ゴルフ場の住宅化で夜は0.13度上昇?
GOLF DNA編集部🇺🇸

3行まとめ
- ミネアポリス周辺135コースを別用途へ置き換えたモデルでは、住宅化で周辺の夜間気温上昇が予測された一方、自然地や公園は栄養塩流出でゴルフ場を上回った。
- 環境評価は「何に替えるか」で逆転する。
- この研究で実際に135コースを再開発したわけではない。
都市のゴルフ場を住宅地に変えたら、環境にはプラスなのか。
2021年に発表されたミネアポリス・セントポール都市圏の研究は、135のゴルフ場を別の土地利用へ置き換えるモデルでこの問いを比べた。結果は単純な「良い」「悪い」ではない。冷却ではゴルフ場が強く、送粉者でも住宅地や工業地を上回る。一方、窒素・リンの流出では自然地や都市公園の方が少なかった。
つまり、評価を決めるのは「ゴルフ場をなくすか」だけではない。「その土地を何に替えるか」だ。
135コースを5つの用途へ仮想的に置き換えた
この研究で実際に135コースを再開発したわけではない。
研究チームは詳細な土地被覆と土地利用のデータを使い、各ゴルフ場の区画を「自然地」「都市公園」「郊外住宅地」「都市住宅地」「工業地」の5種類へ置き換えた場合をモデル化した。
比べたのは、都市冷却、送粉者、雨水の栄養塩保持という3つのサービスで、栄養塩は窒素とリンを別々に評価した。現実の再開発前後を測った実験ではなく、同じ土地を別用途にしたらどう変わるかを見る反実仮想の比較である。
住宅化すると周辺600メートルの夜は0.09〜0.13度上昇
冷却では、ゴルフ場が比較した代替用途の中で最も大きな効果を示した。
夏の夜間を対象にしたモデルでは、ゴルフ場から郊外住宅地へ置き換えると周辺600メートルの気温は0.09度、都市住宅地では0.13度高くなる予測だった。自然地への置換は0.01度、都市公園は0.02度の上昇にとどまり、工業地では0.28度高くなった。
タイトルの「0.13度」は、都市住宅地へ置き換えた場合のモデル値だ。実際のゴルフ場を住宅地へ変えて観測した温度差ではない。
送粉者は住宅地より強く、公園より弱い
送粉者の評価でも、順位は相手によって変わる。
モデル上のゴルフ場の送粉者指数は0.062。都市公園へ置き換えると0.007、自然地では0.003高くなった。一方、郊外住宅地では0.001、都市住宅地では0.005、工業地では0.013低くなった。
つまりゴルフ場は、住宅地や工業地より送粉者を支える一方、自然地や都市公園には及ばなかった。
窒素とリンでは自然地・公園が上回る
栄養塩の流出を見ると、ゴルフ場が最良という結果にはならない。
窒素の年間流出量は、ゴルフ場が1ヘクタール当たり5.0キログラム。自然地へ置き換えると1.0キログラム、都市公園では0.9キログラム少なくなった。逆に郊外住宅地では0.8キログラム、都市住宅地では1.9キログラム多くなった。工業地はゴルフ場より0.9キログラム少ない予測だった。
リンはゴルフ場が1ヘクタール当たり0.18キログラム。自然地は0.06キログラム、都市公園は0.04キログラム少なく、工業地はほぼ同じ。郊外住宅地は0.05キログラム、都市住宅地は0.07キログラム多かった。
ここでも結論は同じだ。住宅地への転換なら冷却、送粉者、窒素・リンの複数項目でゴルフ場より不利な予測になる。一方、自然地や都市公園へ替えるなら、冷却差は小さく、送粉者や栄養塩ではゴルフ場を上回る項目がある。
2026年でも「どの都市でも同じ」とは言えない
この135コースの結果を、そのまま日本や別の都市へ当てはめることはできない。
栄養塩の計算には地域の土地被覆、降水、施肥、雨水接続などの条件が入り、農薬・除草剤、洪水緩和、レクリエーションなどは同じモデルでは評価していない。
研究事業は2022年までにデトロイト地域へ広がり、Twin Citiesとデトロイト都市圏を合わせて300を超えるゴルフ場を対象にしたと報告された。ただし、これは同じ全米ゴルフ協会の研究事業の拡張で、独立した直接追試ではない。
2025年には韓国の都市ゴルフ場を扱う独立した査読研究も出ているが、森林保全や大気環境などを別のモデルで評価した研究で、ミネアポリスの冷却・送粉者・窒素・リンを同じ方法で再現したものではない。
2026年9月までに確認できた公開研究では、同じ枠組みを独立した研究班が別都市で直接再現した査読研究は確認できていない。だから0.09度、0.13度といった数字を「ゴルフ場ならどこでも同じ」と読むべきではない。
この研究が示したのは、ゴルフ場が環境に良いか悪いかという二択ではない。
住宅地に替えれば悪化する項目があり、自然地や公園に替えれば改善する項目がある。都市の土地利用を考えるとき、先に問うべきなのは「ゴルフ場を残すか」ではなく、「そこを何に替えるのか」だ。
出典:doi.org(2) / experts.umn.edu / USGA(2) / researchgate.net / gam.org
関連記事
公共ゴルフ場がゼロになる3年間 シンガポールはゴルフを消さず「席」を残した
3行まとめ
- 2024年に18ホール公共コースのMarina Bayが閉鎖し、Mandaiも2026年末で終了予定。
- 2027〜2030年は専用の公共ゴルフ場がなくなる一方、Keppel Simeでは現在60%の枠を一般向けに確保している。
- 土地が足りない都市国家は、ゴルフ場そのものではなく「一般ゴルファーが打てる席」を制度として残そうとしている。