ヤギ除草で人手は本当に75%減る?
GOLF DNA編集部🌐

3行まとめ
- ヤギを除草に使うと、本当にゴルフ場管理は楽になるのか。
- 米国の実例では自然化エリアの労働時間を75%減らした推定もある。
- 一方で、柵、移動、動物の健康管理、捕食者対策など別の仕事が増える。
ゴルフ場の除草と聞けば、芝刈り機や刈払機、除草剤を思い浮かべる。ところが米国では、その仕事の一部をヤギに任せたコースがある。
面白いのは「ヤギが草を食べる」ことではない。人が入りにくい斜面や自然化したラフで、薬剤や機械、人手を減らせる一方、電気柵や動物管理という別の仕事が生まれることだ。
結論から言えば、ヤギはコース管理全体を置き換える万能な省力化策ではない。確認できた事例では、管理しにくい区域に仕事を絞ることで効果を出していた。
75%減ったのは「コース管理全体」ではない
2017年、米マサチューセッツ州のコハセット・ゴルフクラブは、自然化したラフに広がるブライアー、アザミ、ツタウルシなどの管理にヤギと羊を使った。
動物は電気柵で囲った区画を順番に移りながら草を食べる。米国ゴルフ協会の事例報告では、この方法によって自然化エリアの維持に必要な労働時間が推定75%減ったとされている。
ここで重要なのは「75%」の範囲だ。コース全体の人件費が75%減ったわけではない。対象は自然化エリアの維持作業で、導入前後の実労働時間、測定期間、算式は公開されていない。単一コースの推定値として見る必要がある。
同クラブは対象区域で除草剤を使わなくなり、時間と費用を節約したと説明している。ただ、ヤギの契約費や柵の管理費と、従来作業の費用を差し引いた純粋な節約額までは公表されていない。
人の仕事が消えるのではなく、仕事の種類が変わる
ヤギを入れれば放っておけるわけでもない。
コハセットでは農場側が動物、電気柵、補助飼料を用意し、対象区画を移動させた。コース側にはヤギが食べ残した部分を刈る作業が残った。
さらに一度は脱走が起き、柵を改良。捕食者への対策も強化した。球が柵の中に止まった場合に備え、コースはローカルルールまで用意している。
つまり、省けるのは草を切る・薬剤を散布するといった作業の一部だ。その代わりに、柵、移動、給水や健康確認、安全対策など「生き物を運用する仕事」が加わる。
急斜面では2年連続で再採用された
この使い方が一度きりの珍企画ではない例もある。
米オレゴン州ポートランド市が運営するイーストモアランド・ゴルフコースでは、2024年に13番ホールの谷状の急斜面へ10頭のヤギと1頭のラマを投入した。対象はクレマチス、ブラックベリー、イングリッシュアイビーなどの過繁茂で、期間は2〜3週間。狙いは除草剤や重機を使わずに植生を管理することだった。
翌2025年、市の担当者は前年の結果が期待を上回ったとして、同じ管理目的で再びヤギとラマを導入した。
ただし、ここでも削減できた労働時間や薬剤量、契約額は公表されていない。「2年続けて採用された」という事実は確認できても、何%安くなったかまでは分からない。
費用感の参考になる別事例はある。2010年に米カリフォルニア州のパサティエンポ・ゴルフクラブが12エーカーを処理した際は、150〜200頭を7週間使う費用が1万2,000ドル、手作業なら10万5,000ドルと米国ゴルフ協会が報告した。ただし、これは別コース、別条件の数字であり、コハセットやイーストモアランドへそのまま当てはめることはできない。
2026年にもゴルフ場周辺で使われている
2026年6月には、ネバダ州スパークス市がヤギ放牧をワイルドクリーク・ゴルフコース周辺へ拡大した。目的は急斜面や難しい地形の植生管理に加え、山火事の燃料となる植物を減らすことだった。
市は一時的な電気柵、犬への注意、熟練した放牧管理、過放牧を避ける運用なども案内している。2026年時点でも、動物を使った植生管理は自治体の実務として続いている。
確認できた事例に共通するのは、グリーンやフェアウェイの日常的な芝管理をヤギへ置き換える発想ではないことだ。自然化したラフ、急斜面、人や重機が入りにくい場所へ仕事を限定している。
ヤギ除草の価値は「人間が要らなくなる」ことではない。草を切る仕事の一部を生き物へ移し、代わりに柵と動物を管理する仕事を引き受ける。その交換が成立する場所では、ヤギは珍しいイベントではなく、コース管理設備の一つになり得る。
出典:USGA(2) / portland.gov(2) / gogoatoregon.com / ebs.publicnow.com
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