AEDが使われたのは4件に1件
GOLF DNA編集部🇺🇸

3行まとめ
- 米国CARESがカバーする地域の406コース・院外心停止476件では、居合わせた人によるAED使用は24.6%。
- 原著本文表の退院生存率は使用群47.0%、未使用群25.1%で、調整解析でも生存との関連が残った。
- ただし観察研究で因果は確定できない。
ゴルフ場にAEDがある。その事実だけでは、心停止が起きたときに「使える」とは限らない。
2025年に公表された米国の研究は、2020〜2023年にCARES(米国の心停止登録)がカバーする地域の406ゴルフ場で確認された院外心停止476件を調べた。対象はレクリエーション施設として登録された心停止記録をゴルフ場住所と結び、周辺400m以内の症例を確認して抽出している。CARESは米国全域のすべての心停止を網羅する登録ではないため、「全米すべてのゴルフ場」を調べた研究ではない。
居合わせた人が心肺蘇生を行った割合は73.7%。AEDが使われた割合は24.6%だった。退院まで生存したのは全体の30.5%で、その生存者の97.2%は良好な神経学的転帰だった。
最も目を引くのは、AEDが実際に使われたかどうかの差だ。原著本文の表では、AED使用群の退院生存率は47.0%、未使用群は25.1%。複数の要因を調整した解析でもAED使用は退院生存と関連し、調整オッズ比は1.91(95%信頼区間1.10〜3.33)だった。
ここは注意が必要だ。論文の抄録には37.9%対18.7%という別の生存率が記載されているが、本文の症例数と表の集計は47.0%対25.1%と整合している。本稿では本文表の数値を採用する。
数字だけなら「AEDを使えば生存率が大きく上がる」と読みたくなる。しかし、この研究は無作為試験ではなく観察研究だ。AEDが早く届くコースでは、発見の早さ、スタッフ体制、訓練、救急隊との連携など別の条件も整っていた可能性がある。そのため47.0%対25.1%を、AEDだけの確定した因果効果として扱うことはできない。
それでも、この研究がゴルフ場の弱点をかなり具体的に映したことは確かだ。心肺蘇生は7割を超える症例で行われていたのに、AEDが使われたのは4件に1件ほどだった。
しかも「使われなかった理由」までは分からない。研究データでは、AEDが設置されていたのに現場へ届かなかったケースと、そもそもAEDがなかったケースを区別できない。設置台数を数えるだけでは、救命体制の実力を測れないわけだ。
約10年前のミシガン州の研究を見ると、この課題の原型が見える。2010〜2012年に確認された心停止40件に対し、AEDを備えていたコースは22.5%。救急隊到着前にAEDが使われたのは2件だけで、スタッフへの訓練を必須としていたコースも17.9%だった。911通報から患者へ到着するまでの平均は9分45秒だった。
もっとも、2014年の研究と2025年の研究を単純な「改善率」で比べることはできない。前者はコースへの調査を含むミシガン州の研究で、設置率を見ている。後者はCARES参加地域の登録データから症例を抽出し、実際にAEDが使われた割合を見ている。22.5%と24.6%は同じ物差しではない。
私営コースと公営コースの差も示唆的だ。2025年研究ではAED使用率が私営32.1%、公営19.7%だった。ただ、これも「私営だから救命体制が優れている」とは言えない。人員、設備、訓練などが違う可能性があり、研究は差の原因まで特定していない。
では、広いゴルフ場では何を考えるべきなのか。
2025年の米国心臓協会の救命指針は、公共のAED対策を「機器を置くこと」だけではなく、AEDの配置、訓練された対応者、連絡と対応を組み合わせた仕組みとして捉えている。緊急対応計画の手引きでは、AEDを理想的には約3分で取りに行って現場へ届けられるよう配置することを目安とし、屋外施設では固定式だけでなく移動式のAEDも選択肢としている。
この「約3分」という考え方をゴルフ場へ当てはめると、クラブハウスにAEDがあるかどうかだけでは足りないことが分かる。18ホールに人が散らばる場所では、倒れた場所を素早く特定し、近いAEDを選び、現場まで運び、実際に使えるところまでが一つの運用になる。
配置を増やせば何%生存率が上がるのか。移動式にすれば何分縮まるのか。スタッフ訓練をどの程度行えば結果が変わるのか。そこまでをゴルフ場で前向きに比較した研究は、現在の材料では確認できない。
だから2026年時点で言えるのは、AEDの「所有」と「救命効果」を直結させることではない。CARES参加地域の476例では、実際にAEDが使われた症例ほど退院生存率が高かった。一方で使われたのは4件に1件ほどだった。
ゴルフ場のAEDで本当に問われるのは、入口の壁に機械が掛かっているかではない。心停止が起きた場所まで、必要な数分のうちに届き、実際に使われる仕組みになっているかだ。
出典:pmc.ncbi.nlm.nih.gov / tandfonline.com / cpr.heart.org(2)
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