紫外線C波で芝病害が最大81%低下 殺菌剤を減らせるか
GOLF DNA編集部🌐

3行まとめ
- ドイツの実用グリーンで2020〜2022年に行われた試験では、週3回の紫外線C波照射により最高処理区の病徴重症度が無処理区より46〜81%低下した。
- ただし病害は根絶せず、殺菌剤との比較試験もない。
- 2026年には別芝種と自律走行機での独立研究も出たが、殺菌剤を何%減らせるかはまだ実証されていない。
芝の病気を、薬剤ではなく「光」で抑える。そんな管理が実用グリーンでどこまで効くのかを、2年以上追った試験がある。
舞台はドイツのオスナブリュック・ゴルフクラブ。2020年春から2022年6月まで、実際に使われているグリーンで紫外線C波を照射し、ドルスポットとミクロドキウム病への影響を調べた。2025年に査読論文として公表された結果では、最高処理区の病徴重症度は無処理区より46〜81%低かった。
数字だけを見ると、殺菌剤の代わりが見つかったようにも見える。だが、この研究の面白さは「効いた」ことより、どこまで効いて、どこから先は届かなかったのかが見えている点にある。
実用グリーン72平方メートルを12区画に分けて2年以上試した
試験したグリーンは、ポア属とアグロスティス属が約半分ずつの芝で構成されていた。研究では合計72平方メートルを、1区画6平方メートル、4処理×3反復の無作為化ブロックに分けた。
紫外線C波は芝冠から約5センチの高さで照射。主な試験期間は週3回で、線量は無処理の0に加え、7〜8、35〜40、70〜80ミリジュール毎平方センチの4段階だった。
この試験では農薬を使っていない。つまり、紫外線C波そのものが病害へどう作用するかを見る設計だった。
最高線量区では、論文要旨がドルスポットとミクロドキウム病の病徴重症度について、無処理区より46〜81%低い結果を報告している。ドルスポットでは、2020年のピーク時に最高線量区で46%、2021年には81%の低下が記録された。
ただし、この46〜81%を「いつでも同じだけ効く数字」と読むことはできない。ドルスポットでは統計手法によって処理区差の検出結果が一致せず、ミクロドキウム病も冬や線量によって結果が変わった。
病害は減った。それでも完全には消えなかった
どの処理でも、ドルスポットとミクロドキウム病は完全には根絶されなかった。
著者はその理由の一つとして、紫外線C波が主に芝冠の表面へ作用し、葉の下や土壌中にいる病原体へ届きにくいことを挙げている。これは病原体の所在をすべて直接測定した結果ではなく、研究結果を踏まえた機序の説明だ。
つまり、光が当たる場所では病害を抑えられても、芝の内部や土壌まで一度に処理する技術ではない。表面に照射するという仕組み自体が、強みと限界の両方になる。
芝への傷みは目立たなかったが、長期安全性まで証明したわけではない
芝そのものへの影響も重要だ。
ドイツの試験では、中・高線量区の芝品質が無処理区より有意に高かったとする比較結果が出ている。少なくとも、この試験では線量を上げたことで芝品質が一方的に悪化したという結果にはなっていない。
2026年7月に公表された米国の独立研究でも、別芝種のシーショア・パスパラムを使った試験で、1平方メートル当たり66.0ジュールの紫外線C波がドルスポットを有意に減らし、成長室試験では薬害が確認されなかった。
一方、ドイツの試験は2022年6月までだ。さらに長期間使い続けた場合の芝や病原体への影響、作業者の安全、電力消費や費用までを確定した研究ではない。ここは実用化で残っている部分だ。
「殺菌剤を何%減らせるか」は、この研究では測っていない
最も注意したいのが殺菌剤との関係だ。
ドイツの試験には殺菌剤との比較区がなく、試験中も農薬は使われていない。そのため、「紫外線C波を使えば殺菌剤を何%減らせる」といった数字は、この研究からは出せない。
研究計画を進めたSTERFも、紫外線C波を、重要な芝病害を最小限の農薬で管理するための非化学的な手段の一つとして位置付けている。現段階で示されているのは、殺菌剤を全面的に置き換えたことではなく、統合的な病害管理へ組み込める可能性だ。
2026年には自律走行機まで来た。ただし製品性能とは分けて見る
研究は固定的な照射試験から一歩進んでいる。
2026年の米国の査読研究では、改造した自律走行型の芝刈り機を使ったフィールド処理でもドルスポットが有意に減り、葉緑素量、芽数、硬さ、グリーンスピードの改善が報告された。ただし、今回確認できた公開要旨からは、実コースで病害が何%減ったかという詳細な効果量までは特定できない。
市販側でも、GreenGuardという自律走行型の紫外線C波ロボットが夜間運用を前提に販売されている。2026年4月には米国のサンイーグルス・ゴルフクラブで導入・試験を進める発表も出た。
ここで、研究と製品は分けて考える必要がある。ドイツの研究で出た46〜81%という数字を、そのまま市販ロボットの性能として使うことはできない。サンイーグルスで病害が何%減ったのか、殺菌剤使用量がどれだけ変わったのか、費用対効果や長期成績がどうだったのかという独立した実測値は、今回の確認範囲では得られていない。
2026年9月時点の現在地は、かなりはっきりしている。
紫外線C波は、実用グリーンの2年以上の試験で病害を大きく減らした条件があり、別芝種・別環境の独立研究でも効果が確認され、自律走行で処理する段階まで進んだ。一方で、病害は消えず、殺菌剤との直接比較もなく、市販機を使った実コースでの薬剤削減率もまだ分からない。
紫外線C波が「殺菌剤の代わりになった」のではない。病害管理の選択肢へ入るところまで来た。次に埋めるべき数字は、病害が何%減るかだけではなく、殺菌剤を実際に何%減らせるのか、長期に使って芝へ何が起きるのか、そして1コースで運用したときにいくらかかるのかだ。
出典:onlinelibrary.wiley.com / sterf.org / sglgolf.com / apsjournals.apsnet.org / plantcenter.uga.edu / globenewswire.com
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