鳥が多いゴルフ場ほど自然に良い?
GOLF DNA編集部🌐

3行まとめ
- 2006年の日本12コース研究と2025年の68研究レビューをたどると、鳥の数や種類が多いことと、希少・減少種を守れていることは別だと分かる。
- 保全価値を左右する在来植生と森林の役割を整理する。
- この違いは、鳥の数え方を考えると分かりやすい。
ゴルフ場で鳥を数えたら、周囲より多かった。では、そのコースは「自然に良い」と言えるのか。
答えは、そこまで単純ではない。
2025年に公表されたゴルフ場と鳥類の研究レビューは、英語で発表された査読研究や学位論文68件を整理した。そこで見えてきたのは、ゴルフ場では比較対象と同程度か、それ以上の鳥の個体数や種数が確認される研究が多いということだった。
ところが、その数字だけでは保全の成功を意味しない。増えている鳥の中には、人のいる環境へ適応した一般種や外来種も含まれる。レビューでは、保全上懸念される鳥は通常少なく、希少鳥類の保全にゴルフ場が意味のある役割を果たしたと示す研究例は確認できなかった。
「何羽いるか」と「何を守れているか」は別
この違いは、鳥の数え方を考えると分かりやすい。
個体数や種数は、その場所にどれだけ鳥がいるかを示す。一方で、保全では「どんな種がいるか」「そこで繁殖できているか」「長期的に個体群を維持できているか」まで見なければならない。
2025年のレビューも、個体数・種数、希少種の存在、繁殖成功、長期的な個体群維持を同じ指標として扱えないと整理している。繁殖を調べた研究自体が限られ、ゴルフ場が鳥の個体群を増やす場所なのか、それとも周囲から来た鳥を一時的に受け入れる場所なのかも、多くの場合は分かっていない。
つまり「鳥が多い」は重要な観察結果ではあるが、それだけで保全価値を決める点数にはならない。
日本の12コースで重要だったのは「外周の林」
日本でも、この違いを考える材料がある。
2006年の研究は、日本の12のゴルフ場と周辺環境を比較した。結果の一つは、コース外周に残されたOB林が、コース外の森林に近い生物群集を持ち、芝地や道路、水田などの人工的な環境より多くの動植物を保持していたことだった。
森林被覆が少ない都市部では、こうした林が森林生物の避難所になり得ると研究者は示している。
ここで重要なのは、「ゴルフ場だから生物が残った」と読むことではない。価値を持っていたのは、ゴルフ場の中に残された森林という生息環境だった。
2025年のレビューでも、保全上重要な鳥が確認されたゴルフ場では、在来植生、とくに森林の量が繰り返し重要な要因として挙げられている。
芝生の面積そのものより、何を残し、何を植え、周囲の森林とどうつながっているかが効いている可能性が高い。
在来植物を増やせば、それで成功なのか
全米ゴルフ協会のコース管理案内も、鳥を支える取り組みとして在来植物の保全や拡大を挙げ、刈り込んだ芝の一部を在来草地へ戻すことなどを勧めている。
ただ、これは管理の指針であって、すべてのコースで希少種が増えることを実証した研究ではない。
地域によって元の生態系も違えば、森林の量、周囲の土地利用、芝の種類、管理方法も違う。2025年レビューも英語文献68件を対象としたもので、非英語の研究を取りこぼしている可能性を明記している。世界のゴルフ場すべてを同じ結論で評価できる資料ではない。
2026年の日本にも保全管理の事例はある
日本自然保護協会は2026年3月、富山県小矢部市の「興法寺の湿地およびゴルフ倶楽部ゴールドウイン」が自然共生サイトに認定されたと公表した。
対象地は99ヘクタールで、そのうち63.1ヘクタールが認定対象。2024年6月から2025年1月の調査では、動植物314種と、国または県の絶滅危惧種17種が確認された。
国内でゴルフ場を含む土地を保全管理する現在の事例としては興味深い。一方、この調査は鳥類の繁殖成功や長期的な個体群維持を検証した研究ではなく、2006年の12コース研究を直接追試したものでもない。
今回の調査材料では、2006年研究を直接追試する2020年代の国内ゴルフ場の鳥類査読研究は確認できていない。だから海外レビューの結論を、そのまま日本中のコースへ当てはめることもできない。
鳥の数より、見るべきものがある
ゴルフ場の自然価値を「鳥が何羽いるか」「何種類いるか」だけで測ると、一般種が増えた場所と、希少・減少種を支えられる場所を同じように評価してしまう。
2006年の日本研究と2025年のレビューを重ねると、見るべきポイントはむしろ、その中身にある。
どんな鳥がいるのか。在来植生や森林がどれだけ残っているのか。繁殖できているのか。その状態が長く続いているのか。
ゴルフ場は、それだけで自然保護に成功する場所でも、自然に悪い場所でもない。鳥の数を増やすことと、守るべき種が生き続けられる環境を残すことは、別の仕事である。
出典:doi.org(2) / USGA / nacsj.or.jp
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