「ゼロトルク」は本当にゼロなのか
GOLF DNA編集部🌐

3行まとめ
- 2026年、オデッセイとテーラーメイドは「ゼロトルク」を掲げる一方、スコッティ・キャメロンは「低トルク」と呼び、ゼロとは言わない。
- 2013年のセルフバランス型特許から現行4社の設計を追うと、共通する狙いはあっても、測定基準や技術系譜まで同じとは言えないことが見えてくる。
- この分野で各社が扱っているのは、パッティング中にヘッドやフェースがシャフト軸まわりで回ろうとする挙動だ。
2026年のパター売り場には、「ゼロトルク」と「低トルク」が並ぶ。
オデッセイとテーラーメイドは現行モデルを「ゼロトルク」と呼ぶ。一方、スコッティ・キャメロンは自社のOCシリーズを「低トルク」と表現し、ゼロトルクとは呼ばない。理由も明確で、パッティングという動作そのものがトルクを生むからだと説明している。
同じ方向を向いているようで、言葉の意味まで同じではない。
抑えたいのはフェースが回ろうとする挙動
この分野で各社が扱っているのは、パッティング中にヘッドやフェースがシャフト軸まわりで回ろうとする挙動だ。
その管理に使われるのが、シャフトをどこへ通すか、重心をどこへ置くか、ヘッドをどうバランスさせるかという設計である。
一つの起点として確認できるのが、2013年4月18日に出願され、2016年1月12日に特許化された米国特許US9233280B2だ。発明者はビル・プレス4世とスコット・スルプリツィオ。シャフト中心軸とバランスポイントの関係を使い、フェースがストロークの弧に対してスクエアを求める構成を記載している。
ラブ・ゴルフ(L.A.B. Golf)はこの特許を現在も中核特許として掲載している。譲渡記録では2019年に発明者からラブ・ゴルフへ権利が移り、同社はビル・プレスがライ角バランスを発明し、Directed Forceを初期製品として開発したと説明している。
2026年の各社は、似ていて同じではない
オデッセイの2026年スクエア・トゥ・スクエア トライホットは「ゼロトルク」を掲げ、シャフトの前傾をなくし、シャフトをフェース寄りに置く多素材設計としている。
テーラーメイドのスパイダーZTも「ゼロトルクパター設計」を掲げる。公式説明では、シャフトを重心位置から一直線になるよう1度傾け、フェース前縁から25ミリ後方へ配置し、トウアップのバランスを採用している。
対してスコッティ・キャメロンのOCは、シャフトをフェース前縁より後方かつ重心線上へ置く「低トルク」設計だ。同社は、パッティング動作そのものがトルクを生むため、OCをゼロトルクとは呼ばないと明記している。
共通しているのは、シャフト軸、重心、バランスの配置を使って、フェースが回ろうとする挙動を抑えようとしていることだ。
違うのは、その具体的な配置とバランス、そして何を「ゼロ」と呼ぶかである。
「ゼロ」は共通の測定規格ではない
今回確認した4社の一次資料には、トルク低減の設計思想やヘッドのバランス挙動は書かれている。しかし、4社で共通する数値の測定軸、閾値、試験条件は確認できなかった。
つまり、「ゼロトルク」と「低トルク」を、同じ物差しの数値だけで区切った共通規格として読むことはできない。
オデッセイやテーラーメイドが公式名称としてゼロトルクを使うことと、スコッティ・キャメロンがゼロとは呼ばないことは両立する。各社が同じ定義を共有していると確認できていないからだ。
同じ特許から枝分かれしたとも言えない
もう一つ注意が必要なのが技術の系譜だ。
US9233280B2がラブ・ゴルフへ譲渡され、同社が現在も特許一覧へ載せていることは確認できる。しかし、オデッセイ、テーラーメイド、スコッティ・キャメロンの現行製品が、この特許のライセンス下にある、あるいは直接そこから派生したと示す一次資料は確認できなかった。
だから、2026年のトルク抑制型パターを「一つの特許技術が各社へ広がった」とまとめることもできない。
確実に言えるのは、主要メーカーがシャフト軸と重心、バランスを使ってフェースの回転傾向を抑える設計を現行製品で打ち出していること。そして、その呼び方も設計も一枚岩ではないことだ。
「ゼロトルク」という言葉だけを見れば同じカテゴリーに見える。だが中身を見ると、2026年のパター設計で競われているのは、ゼロという名前そのものではなく、フェースをどう安定させるかという別々の解き方である。
出典:patents.google.com / LAB Golf(2) / Callaway 技術・研究情報(2) / taylormadegolf.jp / Titleist / Scotty Cameron
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