1㎡に雑草1本で薬剤62%減 ゴルフ場の「雑草だけ狙う」散布機、効く条件と弱点
GOLF DNA編集部🇺🇸

3行まとめ
- 2026年の現地試験では、雑草が1㎡あたり1本の低密度条件で、画像判定による個体散布が全面散布より薬剤を62%削減した。
- 一方、雑草が密になるほど節減幅は縮み、芝に隠れた雑草の見逃しも増える。
- 研究試作機と約12万5000ドルの市販機を分け、実用条件を整理する。
ゴルフ場の除草剤散布が、「面にまく」から「雑草を見つけて、その場所だけに噴く」へ変わり始めている。
2026年の現地試験では、その効果が数字になった。雑草が少ない条件では、画像判定で雑草を狙う試作機が、全面散布より薬剤量を62%減らした。
ただ、この「62%」だけを切り取ると実態を見誤る。効き目を大きく左右したのは、雑草の密度と、カメラから雑草が見えるかどうかだった。
62%減ったのは「1㎡に雑草1本」のラフ
査読誌『Weed Technology』に2026年に掲載された研究では、米アーカンソー州北西部の休眠中のバミューダグラスを対象に4つの現地試験が行われた。
最も大きな薬剤削減が出たのは、スプリングデール・カントリークラブのラフだった。主な雑草はワイルドガーリックで、密度は1㎡あたり1本。ここで色の違いを使って雑草を判定するDGCI方式の試作機は、全面散布と比べて薬剤量を62%減らした。
この試験では、手作業のスポット散布は全面散布より79%少なかった。つまり機械式の個体散布は、少なくとも「雑草がまばらな場所では、不要な場所へ薬剤をまかない」という狙いを実際のコース条件で示したことになる。
また、予備試験を除く3試験では、DGCI試作機は雑草の90%以上を検出し、散布できた。
ただし、ここから「この方式なら薬剤を常に62%減らせる」とは言えない。
雑草が増えると、全面散布との差は小さくなる
同じ研究でも、雑草密度が高い場所では結果が変わった。
フェイエットビルの試験では1㎡あたり27本、スプリングデールのティーでは37本まで雑草密度が上がった。雑草が増えれば、機械が散布ノズルを作動させる回数も増える。
その結果、フェイエットビルでは全面散布とDGCI方式の散布量に有意な差が出ず、スプリングデールのティーでも処理方法による散布量の差が出なかった。
個体散布の節約効果は、雑草が少ないほど大きくなりやすい。逆に、面の大半に雑草があれば、「必要な場所だけ噴く」つもりでも作動箇所が増え、全面散布に近づいていく。
62%削減という数字の本質は、機械の性能だけではない。コース側の雑草密度まで含めて初めて成立する数字だ。
カメラから見えない雑草は拾えない
もう一つの弱点が、芝による隠れだ。
エルキンスの予備試験では、雑草密度は1㎡あたり6本。刈高は5.1センチだった。この条件でDGCI試作機が雑草を捉えた割合は74.2%。全面散布は100%、手作業のスポット散布は99.3%だった。
研究では、休眠したバミューダグラスの葉の下に雑草が隠れたことが、検出率を下げた要因として示されている。
カメラで見てから噴く以上、視界に入らない対象には弱い。特に刈高の高いラフなどでは、雑草密度だけでなく、雑草が芝の上に見えているかが実用性を左右する。
約850ドルの研究機と、約12万5000ドルの市販機は別物
ここで注意したいのが、研究で使われた試作機と、2026年に市場へ出た市販機を同じものとして比べないことだ。
研究のDGCI試作機は、休眠して茶色くなった芝と緑色の冬雑草の色差を、画素の色指数で判定する方式だった。機械学習で大量の画像を学習して雑草を識別する方式とは、判断の仕組みが違う。
試作機は3ノズルで、構成費は約850ドル。カメラのノイズと計算能力の制約から、実際の走行速度は時速2.4キロで、目標としていた時速4.8キロの半分だった。研究用の装置であり、この価格を市販機の価格と直接比較することはできない。
一方、USGAが2026年に紹介した市販機「ALBA」は108ノズルを備え、約3センチ四方の小さな範囲へ散布できる。作業幅は約2.3メートル、最高速度は約7.2キロ。メーカー仕様では最大で1時間あたり約1.6ヘクタールを処理できる。
価格はUSGAの紹介で約12万5000ドル。従来型の散布機より小型で遅く、USGAも全面的な置き換えではなく、既存作業を補完する機械として位置づけている。
いま分かっているのは「向く条件」で、回収年数ではない
2026年9月時点で、ALBAをゴルフ場で長期間使った場合の年間薬剤費、人件費、保守費、総保有コストを独立して検証した長期データは、今回確認した一次資料・技術資料では見つかっていない。
だから、約12万5000ドルの機械が何年で元を取れるかまでは、現時点の材料からは答えられない。
一方で、技術が向く条件はかなり見えてきた。
雑草がまばらで、芝との見分けがつき、カメラから対象が見えている場所では、全面散布を減らせる余地がある。反対に、雑草が密集した場所では散布回数が増え、芝に隠れれば見逃しも増える。
つまり「雑草だけ狙う散布機」の価値は、どんなコースでも薬剤を一定割合減らすことではない。全面散布する必要のない場所を見つけ、そこだけ散布を省けることにある。
2026年のデータが示したのは、62%という万能の削減率ではなく、個体散布が効く条件と、効きにくくなる境界だった。
出典:USGA / cambridge.org / turf.ecorobotix.com / ecorobotix.com
関連記事
市営コースを売らずに復活 130人超が5500万ドルを集めた「The Park」の仕組み
3行まとめ
- 2018年に閉鎖したWest Palm Beachの市営ゴルフ場は、土地を売らず、非営利財団へ50年賃貸する形で再生した。
- 130人超の寄付者から5,500万ドル超を集め、2023年にThe Parkとして再開。
- 2026年現在も市は「Municipal Golf Course」と位置付ける。