前のティーは「逃げ」じゃない 23.7万人が試した距離選びの実験
GOLF DNA編集部🇺🇸

3行まとめ
- 2011年、PGA of AmericaとUSGAは、平均ドライバー飛距離に合わせて前のティーを選ぶ「TEE IT FORWARD」を実施。
- 約23.7万人が参加し、調査では70%が「より楽しい」と回答した。
- ただし自己申告調査で、前へ出れば必ずスコアや速度が改善する証明ではない。
ティーイングエリアに立つと、色が妙に身分証のように見えることがある。
後ろから回れば上級者。前へ出れば少し負けた気がする。
そんな空気に対して、2011年にPGA of AmericaとUSGAが始めた「TEE IT FORWARD」は、かなり単純な問いを投げかけた。
その距離、本当にあなたの飛距離に合っていますか。
2011年、ティー選びを「見栄」から「距離」へ
TEE IT FORWARDは、平均ドライバー飛距離に合わせてコース総距離を選ぼう、という全国施策だった。
たとえば当時のUSGAは、普段6,500〜6,700ヤードで回っている人なら6,000〜6,200ヤードへ、6,000〜6,200ヤードなら5,700〜5,800ヤードへ前進する例を示している。
狙いは単にスコアを簡単にすることではない。
パー4の2打目で毎回フェアウェイウッドや長いユーティリティを持つのではなく、ときには6番、7番、8番アイアンも使える距離にする。プロが長いコースで経験している「いろいろなクラブを使うゴルフ」を、飛距離の違うアマチュアにも取り戻そうという発想だった。
約23.7万人が試し、70%は「楽しくなった」
2011年のプロモーションには1,900を超える施設が参加し、PGAとUSGAは約23万7,000人が前のティーを利用したと報告している。
その後、実際に体験した3,000人超への調査では70%が「ラウンドがより楽しくなった」と回答。90%超が友人へ勧めるとし、約半数はプレーが速くなったと答えた。
初期調査には、85歳の女性がラウンド時間を30分縮め、数年ぶりに100を切ったという例も残っている。
ただし、ここは切り分けたい。
これらは参加者の自己申告を中心にした調査で、前のティーへ移した人と移していない人を無作為に比べた実験ではない。前へ出れば必ず30分短くなる、必ずスコアが良くなる、と証明した数字ではない。
それでも「距離を変えただけで体験が変わった」と感じた人が大勢いたこと自体は、この施策の面白いところだ。
それから十数年たっても、後ろ過ぎる人は多い
話は2011年だけでは終わらない。
USGAが後に行ったスコア登録データの分析では、打撃距離に対して後ろ過ぎるティーから普段プレーしている人が、女性で約75%、男性で約50%いるとされた。
別の2万人調査では、コースが「しばしば、または時々長過ぎる」と感じる人が57%いた。
つまり、TEE IT FORWARDが広く知られるようになっても、「自分に合う距離を選ぶ」という問題は解決していない。
原因としてUSGAは、飛距離の過大評価だけでなく、仲間からの圧力、前方ティーの選択肢不足なども挙げている。
ゴルフのティー選びは、数字だけでなく心理の問題でもある。
今の基準は、ドライバーより7番アイアン
現在のUSGAは「Best Tees」という考え方を進めている。
面白いのは、基準に7番アイアンの飛距離を使うことだ。調査ではゴルファーが7番アイアンの自分の距離を比較的把握しやすく、レッスンでも基準に使われやすかったためだという。
平均値を使ったパー72のモデルでは、7番アイアンが100ヤードの女性ゴルファーに約4,400ヤード、138ヤードの男性ゴルファーに約6,100ヤードという例が示されている。
もちろん、これは一律の答えではない。
現在の案内では、打ち上げ、狭いフェアウェイ、強制キャリー、深いバンカーなど、コース自体の難しさによってさらに前後へ調整する考え方が示されている。
距離が同じ6,000ヤードでも、打ちやすさはコースごとに違うからだ。
「前のティー」は年齢でも性別でも決まらない
もう一つ重要なのは、前のティーが「シニア用」「女性用」と決められているわけではないことだ。
USGAの世界ハンディキャップ制度のFAQでも、年齢、性別、ドライバー飛距離だけで特定のティーを義務付けてはいない。普段のラウンドでは、どのティーを使うかはプレーヤー自身が選べる。
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