池に1年沈めたPro V1は、本当に飛ばない? ロボット実験が揺らした「水没球」の常識
GOLF DNA編集部🇺🇸

3行まとめ
- 新品のPro V1を実際のゴルフ場の淡水池へ1・3・5・12か月沈め、ロボットで対照球と比べた研究がある。
- 最長1年でも総飛距離と左右の散らばりに有意差は出ず、差の傾向が本物でも平均約1ヤードだった。
- ただし対象は無傷の2016年型Pro V1。
池から拾ったボールを見ると、ゴルファーの頭にはだいたい同じ疑問が浮かぶ。
「これ、水を吸って飛ばなくなってない?」
しかもこの話、ただの迷信ではない。1996年のGolf Digestには、水中へ沈めた旧世代球で飛距離低下を報告した実験がある。6か月後、2ピース球は約9ヤード、3ピース球は約17ヤードのキャリー低下とされた。
では、現代のPro V1でも同じなのか。
2023年、研究者たちはかなり真正面から確かめた。新品のPro V1を本当にゴルフ場の池へ沈め、最長1年後に回収し、ロボットで打ったのである。
新品のPro V1を、池へ1年間沈めた
使われたのは2016年型のTitleist Pro V1。オークランド大学のKatke-Cousins Golf Courseにある3つの淡水池で、球をケージに入れ、水深約0.6mと1.0mの池底へ沈めた。
回収時期は1か月、3か月、5か月、12か月。乾いた室内で保管した対照球も用意した。
回収した球は水で流しただけではない。中古球販売を想定した標準化された手順で洗浄し、対照球と一緒に無作為の番号を振った。そのうえで、どれが池の球か試験側に分からない状態にして、専用ロボットで打たせた。
4回の測定で解析した球は合計143個。池の水温は季節によって0.2〜28.0℃だった。
「拾った球を何発か打ってみた」ではない。かなり真面目な水没実験である。
1年後でも、飛距離に有意差は出なかった
結果は、昔からのイメージとは逆だった。
池へ沈めた球と対照球の間で、総飛距離に統計的な有意差は確認されなかった。左右の散らばりにも有意差はなかった。
研究では、水没球が少し短くなる全体傾向は見えたものの、それを本当の性能差だと仮定しても平均で約1ヤード、総距離の約0.5%だった。
12か月後の球重量にも有意差は出ていない。
つまりこの条件では、「1年も池に沈んでいたから、中まで水を吸って明確に飛ばなくなった」という証拠は見つからなかった。
ただし、見た目は変わった。
長く沈めた球ほど黄色っぽい変色が増え、12か月後には状態の悪い見た目の球も現れた。それでも、この研究では変色の程度と飛距離や左右の散らばりとの関係は確認されなかった。
見た目は年を取った。でも、ロボットが打つと性能差は見つからなかったのである。
1996年の「水没球は飛ばない」と何が違うのか
ここが面白い。
1996年の実験では、6か月の水没で大きな飛距離低下が報告されていた。2023年の研究者たちは、その違いの有力な理由としてボール構造の世代差を挙げている。
古い実験には、天然ラテックス系のバラタ風カバーなど、現在とは異なる素材の球が含まれていた。一方、Pro V1のような現代球は、硬いアイオノマー系の中間層やウレタン系カバーなど、水分の侵入に強い構造へ変わっている。
ただし、「ウレタンだから絶対に水を通さない」と証明した研究ではない。古い実験とは洗浄方法などの条件も違う。
言えるのは、少なくとも今回の現代Pro V1では、昔の実験と同じような大幅な距離低下を再現できなかった、というところまでだ。
「池の中古球は全部新品同様」でもない
ここで結論を広げすぎると、今度は逆の迷信になる。
この研究で池へ入れたのは、箱から出した新品のPro V1だった。カート道で削れた球でも、深い傷が入った球でもない。調べたモデルも1種類だけ。環境も一般的な淡水池だ。
海は別だ。2019年の研究では、カリフォルニア沿岸から大量に回収されたゴルフボールに、表面が崩れたり内部が露出したりする劣化が確認されている。
また、これは「打つ瞬間に表面が濡れている球」の研究でもない。池から回収し、洗浄した球そのものの長期水没による性能変化を見ている。
だから、この研究から言える実用的な結論はかなり狭い。
出典:International Journal of Golf Science / Golf Digest / pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
関連記事
Pro V1に販売差し止め。それでもブランドが止まらなかった理由
3行まとめ
- 2008年、米連邦地裁は旧2007年型Pro V1/Pro V1xに2009年1月1日からの販売差し止めを命じた。
- しかしアクシネットは発効前に配合を変え、交換制度と新モデル投入でブランドを継続。
- 翌年には控訴審が差し止めを失効させた。