打ち込むほど緩むドライバーの底蓋。救ったのはNASAが使ったねじ山
GOLF DNA編集部🇺🇸
3行まとめ
- コブラのドライバー「KING LTD」は、試作中に底の蓋が打球の振動で緩んだ。
- 解決策はNASAがスペースシャトルのエンジンでも採用した特殊なねじ山。
- ただしNASAの発明ではない。
新しいドライバーを作った。ヘッドの底には、中をのぞける丸い窓も付けた。ところが何度もボールを打つと、その窓の蓋が緩んでしまう。コブラの「KING LTD」が試作中にぶつかったのは、フェースでも飛距離でもなく、ねじの問題だった。
なぜ底に蓋がある?
2015年発売のKING LTDは、ソールに「SpacePort」というねじ込み式の蓋を設けた。見た目だけの飾りではない。蓋を外せばヘッド内部に手が届き、重さを調整したタングステンを狙った位置に固定できる。アルミ製の蓋そのものも16gの重りとして働く。
だが、ドライバーのインパクトは毎回、蓋にも衝撃と振動を伝える。NASAの技術移転資料によれば、コブラの試作品は繰り返し打つうちに蓋が緩み始めた。重量を精密に配置できても、そこが外れるなら製品にはできない。
ヒントはスペースシャトルにあった
コブラが調べたのは、激しい振動にさらされる宇宙機器のねじ。行き着いたのが「Spiralock(スパイラロック)」だった。
普通のねじは、締め付ける力が最初の数山に偏りやすい。Spiralockはねじ山の受け側をくさび状にして、力をより広く分散させる。NASAの試験では、通常のナットを緩ませる振動の2倍に耐え、その状態を10倍長く保った。スペースシャトルの主エンジンでは、750か所以上の接続に使われたという。
コブラはこの形をSpacePortの周りのねじ山に取り入れ、蓋を固定できるようにした。完成したKING LTDは2015年11月に発売された。宇宙船の部品をそのままクラブに貼り付けたのではない。厳しい振動に耐える仕組みを、ゴルフクラブに応用したのだ。
「NASAが発明」は違う
ここで話を盛ると、肝心の面白さが薄れる。Spiralockを考案したのは民間企業のホレス・ホームズで、特許は1979年。NASAの研究者が性能を検証し、1984年に結果を発表してから用途が広がった。流れは**民間の発明→NASAで検証・採用→ゴルフへの応用**だ。
しかもコブラには、もう一つ別の宇宙との接点があった。2014年には小型のSpacePort部品を国際宇宙ステーションへ送り、無重力下で銀の結晶成長を調べている。ただし、この実験がSpiralockを発明したわけでも、ドライバーの蓋を直接直したわけでもない。
最先端のドライバーを完成させた鍵が、地味な「蓋を緩ませない方法」。宇宙で試された技術が役立ったのも面白いが、そもそも人が何度も打つクラブがロケットと同じ振動の悩みを抱えていた、というのがこの話の妙だ。
出典:nasa.gov / spinoff.nasa.gov
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