ゴルフ場にも売られた除草剤「インプレリス」 米環境保護庁の承認から約1年で停止、樹木被害報告は7000件超へ
GOLF DNA編集部🇺🇸

3行まとめ
- 米環境保護庁が2010年8月に条件付き登録し、ゴルフ場を含む芝地向けに売られた除草剤「インプレリス」は、約1年後の2011年8月に販売・使用停止命令の対象となった。
- 2011年8月の停止命令時点で非標的樹木の損傷・枯死に関する報告が7000件を超え、2014年には表示違反や試験報告の遅延をめぐる和解と登録失効に至った。
- ただし、7000件超はゴルフ場だけの数字でも、個々の被害の因果がすべて確定した件数でもない。
ゴルフ場の芝に使える新しい除草剤として認められた製品が、約1年後には米国の規制当局から販売・使用停止を命じられた。
その製品が、デュポンの除草剤「インプレリス(Imprelis)」だ。
米環境保護庁は2010年8月、インプレリスを条件付きで登録した。用途には住宅・商業芝地だけでなく、ゴルフ場、芝生農場、学校、公園、運動場も含まれていた。
ところが2011年8月11日、当局はデュポンが保有・管理するインプレリスを対象に、販売・使用・流通などを停止する命令を出した。承認からおよそ1年。何が起きていたのか。
停止の直接根拠は「7000件が因果確定したから」ではない
この話で最初に分けておきたいのは、樹木被害の報告件数と、2011年の停止命令の直接根拠だ。
米環境保護庁は停止命令で、デュポン自身の試験データと、当局や州による調査情報を踏まえ、ラベルに記された使用方法や警告では非標的の針葉樹を十分に保護できず、表示上の問題がある疑いがあると判断した。
つまり当局が動いた理由は、「被害の可能性を示す情報が集まり、当時の表示や使用条件のまま流通させることに規制上の問題がある」とみたことだった。
2011年9月には登録条件も改められ、当局の措置なしに販売・流通・マーケティングできない状態になった。
樹木被害の報告は7000件超。ただしゴルフ場だけの数字ではない
停止命令が出た2011年8月の時点で、米環境保護庁はデュポンから提出された、インプレリスに関連する非標的樹木の損傷・枯死の報告が7000件を超えていたと記録している。2014年の和解資料でも7000件超とされ、主に名前が挙がったのはノルウェートウヒとストローブマツだった。
数字だけを見ると強烈だが、読み方には注意がいる。
この7000件超は、インプレリスが販売された用途全体から寄せられた有害事象の報告数であり、ゴルフ場だけの件数ではない。米環境保護庁の公開資料では、ゴルフ場由来が何件だったのかは分けて示されていない。
さらに、7000件超すべてについて「インプレリスが原因だ」と個別に因果関係を確定した件数でもない。2011年の停止命令時点でも、当局は常緑樹被害の可能な原因について調査を続けていた。
したがって、「ゴルフ場で7000件の被害が出た」「7000件すべてが薬剤による被害と確定した」と読むのは違う。
2014年には、被害報告とは別に表示と試験報告が問題になった
インプレリスの規制史は、樹木被害の報告だけでは終わらない。
2014年9月の和解で米環境保護庁は、2010〜2011年に適切な使用指示や警告などを欠いた表示で製品を販売・流通したとして、320件の表示違反を主張した。
さらに、インプレリス使用による潜在的な有害影響を示す18件の試験報告について、提出が遅れたとも主張した。これらは登録手続き中や登録承認後に提出義務がある情報だったと当局は説明している。
デュポンはこの和解で185万3000ドルの民事制裁金に合意した。
ここでも、320件や18件は7000件超の樹木被害報告とは別の数字だ。前者は表示や情報提出をめぐる連邦農薬法上の違反に関する主張で、後者は非標的樹木の損傷・枯死について寄せられた報告の総数である。
登録は2014年9月8日に失効した
インプレリスの米環境保護庁登録は2014年9月8日に失効した。1週間後の9月15日には、表示違反や試験報告の遅延をめぐる和解が公表された。
時系列で並べると、2010年8月に条件付き登録、2011年8月に販売・使用停止命令、同年9月に販売などを制限する登録条件へ変更、2014年9月に登録失効と和解、という流れになる。
約1年で停止に至った理由を「危険な薬剤だったから」の一言で片づけると、この経緯の重要な部分が抜け落ちる。
2011年の停止命令では、非標的樹木を守るには表示や警告が不十分である疑いが直接の規制根拠になった。停止命令時点ですでに樹木被害の報告は7000件を超えており、2014年には表示違反と試験報告の遅延についても行政上の和解に至った。
インプレリスの事例で異例なのは、承認から短期間で被害情報と規制対応が積み上がり、販売停止、登録条件の変更、そして登録失効まで進んだことだ。ゴルフ場も販売対象だったが、公開資料から確認できるのはそこまでで、ゴルフ場だけの被害件数を7000件超から切り出すことはできない。
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