ラフからのショットのばらつきを40%増やしても、PGAツアー選手モデルは最大距離を狙い続けた
GOLF DNA編集部🌐

3行まとめ
- USGA/R&Aの平均PGA TOUR選手モデルでは、フェアウェイ幅15〜50ヤード、ホール長400〜500ヤード、ラフ罰最大+40%まで変えても、意図するドライビング距離は最大のままだった。
- 一方、+40%では平均スコアが1ホール0.12打悪化。
- 2015〜2021年の実データ分析でもラフ高単独と飛距離に有意な関係は出なかったが、池・木・OBを省いたモデルを実コース全体へ一般化はできない。
「ラフを深くすれば、プロもドライバーを持たなくなる」。コース設定を考えるとき、そう考えるのは自然だ。
ところが、USGAとR&Aが平均的な米男子ツアー選手をモデル化したシミュレーションでは、ラフからのミスの代償をかなり重くしても、狙うティーショットの距離は短くならなかった。
最大条件は、ラフからのアプローチ結果のばらつきを通常のプライマリーラフより40%増やす設定。それでもモデルが選んだのは、最大可能距離だった。
重要なのは、「刻まなかった」ことと「ラフが効かなかった」ことは同じではない、という点だ。+40%の条件では平均スコアは1ホールあたり0.12打悪化した。罰は効いている。それでも、ティーショットを短くするほどには戦略が変わらなかった。
「40%厳しいラフ」は、ラフ高を40%伸ばした意味ではない
この研究でいう+40%は、芝の長さを40%増やした条件ではない。
平均的な米男子ツアー選手を表すモデルで、ラフから打ったアプローチの結果のばらつきを、通常のプライマリーラフより40%大きくした条件だ。つまり「ラフに入った後のショットが、より不確実になる」ように罰を強めている。
モデルの参照値は、ドライバー飛距離がおよそ293ヤード。幅30ヤードのフェアウェイではフェアウェイキープ率58%という設定だった。
研究ではラフを4段階にし、フェアウェイ幅を15、30、50ヤード、ホール長を400、450、500ヤード、グリーンを20×20ヤードと30×30ヤードに変えた。それぞれの組み合わせを2万5000回ずつ計算している。
かなり条件を振った実験だが、最大+40%のラフ罰を含む全条件で、モデルが意図したドライビング距離は最大可能距離のままだった。
フェアウェイ15ヤードでも、狙う距離を落とさなかった
フェアウェイ幅を変えると、実際に記録された平均ドライビング距離には差が出た。
幅15ヤードでは289.1ヤード、30ヤードでは291.2ヤード、50ヤードでは293.0ヤードだった。
ただし研究では、この差を「狭いから刻んだ」とは解釈していない。幅の広いフェアウェイほど着弾後のバウンドやランが増えたためで、モデルが狙う距離自体を短くしたわけではなかった。
ラフの罰だけを変えた比較では、平均ドライビング距離は中間ラフ、通常のプライマリーラフ、+20%、+40%のすべてで291.1ヤードだった。
「ラフが厳しくなるほど、ドライバーを抑えてフェアウェイを取りにいく」という変化は、このモデルの範囲では起きなかった。
それでもラフを厳しくすれば、スコアは悪くなる
戦略が変わらないからといって、コース設定が無意味だったわけではない。
通常のプライマリーラフを基準にすると、中間ラフでは平均スコアが1ホール0.11打良化した一方、ラフからのばらつきを20%増やす条件では0.08打、40%増やす条件では0.12打悪化した。
テストした組み合わせ全体では、最も易しい条件の平均が3.82打、最も難しい条件は4.84打だった。コースの難しさは明確にスコアへ表れている。
ここがこの研究の面白いところだ。ラフの代償を大きくすると成績は悪くなる。しかし、平均的なツアー選手モデルにとっては、その損失を避けるために飛距離を捨てるより、最大距離を取りにいく方がまだ有利だった。
実際の米男子ツアーでも「ラフ高だけ」では飛距離を説明できなかった
シミュレーションとは別に、USGAとR&Aは2015〜2021年の米男子ツアーのショットリンクとコース設定データも分析している。
その分析では、ラフ高だけを使ってドライビング距離を予測したモデルに、統計的に有意な関係は確認されなかった。
長いラフはスコア面では無関係ではない。分析上、長いラフと短いラフではラフからの損失に0.12打の差があり、かなり極端な仮定を置いた場合でも、1ラウンドへの推定差は約0.16打とされた。
つまり実データでも、「ラフを長くすれば、その分だけ選手が飛距離を落とす」という単純な関係は見えていない。
ただ、この観察データは因果実験ではない。ラフの高さ以外にも、ホール形状、天候、選手層、他のコース設定が同時に違う。ラフ高との単純な関係が有意でなかったことを、「ラフは戦略に影響しない」という証明にはできない。
池、木、OBが入れば話は変わり得る
シミュレーションにも大きな境界がある。
モデルに使ったのは基本的なテストホールで、池、木、OBなどの障害物は省かれている。さらに「平均的な米男子ツアー選手」1種類のモデルで、選手ごとの飛距離、曲がり幅、得意不得意も表現していない。
+40%よりさらに大きなラフ罰を設定したとき、どこで最大距離戦略が崩れるかも検証されていない。
実際のゴルフでは、300ヤード先に池がある、片側がOB、ラフからグリーンを狙えない、といった条件が一つ加わるだけで判断は変わる。研究者側も、実コースの障害物などによって戦略が変わり得る余地を残している。
「深いラフなら刻む」は、少なくとも自動ではない
この二つの分析から言える範囲は明確だ。
平均的な米男子ツアー選手を使った簡略モデルでは、フェアウェイを15ヤードまで狭め、ラフからのアプローチ結果のばらつきを40%増やしても、最大距離を狙う戦略は変わらなかった。しかも実際の米男子ツアーデータでも、ラフ高単独とドライビング距離に有意な関係は確認されなかった。
同時に、ラフを厳しくすればスコアは悪化している。+40%条件では平均0.12打/ホールの悪化だ。
だから結論は「ラフは効かない」ではない。ラフだけを厳しくしても、飛距離を捨てる判断まで引き出せるとは限らない、ということだ。
飛ばす価値と、外したときの代償。その境目を決めるのはラフの深さだけではなく、その先にある池、木、OB、ホール形状まで含めたコース全体の設計になる。
出典:digital-pd.usopen.com / USGA(2)
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