コラム上達・サイエンス
57歳で 優勝した 「練習しない プロ」手嶋 多一 ホテルでは 6番アイアンと パターで 鏡を 見る
「日本一練習しないプロ」と呼ばれる手嶋多一が、2025年11月の国内シニアツアー最終戦で4年ぶりに優勝した。57歳。2日目には8バーディー、ノーボギーの64を出し、最終日はタマヌーン・スリロットとのプレーオフを制した。
試合会場の打球練習場では、ほとんど球を打たないという。ところが手嶋は、毎日ホテルへ6番アイアンとパターを持ち帰る。部屋で球を打つためではない。鏡の前でクラブを構え、アドレス、ボールの位置、手元の位置を確認するためだ。
球を打つ前に、構えをそろえる
日本プロゴルフ協会の本人取材で、手嶋はテレビのCMの合間にも鏡で構えを点検すると話している。アドレスがずれたまま球数を重ねれば、望まない動きを繰り返すことになる。まず打つ前の条件を確かめる、という考え方だ。
6番アイアンを選ぶ特別な理由は、取材では語られていない。分かっているのは、そのクラブとパターを使って、同じ項目を毎日見ていたこと。鏡だけで実際の打点や球筋まで確かめられるわけではないが、昨日と同じように構えられているかを点検することはできる。
朝の準備にも手嶋らしさがある。大会中は打球練習場へ行かず、パッティンググリーンだけで過ごす日もあった。そこで主に選ぶのは、右から左へ曲がるフックライン。持ち球のドローをイメージし、右側にOBのある1番ホールのティーショットにつなげていたという。本人は3日とも1番のティーショットをフェアウェイへ運べたと話した。ただし、パット練習がその結果を生んだと証明するものではない。
「打たない」は「準備しない」ではない
手嶋は最終日の18番で、入れれば優勝という約1メートルのバーディーパットを外した。それでも同じ18番で行われたプレーオフの最初のホールでバーディーを奪い、勝った。鏡の前の確認だけで勝敗が決まるほど、ゴルフは単純ではない。実際、前回のシニアツアー優勝から4年を要した。
この話を一般ゴルファーの「練習場へ行かなくてよい」という結論にするのは違うだろう。手嶋自身、球を打つときは練習マットの向きに従うだけでなく、打ち出す方向や曲がり方を変えて試すという。球を打つ練習にも目的がある。
面白いのは、打球数では見えない準備を続けていることだ。ボール位置や手元が普段と違うなら、スイングを変える前に気づけるかもしれない。何球打ったかより、今の一球で何を確かめたいか。手嶋のホテルでの習慣は、その問いを残す。
3行まとめ
- 手嶋多一は2025年の国内シニアツアー最終戦で、57歳にして4年ぶりの優勝を挙げた。
- 会場の練習場ではほとんど球を打たない一方、ホテルには6番アイアンとパターを持ち帰り、鏡の前で構えとボール位置、手元を確認していた。
- 球数を減らせば勝てるという話ではない。
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