霜の朝、カート1回で芝は傷んだ
GOLF DNA編集部🇺🇸

3行まとめ
- 霜が残る芝では、歩行・カート・ローラーの傷み方は同じではない。
- 2022〜2025年のオレゴン州の実地試験では、足交通の影響が確認されない条件がある一方、カートは1回の通過でも目立つ損傷が出た。
- 研究結果とUSGAの現行案内を突き合わせ、一律停止をどこまで見直せるのかを整理する。
霜の朝、ゴルフ場がスタートを止める。理由は単純に「芝の上を動けば傷む」からだと思われがちだ。
ところが、2022年にオレゴン州コーバリスで始まった実地試験では、歩くことと、カートやローラーを走らせることは同じ結果にならなかった。
一年生ブルーグラスのパッティンググリーンでは、16人分相当の足踏みを8回の霜イベントで与えても、目で見える損傷も、植生の緑の状態を見る指標の低下も確認されなかった。一方、同じ予備試験のクリーピングベントグラスのフェアウェイでは、カートが1回通過しただけでも目立つ損傷が出た。
この差が示すのは「霜待ちは不要」という話ではない。むしろ、歩行、カート、整備機械を全部ひとまとめに止める考え方を、どこまで細かく分けられるかという話だ。
2022年、足跡と車輪で結果が分かれた
この試験はUSGAの農学・研究スタッフの要請で始まり、目視評価と植生の状態を数値で見る指標を使って調べられた。USGAの報告では、一年生ブルーグラスの2つのグリーンで、歩数を0、6、12、24、48歩などに分けた比較も行われている。
その研究整理で、16人分相当の足踏みを8回の霜イベントで与えた条件でも、一年生ブルーグラスでは明確な悪化が確認されなかった。
しかし、車輪は違った。クリーピングベントグラスのフェアウェイでは、カート1回の通過でも目立つ損傷が出た。
「人が歩けるならカートも動かせる」とは言えない結果だった。
2023〜2025年もカートとローラーの影響は残った
試験はその後も続き、2023〜2025年にはカートとローラーの交通を受けた区画で、交通のない区画より植生状態の指標が継続的に低くなる傾向が確認された。
朝の交通の方が午後より悪化が大きい傾向もあった。ただし、午後なら機械を走らせてよいという単純な結果でもない。冬季に交通を繰り返すと、午後でもカートやローラーによる低下が出る場合があった。
足交通も「影響なし」で統一されたわけではない。
2025年のペレニアルライグラスでは足交通による低下が出た一方、クリーピングベントグラスのフェアウェイでは2023〜2025年に足交通の影響が確認されなかった。
同じ「歩く」でも、芝種が変われば結果は変わる。
霜の朝は毎年同じ条件ではなかった
もう一つ重要なのが、凍り方そのものが年ごとに違ったことだ。
2023年は朝に地表と土壌の凍結が頻繁に確認された。2024年は朝の地表凍結が少なく、土壌凍結は確認されなかった。2025年は朝の地表凍結は多かったが、土壌凍結は確認されていない。
つまり、「気温が何度なら歩行可」「霜が消えたらカート可」という一つの数字だけでは、この試験結果をそのまま運用基準にはできない。
研究が細かくなってもUSGAの案内は慎重なまま
研究側は、凍結時の交通で芝の状態が悪化することは認めつつ、芝を枯死させるほどの危険性は従来の一般的な案内が示すより低い可能性があるとしている。
それでも、2025年10月に更新されたUSGAの一般向け案内は慎重だ。霜が付いた芝を歩いたり車両で通ったりすると細胞が傷み、長く損傷が残る可能性があると説明している。特に低く刈った芝や、同じ場所へ交通が集中する場合を問題にしており、グリーンでは1組だけでも300歩を超えることがあるとしている。
実験で限定条件を細かく調べることと、実際のゴルフ場で多数の人と機械を安全に動かす運用は同じではない。ここが、研究結果と現場向け案内が完全には一致しない理由の一つになる。
日本で「歩行だけ先に解禁」はまだ一律には決められない
今回の実地試験はオレゴン州で行われた。2026年9月時点で、日本の芝種、気候、霜の強さ、集中歩行を同じ設計で検証した独立試験は確認されていない。
カップ周辺のように歩行が集中する場所や、18ホールを通して多数の組が歩いた場合が、試験条件と同じ結果になるかも未確認だ。コースごとに使える普遍的な温度や霜状態の安全基準も確立されていない。
だから、この研究だけを根拠に「霜の朝でも歩行なら一律に開放できる」とは言えない。
ただ、従来の一律停止を考え直す材料はある。判断を分けるなら、まず歩行、カート、ローラーなどの整備機械を別々に見る。そのうえで芝種、地表や土壌の凍結、交通の集中度を重ねる必要がある。
霜待ちで最初に見直すべきなのは、「待つか、待たないか」だけではない。「何を止めているのか」だ。
出典:winterturf.umn.edu / USGA(2・3)
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