文献研究 v1.1 · 2026年10月20日公開
RESEARCH 004 · 研究解説
寄せワン率だけではわからないアプローチの差
寄せワンを逃したあとの打数と、距離・ライ別の成績。
資料照合 2026年10月20日 · ゴルフの科学 · 文献・公表データによる研究

寄せワンが取れなかった。アプローチをそう記録しても、3打で上がったのか、4打かかったのかは残らない。
長いパットを二つで収めた場合と、グリーンを越えてもう一度アプローチした場合。同じ寄せワン失敗だが、失った打数は違う。
国内外のプロの成績と技量別アマのデータを使い、アプローチを打ってからホールアウトするまでの打数を調べた。寄った距離や寄せワン率だけで、どこまで腕前を比べられるのだろうか。
01
失敗後の打数
寄せワンを逃したあとに 何打かかるか
Arccosが公表したスクラッチのバンカー0〜25ydの寄せワン率は34%。この数字から、残りの66%で何が起きたかまではわからない。
仮に、寄せワンを逃した全ケースを3打で収めたとする。チップインがなければ平均は2.66打になる。一方、失敗の半分で4打かかるなら平均は2.99打。同じ34%でも、平均で0.33打違う。
この二つは選手の実測成績ではなく、公表された成功率に仮定を加えた計算例だ。チップインは0、5打以上も起きない条件で計算している。
寄せワンの回数が増えなくても、4打かかっていた場面を3打で終えられればスコアはよくなる。寄らなかった一打を、毎回同じ失敗として片づける必要はない。公表成功率の出典
寄せワン率34%の二つの計算例
スクラッチ・バンカー0〜25ydの公表成功率を使い、寄せワンを逃したあとの打数を変えています。二人の実測成績ではありません。
寄せワンを逃しても、すべて3打
2.66打/平均
- 2打
- 34%
- 3打
- 66%
- 4打
- 0%
寄せワン失敗の半分で4打
2.99打/平均
- 2打
- 34%
- 3打
- 33%
- 4打
- 33%
チップインは0、5打以上も起きない仮定で計算。2.66打はスクラッチの実測平均ではありません。棒は各打数の割合で、合計100%です。計算式と32通りの仮定 →
02
距離とライ
距離とライで 成績はどう違うか
2025年のPGA TOURのスクランブリング平均は、10yd未満で86.27%、20〜30ydで52.05%、30yd超で29.50%だった。
スクランブリングは、パーオンを逃したホールをパー以上で上がった割合を指す。どのアプローチでも、その位置から2打で上がれる確率ではない。また、距離帯ごとにライやコースの条件も違うため、差のすべてを距離のせいにはできない。PGA TOUR公式・2025年を選択
Shot ScopeのHC15、0〜50ydの集計では、寄せワン率はフェアウェイ48%、ラフ28%だった。こちらも残距離や傾斜を揃えた実験ではないが、同じ距離帯の成績に20ポイントの差がある。Shot Scope公式・PDF11ページ
ピンに近くても、深いラフに沈んでいたり、グリーンに落とす余地がほとんどなかったりする。次の一打を考えると、グリーンを外した場所はピンまでの距離だけでは比べられない。
PGA TOURの距離別スクランブリング
2025年通年の公式平均。パーオンを逃したホールをパー以上で上がった割合です。
- 10yd未満
- 86.27%
- 20〜30yd
- 52.05%
- 30yd超
- 29.50%
棒は0〜100%。距離帯ごとにライやコースの条件も異なります。その位置から2打で上がれる確率ではありません。定義と出典 →
HC15のフェアウェイとラフ
Shot Scopeの0〜50ydの寄せワン。収集年・各区分の球数は非公表です。
- フェアウェイ
- 48%
- ラフ
- 28%
距離・傾斜を揃えて打ち比べた実験ではありません。差は20ポイントで、「20%の低下」とは異なります。出典と対象範囲 →
2025年の国内外4ツアーを見る
公表実績 GD再集計
公式平均と掲載者再集計を併記しています。対象選手と平均の求め方が異なるため、この表で男女やツアーの技量に順位は付けられません。
| ツアー | スクランブリング等※ | サンドセーブ | 対象と集計方法 |
|---|---|---|---|
| PGA TOUR | 58.52% | 56.52% | 公式Tour Average |
| LPGA | 56.21% | 44.21% | 掲載154人・機会加重再集計 |
| JGTO | 61.97% | 47.28% | 掲載103人・機会加重再集計 |
| JLPGA | 61.58% | 42.60% | 92人。リカバリーは率の単純平均、サンドセーブは機会加重 |
※スクランブリング/リカバリー。LPGAは年間掲載154人、JGTOは103人、JLPGAは規定対象92人。JLPGAのリカバリーは公開の成功数・機会数と掲載率が一致しない選手がいるため、選手別の掲載率を単純平均しています。分子・分母と計算方法 →
03
転がすか上げるか
転がせる場所か 上げる必要があるか
ボールとグリーンの間が短い芝なら、転がして寄せる選択がある。間にバンカーがあれば、そこを越すキャリーが要る。使える打ち方は、ボールがある場所によって変わる。
Arccosの集計では、10ハンディのラフから20ydで、PWを使ったショットはLWより3ft近かった。ただし、LWを選んだ場所の方が難しかった可能性もある。同じ人が同じ場所から打ち比べた結果ではないので、この差をクラブの差だけと考えるのは早い。提供元の比較
目の前の芝を転がせるか。キャリーで越すなら、どこまで飛ばすのか。グリーンに落ちてから止まるまでの余地はあるか。普段の自分の球で届く場所を、具体的に確かめたい。
薄く当たっても長いパットを打てる場所に残るのか、それともグリーンを越えて下りのアプローチになるのか。ダフったらバンカーに入るのか。打ち方を選ぶときは、よく当たった球の寄り方と、ミスした球の行き先を一緒に考える。
04
自分の記録
寄せワンの成否と 上がるまでの打数を残す
プロや同じハンディの人の平均と、自分の成績は別だ。得意な距離も苦手なライも違う。打ち方やクラブを選ぶには、自分のラウンドの記録が要る。
打つ前の距離とライ、使ったクラブ、打ったあとに残った場所、ホールアウトまでの打数を残す。続くパットも、打ち直したアプローチも数える。
たとえば、寄せワンは増えなかったが、バンカーに残す球が減った。その変化があったかどうかは、成功か失敗かだけの記録ではわからない。
同じ距離とライの記録がたまったら、2打以内で上がった割合、平均打数、4打以上かかった割合を比べる。一回の結果で得意不得意を決めず、寄らなかった場面で何打かかっているかを確かめる。
この記録方法によるスコア改善量は、まだ検証していない。本編では、プロの年間成績、アマの技量別データ、推計の計算式と仮定を詳しく説明している。