ゴルフ場農薬は「超過ゼロ」から2件へ 2014年度と2025年度を単純比較できない理由
GOLF DNA編集部🇯🇵

3行まとめ
- 環境省の2014年度調査は511コース・1万7328検体で当時の排水口指針値超過ゼロ。
- 2025年度は延べ2064ゴルフ場・3万4773検体で、水濁指針1件・水産指針1件が超過した。
- ただし2017年の水産指針追加、2020年の現行指針への改訂で評価軸は変化している。
2014年度は「超過ゼロ」。2025年度は「超過2件」。数字だけを並べれば、ゴルフ場で使われる農薬による水質への影響が悪化したようにも見える。
だが、この2つは同じ物差しで測った数字ではない。
環境省が2026年9月8日に公表した2025年度(令和7年度)の調査では、延べ2064ゴルフ場で3万4773検体を調べた。排水口の検体は1万250。そのうち、水質汚濁を防ぐための「水濁指針値」を超えたものが1検体、水生生物への影響を見る「水産指針値」を超えたものが1検体だった。
一方、2014年度の調査は511コース、1万7328検体。当時の排水口の濃度指針値を超えた検体はゼロだった。
調査規模も、評価する項目も違う。だから「0件が2件になった=10年で悪化した」とは読めない。
2014年度と今では、監視の対象そのものが違う
大きな変化は、水質だけでなく、水域にすむ生物への影響まで監視の軸が広がったことだ。
2014年度の調査は、当時の水質汚濁防止を中心とする指針で評価されていた。その後、2017年3月に水産動植物への被害防止を目的とした「水産指針値」が新設された。
さらに2020年3月、農薬取締法の改正を踏まえて現行の指導指針が策定された。ここでは「水質汚濁の防止」に加え、「水域の生活環境動植物の被害防止」が明示されている。
現在の排水口調査は、水質汚濁側の水濁指針値と、水生生物側の水産指針値という2つの軸で見る仕組みだ。
つまり2020年に突然、生物への監視が始まったわけではない。2017年に水産指針が加わり、2020年に現在の制度へ整理・拡張された。そのため2014年度の「ゼロ」と、現在の「水濁1・水産1」を一列に並べること自体に無理がある。
最新の2件は、何が超えていたのか
2025年度の全国調査は、延べ2064ゴルフ場、3万4773検体。排水口だけで1万250検体だった。
指針値超過は、水濁指針で1検体、水産指針で1検体。少なくとも最新年度の「2件」は、同じ指針を2検体が超えたという意味ではない。
前年の2024年度は延べ2095ゴルフ場、3万5012検体を調査し、水濁指針の超過が2検体、水産指針の超過が7検体だった。2025年度は両方の区分で前年より少なくなっている。
現行制度の直近5年では、水産指針の超過が16件から1件へ
同じ現行指針下で見やすいのは、環境省がまとめた2021〜2025年度の推移だ。
排水口の検体数は、2021年度9573、2022年度9083、2023年度9740、2024年度1万310、2025年度1万250。
水濁指針の超過は順に0、0、0、2、1検体。水産指針の超過は16、8、7、7、1検体だった。
環境省は、この5年間について、超過検体が排水口検体に占める割合は低水準で推移し、年度ごとの増減はあるものの「おおむね減少傾向」と評価している。
長期変化を見るなら、2014年度のゼロ件と最新2件を直接比べるより、評価軸がそろった直近5年を見るほうが実態に近い。
「超過していない」と「判定できた」は同じではない
もう一つ、集計を読むときに見落とせない数字がある。
2025年度は、水産指針について38検体が「超過判定不能」だった。分析で測れる最小濃度である定量下限値が指針値より高く、指針を超えたかどうかを判定できなかったためだ。水濁指針では、この理由による判定不能はゼロだった。
この38検体は「超過」として数えられてはいないが、「指針値以下だった」と確認できた検体でもない。超過件数だけを見るときには、この別枠があることも頭に置く必要がある。
0件から2件へ、だけでは悪化を語れない
2025年度の最新結果で確認された超過は、水濁指針1検体、水産指針1検体だった。2014年度は当時の指針でゼロだった。
しかし、その間に水産指針が追加され、現行制度では生活環境動植物への影響まで監視対象が広がった。調査規模も511コース・1万7328検体から、延べ2064ゴルフ場・3万4773検体へ大きく変わっている。
だから「ゼロが2になったから悪化した」とも、「2件しかないから問題がない」とも、この数字だけでは言えない。
2026年9月8日時点の最新資料から読み取れる現在地は、監視の物差しが以前より広がったうえで、現行指針下の超過割合は環境省が低水準・おおむね減少傾向と評価していること。そして最新年度にも、判定できなかった水産指針の38検体が残っていることだ。
昔と今を比べるなら、件数だけではなく「何を、どれだけ、どの基準で測ったか」までそろえて読む必要がある。
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