16.8億ドルで売られたクラブカー、翌年に欧州メーカー買収 ゴルフカート会社は街の電動車へどこまで広がったか
GOLF DNA編集部🇺🇸

3行まとめ
- 2021年に16.8億ドルでプラチナム・エクイティへ売却されたクラブカーは、翌年にガリアとメレックスを傘下へ入れた。
- 2025年には約1000台が配送で使われ、2026年も公道対応を含む商用電動車を展開する。
- ゴルフカート会社が物流・施設・公道用途へ広げた経緯と、数字ではまだ測れない部分を追う。
クラブカー(Club Car)と聞けば、ゴルフ場を走るカートを思い浮かべる人が多いだろう。ところが2026年の同社は、ゴルフ場の外でも使う小型電動車を販売している。
転機の一つは2021年だった。インガソール・ランドは同年6月1日、クラブカーを投資会社プラチナム・エクイティへ現金16.8億ドルで売却した。翌2022年、クラブカーはデンマークのガリアを買収。そこには、ガリアが前年に取得していたポーランドのメレックスも含まれていた。
売られた翌年に、今度は買う側へ回った。その買収でクラブカーが公式に掲げたのは、欧州での拡大と、公共・施設・ラストワンマイル配送などゴルフ場外の小型電動車市場だった。
16.8億ドルで売った側は、事業を絞ろうとしていた
まず、2021年の売却はクラブカー側の業績悪化を理由にした撤退として発表されたものではない。
売り手のインガソール・ランドは、事業ポートフォリオを組み替え、成長性の高い流体技術や産業向け事業へ集中すると説明した。売却で資本余力を高め、純有利子負債を1倍未満へ下げる方針も示している。
一方、買い手となったプラチナム・エクイティの傘下に入ったクラブカーは、その翌年にガリアを取得した。2022年の買収発表では、欧州での存在感を広げるだけでなく、消費者向け、公共・施設向け、ラストワンマイル配送といった新しい製品分野へ進む狙いが明記された。
つまり、2021年の売却と2022年の買収は、同じ会社を挟んでいても意味が違う。旧親会社は事業を絞り、クラブカーは新しい株主の下で小型電動車の用途を広げる方向へ動いた。
ガリアとメレックスで、ゴルフ場外を狙った
ガリアはデンマークの電動車メーカーで、その買収にはメレックスも含まれた。クラブカーが示した狙いは、単にゴルフカートの車種を増やすことではなかった。
公式発表では、欧州市場に加え、公共施設、商業施設、配送といった用途が明示されている。ゴルフ場で使う低速の小型車という土台を、別の場所へ持ち出そうとした形だ。
ただし、買収金額は公表されていない。ガリアとメレックスを取得したことで、非ゴルフ事業の売上が何%増えたのかという数字も確認できない。
ここを「投資会社に買われたから一気に事業転換できた」と結論づける材料はない。確認できるのは、買収の目的としてゴルフ場外への拡張を掲げ、その後に実際の製品と導入例が現れていることまでだ。
約1000台が配送へ 単発の試作ではなくなった
その実利用を分かりやすく示すのが、北欧の郵便・物流会社ポストノードだ。
クラブカーが2025年に公表した事例では、ポストノードの約1万2000台の車両群のうち5000台超が電動車で、約1000台のガリア・ユーティリティが配送に使われている。1日に約700回の発進・停止を繰り返す用途として紹介された。
これは、展示会用の試作車や数台の実証実験とは違う。少なくとも配送という一つの用途では、約1000台規模で運用されている実例がある。
2025年7月には、ガリアが教皇レオ14世の国際移動用として特注の電動車2台を製作した。長距離の航空輸送でも分解を必要としない仕様とされた。
教皇向けの2台だけを見れば特殊案件だが、ポストノードの約1000台と並べると、クラブカー傘下の電動車が物流から特注用途まで異なる市場へ入っていることが分かる。
2026年も「ゴルフ以外」は残っている
では、この拡張は一時的だったのか。
2026年9月21日時点で、プラチナム・エクイティはクラブカーを現行の保有企業として掲載している。クラブカー側もガリアとメレックスを自社グループに含めている。
商品面では、商用車「Urban」を展開し、非公道向けのUrban XRに加えて、公道走行に対応するUrban LSVも販売している。用途として整備や配送などを掲げ、LSVは最高時速約40kmの仕様だ。
2022年に示した公共・施設・配送への拡張方針は、少なくとも2026年時点でも製品群として残っている。
ゴルフカート会社をやめたわけではない
ここで重要なのは、クラブカーがゴルフ事業を捨てて「街の電動車会社」へ変わったわけではないことだ。
2026年もクラブカーの事業にはゴルフ車両があり、その上にUrban、ガリア、メレックスといった非ゴルフ用途が重なっている。
2021年に16.8億ドルで売却され、2022年にガリアとメレックスを取り込み、2025年には約1000台規模の配送利用と特注車の実例が確認され、2026年も商用・公道対応車を販売している。時間軸で見ると、ゴルフ場外への展開は単発の企画ではなく継続している。
一方で、その転換が会社全体の売上の何割を占め、買収前よりどれだけ利益を増やしたのかは公開資料から分からない。
クラブカーが実際に広げたのは「ゴルフカート」という車体の用途だった。ゴルフ場で培った小型電動車の事業を、物流、施設、公道へどこまで大きくできるのか。その成否を数字で判断できる段階には、公開情報上まだ達していない。
出典:investors.irco.com(2) / clubcar.com(2・3・4・5・6) / platinumequity.com
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