同じゴルフ場でフェアウェイはメタン放出、在来草地は吸収 2011〜13年測定で見えた水分差
GOLF DNA編集部🇺🇸

3行まとめ
- コロラドの1ゴルフ場2ホールを2011〜2013年に測った研究では、Site Bでフェアウェイがメタン放出側、ラフと復元在来草地が吸収側になった。
- 土壌水分との相関、灌水条件、肥料差なしという結果から、管理区域で差が生まれた条件と一般化できない範囲を読む。
- 研究では、正の値を大気へのメタン放出、負の値を土壌による吸収としている。
同じゴルフ場の中でも、地面はメタンを「出す側」と「吸う側」に分かれる。
2026年8月5日に公表された研究は、コロラド州の1ゴルフ場にある2ホールで、2011〜2013年にフェアウェイ、ラフ、復元した在来草地のメタン交換を測った。その結果、ある地点ではフェアウェイが放出側なのに、すぐ近くのラフと在来草地は吸収側になるという差が出た。
ただし、同じコースの別地点では3区域すべてが放出側だった。研究が示したのは「フェアウェイはメタンを出す」という単純な法則ではなく、同じ管理施設の中でも土壌水分や場所の条件によってメタン交換の向きが変わり得ることだ。
Site Bではフェアウェイだけがプラス、在来草地はマイナス
研究では、正の値を大気へのメタン放出、負の値を土壌による吸収としている。
Site Bの2012〜2013年平均は、フェアウェイが+0.78、ラフが-0.53、復元在来草地が-2.03 g CH4-C/ha/日だった。つまり同じ地点でも、フェアウェイは放出側、ラフと在来草地は吸収側に分かれた。
一方、Site Aでは結果が違う。2011〜2012年平均はフェアウェイ+2.39、ラフ+1.66、在来草地+1.18。2012〜2013年もそれぞれ+1.18、+1.33、+0.82で、すべて放出側だった。
各年・地点の平均は38〜39回の測定日に基づく。研究チームは通気チャンバーを使い、0分、15分、30分でガスを採取してメタンの出入りを追った。
この地点差があるため、Site Bの数字だけを切り取って「ラフや在来草地なら必ずメタンを吸う」とは言えない。
差と一緒に動いていたのは土壌の水分
管理条件には明確な違いがあった。
フェアウェイとラフは3〜10月に毎日、推定蒸発散量の約100%を目安に灌水されていた。復元在来草地は通常は灌水せず、2012年4月の干ばつ時に約20mmの補助灌水を受けただけだった。
土壌の「水充填間隙率」、つまり土のすき間のうち水で満たされている割合を見ると、Site Bはフェアウェイ54.6%、ラフ35.2%、在来草地34.6%。Site Aはフェアウェイ63.5%、ラフ61.0%、在来草地35.7%だった。
さらにメタンフラックスと水充填間隙率には、フェアウェイでr=0.37、ラフでr=0.59の有意な正相関があった。水分が高いほど、数値が放出側へ動く傾向が見られたことになる。
ただ、その相関が説明する変動はフェアウェイで約14%、ラフで約35%にとどまる。土壌温度との関係もフェアウェイでは弱く、ラフと在来草地では有意ではなかった。
水分だけで全部が決まったわけではない。
「肥料が多いから」では説明できなかった
研究では肥料条件も比較した。
無施肥、硝化・ウレアーゼ阻害剤入り尿素、被覆尿素の3処理を各3反復し、施肥区には年間150kg N/haを与えた。しかしフェアウェイ、ラフともメタンフラックスの肥料処理間差は有意ではなかった(p>0.35)。
著者は、過去の施肥履歴が無施肥区にも影響していた可能性を残している。少なくともこの試験から、「肥料の種類が区域差を作った」とは言えない。
では何が候補になるのか。
研究では、実測した土壌水分や容積密度、地点差に加え、灌水、圧密、通気性、地形などを機序の候補として挙げている。Site AはSite Bより土壌容積密度が高く、Site Bは造成された高所で、より多孔質だった。
ただし、これらを一つずつ独立して操作した実験ではない。どの要因が何%ずつメタンの放出・吸収を決めたかまでは分離できていない。
面白いのは「芝種の勝ち負け」ではなく、同じコース内で符号が反転したこと
この研究の面白さは、フェアウェイ、ラフ、在来草地のどれが環境に「良い」「悪い」と順位付けできたことではない。
同じ1コースの中でも、Site Aでは3区域すべてが放出側だったのに、Site Bではフェアウェイが放出側、ラフと在来草地が吸収側になった。管理区域の違いと、そこで実際に測られた水分・土壌条件が、メタン交換の向きと一緒に変わっていた。
一方で、対象は1ゴルフ場の2ホールだけだ。測った温室効果ガスもメタンだけで、二酸化炭素や一酸化二窒素を含むコース全体の温室効果ガス収支を評価した研究ではない。
つまり、この結果から「フェアウェイは温室効果ガスの排出源」「在来草地へ変えれば環境負荷が下がる」と一般化することはできない。
言えるのはもっと限定的だ。同じゴルフ場でも、管理区域と土壌環境が変われば、メタンの出入りは同じ方向になるとは限らない。そして今回の2ホールでは、その違いを読むうえで土壌水分が無視できない指標だった。
ゴルフ場の環境評価は、芝の種類や面積だけを数えるより細かい。同じコースの中でも、どこに水が入り、土がどんな状態にあり、そこでガスが実際にどちらへ動いているかまで見なければ、同じ「芝地」をひとまとめにはできない。
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