1929年の輪郭、地下は現代仕様
GOLF DNA編集部🇺🇸

3行まとめ
- 1929年のアリスター・マッケンジー設計を戻すため、パサティエンポはグリーンとバンカーの輪郭を歴史資料から復元した。
- 一方、地表下約16インチの排水やグリーン基盤は現代仕様へ更新。
- 2023〜2024年の工事が「古いまま戻す復元」ではなかった理由を追う。
パサティエンポ・ゴルフクラブが2023年に始めたのは、単なるグリーン改修ではなかった。
目標に掲げたのは、アリスター・マッケンジーが1929年に設計したグリーンとバンカーを、できる限り元の姿へ戻すことだった。
ところが工事では、地下の排水まで1929年へ戻していない。むしろ、見えない部分は現代化した。
この一見矛盾したやり方に、今回の「復元」の中身がある。
戻したのは、グリーンの輪郭とバンカーとの関係
工事は2023年4月17日に始まり、2024年12月5日に完了した。
復元の手掛かりになったのは、1929〜1931年の歴史画像だ。クラブの公式資料では、16番グリーンなどで古い画像から形を読み取り、模型を作り、将来も再現に使えるテンプレートを作成した過程が紹介されている。
戻そうとしたのは、グリーンの輪郭だけではない。グリーンとバンカーの位置関係も含め、マッケンジーが地表に作った戦略的な形を再構築した。
グリーンは米国ゴルフ協会の仕様で作り直し、ベントグラスを播種。ピンを切れる面積も増やした。バンカーもすべて再構築されている。
つまり、「昔の写真に似せた表面」だけを作った工事ではない。歴史資料を使って、プレーに直接関わる輪郭と周囲との関係を戻す作業だった。
しかし地下約16インチは、昔へ戻さなかった
旧グリーンは、土を盛り上げて造る古い方式で、公式資料はインフラと排水が非常に乏しかったと説明している。
ラウンド数による踏圧や水質など、現代の管理負荷も重なっていた。約25年前には排水を助けるための砂の溝も導入されていたが、2023年の工事ではさらに根本から作り直すことになった。
公式の映像資料では、表層を掘り下げたあと、地表から約16インチ下の排水を現代化し、その上に歴史的な形のテンプレートを再構築している。
ここが境界だ。
地上では1929年の輪郭を追う。地下では現代の排水と基盤を使う。
バンカーも同じで、形は復元しながら、内部には多孔質コンクリート製のライナーと新しい砂を使った。古い材料まで再現することを目的にはしていない。
「復元」は、1929年の工法を再現することではなかった
資料を並べると、この工事が何を保存し、何を更新したのかがはっきりする。
保存しようとしたのは、マッケンジーが地表に残した設計だ。グリーンの輪郭、バンカーとの関係、プレーしたときに見え、判断に影響する形である。
一方、排水、グリーンの基盤、バンカー内部の材料は現代化した。
だから今回の復元は、「1929年当時の工法を地下まで再現すること」ではない。歴史的な設計の形を戻し、それを現在のコースとして維持できる地下構造の上に載せ直す工事だったと整理できる。
改善量は、数字ではまだ言えない
現代排水へ更新したと聞けば、「水使用量がどれだけ減ったのか」「排水が何倍速くなったのか」「維持費はいくら下がったのか」が気になる。
しかし、今回確認できたクラブの公開資料には、工事前後を同じ条件で比べた水使用量、維持費、排水速度の実測値は見当たらない。
したがって、排水設備が新しくなった事実と、「管理が何%改善した」という効果は分けて考える必要がある。
工事の価値を数字で大きく見せるより、確実に確認できるのは設計上の分業だ。見える歴史は戻し、見えない基盤は更新した。
2026年、全グリーンとバンカーは復元済み
2026年9月時点で、クラブは全グリーンとバンカーが1929年のマッケンジー設計へ復元されたと案内している。
その「1929年へ復元」という言葉の下には、現代の排水、現代仕様のグリーン基盤、現代材料のバンカーがある。
名設計を残すことと、古い構造をそのまま残すことは同じではない。
パサティエンポが戻したのは、地中の1929年ではなく、ゴルファーが地上で向き合う1929年だった。
出典:pasatiempo.com(2・3) / restoration.pasatiempo.com(2)
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