ストックホルム都市圏、池4分の1超がゴルフ場
GOLF DNA編集部🇸🇪

3行まとめ
- 2009年のストックホルム研究では、恒久淡水池167か所のうち44か所、26.3%がゴルフ場内にあった。
- クシイモリはゴルフ場池で有意に多く、オオシロカオトンボも調査ではゴルフ場池だけで確認されたが、2026年まで同じ池で維持されたかは未確認。
- 米国・日本の後続研究から見えるのは、ゴルフ場の池は条件次第で生息地になり得るという現在地だ。
2009年に発表されたストックホルム研究で、都市圏の恒久淡水池を地図に落としてみると、意外な数字が出た。確認された167か所のうち44か所、26.3%がゴルフ場の中にあった。
ゴルフ場というと芝の広さに目が向きやすい。だがこの研究が見たのは、都市に残る「池」の役割だった。2009年の研究は、コース内の池が湿地性の生き物の生息地としてどこまで機能するのかを24の池で比べた。
12対12で比べた池の生き物
対象は、ストックホルム中心部に近い6つの18ホールコースから選んだ12のゴルフ場池と、近くの公園や保護地域にある12の池。水生無脊椎動物は春から初夏に標準化した網・キック採集で調べ、両生類は夜間の目視とライトで確認した。
ここで記録された「71種」は、水生無脊椎動物の種数だ。池に71種類の希少動物がいた、という意味ではない。
結果も、ゴルフ場池が全面的に優れていたわけではなかった。水生無脊椎動物の種数全体には有意な差がなく、ゴルフ場池の群集はむしろ似通う傾向があった。
それでも、保全上目を引く違いが二つ出た。クシイモリはゴルフ場池で有意に多く確認され、オオシロカオトンボはこの調査対象ではゴルフ場池だけで見つかった。
面白いのは「池の質」だけではなく「池の数」
この研究でさらに重要なのが、都市の中でゴルフ場が抱えていた池の量だ。
中央ストックホルム都市圏を地理情報で調べると、13のゴルフクラブを含む範囲で、恒久淡水池167か所のうち44か所がゴルフ場内にあった。割合は26.3%。都市圏で確認された恒久淡水池の4分の1超を、ゴルフ場が抱えていたことになる。
研究者が示したのは「ゴルフ場なら自然保護区になる」という結論ではない。都市部で、ゴルフ場が湿地性動物の生息地を供給する一つの場所になり得る、という位置づけだ。
なぜゴルフ場池で希少種が見つかったのか
ここは一つの原因にまとめられない。池の深さ、周辺植生、魚や外来捕食者の有無、農薬や肥料、水位管理など、生物相を変える要因は複数ある。2009年の結果だけで「芝管理が良かったから」「捕食者が少なかったから」と原因を決めることはできない。
2008年に発表された別の両生類研究もあるが、同じストックホルムの池を追跡した研究ではない。別地域・別条件の研究と、同じ池での追跡は分けて読む必要がある。
後続研究は「条件次第」を強めた
その後の研究を見ると、ゴルフ場池が生息環境になり得るという見方は残る。一方で、池の条件と管理がかなり重要だ。
シカゴ都市圏で2017年に調べた25のゴルフ場池と30の森林保護区の池では、水質、化学特性、藻類は全体としておおむね似ていた。ただ8月の調査では、検査した10農薬のうち3種類が検出され、25のゴルフ場池のうち11池で農薬が確認された。この研究は、それが生物へ与える影響を直接測ったものではない。生息地として使える可能性と、管理による負荷がないことは別問題だ。
日本でも2021年、近畿地方のゴルフ場にある6つの調整池を調べた研究で、水生植物は平均2.5種確認され、先行研究のため池2.35種と近い水準だった。浅い池ほど抽水植物が多かった。ただし、これはストックホルムのイモリや水生昆虫を再現した研究ではなく、水生植物の研究だ。
さらに2025年の研究では、6つのゴルフ場池のうち3池へ粗い木材を加え、67分類群を確認した。分類群の密度や水生昆虫の二次生産には効果が出なかった一方、一部の多様性や機能構成には変化が出た。池の管理を一つ変えれば一律に生き物が増える、というほど単純ではない。
2026年の答えは、まだ同じ池では分からない
2026年までに確認された資料では、2009年論文で扱われたストックホルムの同じ12のゴルフ場池を再調査し、クシイモリやオオシロカオトンボが2026年時点でも維持されていることを直接示す追跡研究は確認されていない。
だから、2009年の研究で確認された希少種が「今もゴルフ場に守られている」とまでは言えない。
一方、米国や日本の後続研究は、ゴルフ場の池が都市や郊外で水辺の生息環境になり得る可能性を、別の生物群と条件で示している。
ゴルフ場が自然に良いか悪いか、という二択にするとこの話は見えにくい。ストックホルムで最も面白かったのは、都市圏の恒久淡水池の4分の1超がゴルフ場に存在していたことだ。
価値を決めるのは「ゴルフ場にある池」という看板ではない。どんな深さで、どんな植生があり、捕食者や薬剤、水位をどう管理するか。その条件次第で、コースの池はただの景観施設にも、生き物が都市で残る足場にもなり得る。
出典:pubmed.ncbi.nlm.nih.gov(2) / beijer.kva.se / tandfonline.com / jstage.jst.go.jp / ecommons.luc.edu
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