に任せる。
抽選でティータイムを得られなかった人には待機順位が付く。プレー当日の朝になって遅い時間帯に空きが出れば、そこから連絡が来る可能性もある。
それでも「現地本人」を残した理由
ここが今回の制度変更の核心だ。
完全なオンライン抽選にすれば、世界中から応募できる。それでも運営側は、本人がセントアンドリュースに来て登録する条件を残した。
公式説明では、旧来の待機列が持っていた本来の意図を守るためとしている。登録時には本人の写真を撮影し、代理応募や同じ日の複数応募を防ぐ。応募は1人1日1回だが、翌日に再び申し込むことはできる。
つまり、捨てたのは「どれだけ長く並べるか」という競争であって、「現地まで来た一人客に空き枠を渡す」という考え方ではなかった。
伝統をそのまま残したのでも、完全にデジタル化したのでもない。現地にいることは条件として残し、徹夜することだけを条件から外した。
初年度は1万4489件の応募、3677人がプレーへ
制度変更が実際に使われたかは数字でも確認できる。
初年度の公表値は、応募エントリー1万4489件で、そのうち3677人がティータイムを確保した。最も応募が多かった日は227件だった。
3677を1万4489で割ると約25.4%になる。
ただし、これは「応募した人の約4人に1人が当選した」という個人単位の当選率ではない。連日応募できるため、1万4489件は応募エントリーの総数であり、ユニークな人数かどうかは公表値から確定できない。
別の2025年の追跡取材では、導入後約13か月で3600人を超える訪問ゴルファーを既存組の空き枠へ入れたと運営側が回答している。
行列をなくしただけではない。空いた1人分を実際のプレーへつなぐ仕組みとして動いたことが分かる。
通常の抽選とは別の入口
この一人客向け抽選は、オールドコースの通常抽選を置き換えたものではない。
通常抽選は2〜4人の組が対象で、2024年の公式説明ではプレー2日前の14時までオンラインで応募し、48時間前に抽選する別制度だった。
一人客向け抽選の役割は、すでにある2人組や3人組の空き1枠へ一人を入れることにある。
同じ「抽選」でも、組で申し込む人と、一人で空き枠を待つ人では入口を分けている。この分離によって、通常予約の仕組みを崩さずに、一人分だけ空いた枠を埋められる。
出典:standrews.com(2) / firstcallgolf.com / GOLF.com / Golf Business News / thegolfbusiness.co.uk
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