ボール直販のViceがクラブへ 500万打超の一般ゴルファーデータを設計に持ち込んだ理由
GOLF DNA編集部🇩🇪

3行まとめ
- Vice Golfは2022年の投資受け入れ後、2023年にクラブフィッティング事業との関係を深め、ボール中心の事業からクラブへ拡大した。
- HIOが公表する500万打超・10万時間の一般ゴルファーのフィッティングデータは設計や推奨仕様に使われているが、性能優位や売上効果、データから設計寸法へ変換する計算式までは公開されていない。
- 転機の一つは2022年5月。
ボールのネット直販で知られてきたVice Golfが、なぜクラブまで作るようになったのか。
その答えをたどると、単なる商品数の拡大ではなく、一般ゴルファーが実際に打った大量のデータを商品開発へ持ち込むという狙いが見えてくる。
ViceがHIOとの関係を説明するページに並ぶ数字は、フィッティング10万時間、追跡・分析したショット500万打超、販売・組み立てたクラブ30万本超。しかも対象はツアー選手だけではなく、日常的にゴルフをするアマチュアだ。
ただし、この数字だけで「Viceのクラブが優れている」とは言えない。面白いのは、ボール中心だった会社が、このデータを持つフィッティング事業をクラブ参入の土台にしたことだ。
2022年の投資から、製品多角化が始まった
転機の一つは2022年5月。投資会社Oakley CapitalがVice Golfへ投資し、製品の多角化と国際展開を支援すると説明した。
その翌年、動きはクラブ側へ進む。Oakleyの2023年年次報告では、Viceが同年6月に欧州の大手クラブフィッティング事業を買収し、ゴルフ用品への拡大を大きく加速させる狙いだったと説明している。そこで得るものとして挙げられたのが、カスタムフィッティングの知的資産、データ分析、製品開発の専門性だった。
Vice自身は現在、HIO Fittingを「Vice Golfの一部」と説明している。ただし、公開資料だけではHIOの法的な子会社名称や持分比率まで確定できないため、本稿ではそれ以上の関係は断定しない。
HIOが持っていたのは「上手い人だけ」のデータではない
Viceの説明では、HIO側は2010年から弾道計測データと身体動作のデータを蓄積してきた。対象として強調されているのは、アマチュアや一般ゴルファーだ。
スイングの動きからプレーヤーを類型化し、その傾向をフィッティングや製品設計へつなげる。ここが、ツアープロの使用実績を起点にする商品開発とは少し違う。
HIO Storyが掲げる累積値は、フィッティング10万時間、500万打超、30万本超のクラブ販売・組み立て、15年以上の経験。ただし、固有のゴルファーが何人なのか、集計の厳密な開始・終了日、重複をどう除いたのかは公開されていない。したがって、これらは会社公表の規模感として読む必要がある。
データは「おすすめ」だけでなくクラブ設計にも使う
データ活用は、フィッティング画面のおすすめ表示だけではない。
Viceの2024年の説明では、平均スコア、現在使っているボール、ミドルアイアンの飛距離、ドライバーのヘッドスピード、ショートゲームの好みなどを入力し、HIOのデータを使ってオンラインやアプリ上の推奨仕様へつなげる仕組みが示されている。
クラブ側の具体例がVGI02だ。Viceは中・高ハンデ層を主な対象とし、2ピースの中空構造、ヒール・トウ方向の重量配分、つかまりを意識した設計、高めのバウンス、大きめのスイートスポットなどを採用している。
会社側は、こうした商品設計の基盤に一般ゴルファーのフィッティングデータがあると説明する。
ただ、ここには大事な境界がある。500万打のデータから「この重量配分にする」「このバウンスにする」と決める具体的な計算式や重みは公開されていない。データを使っていることは確認できても、個々の設計値がどのデータから何%導かれたかまでは追えない。
2026年もVGI02は現行商品。だが「成功したか」は別問題
2026年9月18日時点で、VGI02はViceの現行商品として販売されている。Viceの事業はボールだけにとどまらず、クラブまで扱う形へ広がった。
ここまでの時系列を並べると、クラブ参入の狙いはかなり明確になる。
2022年に投資を受けて製品多角化を進め、2023年にクラブフィッティング事業を取り込み、そこで蓄積された一般ゴルファーの大量データと製品開発の知見を、フィッティングとクラブ設計の両方へ使う。Viceがボールからクラブへ広がった背景には、この流れがある。
一方で、公開資料からはクラブ参入後の売上、利益、市場シェアへの寄与を分離して確認できない。500万打超という規模も、第三者が監査したデータセットではない。VGI02が他社製品より性能面で優れていることを、この材料だけで証明することもできない。
つまり、2026年時点で確認できるのは「一般ゴルファーの大量実打データを商品開発へ組み込む体制を作り、実際にクラブまで展開した」ことまでだ。
ボールを売る会社がクラブも作った、だけではない。Viceのクラブ参入で特徴的なのは、一般ゴルファーのフィッティング現場そのものを、次の商品を決める材料に変えようとしている点にある。
出典:oakleycapital.com(2) / vicegolf.com(2・3・4・5)
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