公表資料調査 · 2026年10月28日公開
ゴルフカートの市場と電池・リースの費用
新車需要とメーカーの規模、電池と長期契約のお金の流れを追う。
GOLF DNA編集部 · 調査 2026年10月25日
GOLF CART · BATTERY · LEASE
車両の販売から、
使い続ける商売へ
553 億円
ヤマハ発動機のゴルフカー売上 · 2025年
前年比 約25%減
世界需要・電池・貸し手の数字も追う
ゴルフ場に並んでいるカートは、車を作って売るメーカーだけの商売ではない。電池を交換する会社、充電設備を整える会社、長期間貸す会社、故障を直す会社までつながっている。
規模はどれくらいで、伸びているのか。数字を公表している会社から追ってみると、ヤマハ発動機のゴルフカー事業は2025年に553億円を売り上げていた。一方、世界需要は前年から減少。販売が落ちる年にも、主にゴルフカーを対象とするリース債権は増えていた。
この違いを見ると、カート業界の輪郭が分かってくる。新車が何台売れたかと、ゴルフ場で使われ続けている車両からいくら回収するかは、別の動きをするからだ。
01
まずは「車両」「電池・保守」「貸すお金」の三つで見る
カートを導入するゴルフ場には、車両代のほかに、充電、点検、タイヤや電池の交換などの費用がかかる。電磁誘導式なら、コースに埋める誘導線なども必要になる。購入する場合も、借りる場合も、車両だけで話は終わらない。
| お金の行き先 | 何に払うのか |
|---|---|
| 車両メーカー・販売会社 | カート本体、オプション、納入 |
| 電池・設備・保守の会社 | 電池、充電設備、走路・誘導線工事、点検や修理 |
| リース・レンタルを提供する会社 | 数年に分けて使うための料金、資金を立て替えてもらう費用 |
例えば50台を6年間使うとする。1台あたりの月額に1,000円の差があるだけで、50台×1,000円×72か月=360万円の差になる。これは相場ではなく、台数と期間の大きさを知るための計算例だ。
カート業界を調べるときに、1台の価格だけでは足りない理由がここにある。なお、今回確認したヤマハの公式ページには、誰にでも当てはまる車両価格や月額料金は掲載されておらず、見積もりが必要だった。ヤマハの価格・導入案内
02
世界需要は2024年に増え、2025年は減った
ヤマハ調べのゴルフカー世界需要は、2023年18.1万台、2024年19.9万台、2025年17.6万台。2025年は前年より約11.6%減り、2023年も少し下回った。少なくともこの3年間は、毎年一直線に伸びた市場ではない。
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| 年 | 世界需要 | うち北米 | うち日本 |
|---|---|---|---|
| 2023年 | 18.1万台 | 13.0万台 | 0.9万台 |
| 2024年 | 19.9万台 | 15.3万台 | 1.0万台 |
| 2025年 | 17.6万台 | 14.0万台 | 0.6万台 |
2025年は、需要の約8割が北米だった。日本では5人乗り、北米では2人乗りが中心とされる。いつも日本のゴルフ場で見かける大きなカートを思い浮かべると、世界市場の姿とは少しずれる。
日本も2024年の約1万台から2025年の約6千台へ減っている。ただし、これは1年間の需要の概数で、全国で稼働しているカートの総台数ではない。新車需要が減ったから、そのままゴルフ場のカートが4割消えたという話にはならない。ファクトブック2024、2025、2026
03
公表企業から見ると、ヤマハは年553億円の事業
ヤマハ発動機のゴルフカー売上は、2023年692億円、2024年737億円、2025年553億円。2025年は約25%減だった。出荷も2024年5.5万台から2025年4.4万台へ減っている。
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| 年 | ヤマハのゴルフカー売上 | 同社の出荷台数 |
|---|---|---|
| 2023年 | 692億円 | 5.3万台 |
| 2024年 | 737億円 | 5.5万台 |
| 2025年 | 553億円 | 4.4万台 |
553億円は、ヤマハ発動機全体の売上ではなく、ゴルフカー事業の数字だ。世界需要も同社の販売も減っており、2025年の新車事業には減速が見える。ヤマハの2025年版資料、2026年版資料
海外では、E-Z-GOやCushmanを持つTextronの特殊車両事業が、2025年に13.30億米ドル、約2,088億円を売り上げた。ただし、ゴルフ以外の車両も含む。前年からの減収にはパワースポーツ事業の売却も大きく影響しており、この数字でヤマハとのカート売上ランキングを作ることはできない。Textron年次報告書
もう一つの主要ブランドClub Carは、投資会社Platinum Equityの保有企業だ。今回確認した公式資料では、現在の売上を同じように年ごとに追えなかった。「数字が出ている会社の規模」と「業界全体の規模」は、ここでも分けておく必要がある。Club Carの保有先・事業情報
外貨は2026年10月23日17時のドル円の仲値、1米ドル=156.96円で参考換算している。過去の年度も同じ為替なので、会社の大きさを見るための目安になる。日本銀行の為替市況
04
電池の変化は大きい。ただし「カートが半額」ではない
電動カートでは、電池の購入・交換費用と、日々の管理が重要になる。ヤマハは2025年6月に投入した5人乗り電動モデル向けに、リン酸鉄リチウムイオン電池のパックを開発した。
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| 新しい電池パック | 実際の容量 | パックの重さ |
|---|---|---|
| 4kWhモデル | 4.1kWh | 約63kg |
| 6kWhモデル | 6.1kWh | 約79kg |
同社の技報によると、6kWhモデルは従来搭載していた電池に比べ、パックのコストを約50%下げた。電池を作る側のコスト低減であり、カートの販売価格や、ゴルフ場が払う交換費用が半額になったとは書かれていない。交換電池の金額は、実際の見積もりで確かめる必要がある。ヤマハ技報No.60・48~49頁
管理の手間も、電池の種類で違う。液式の鉛電池では補水の管理がある一方、同じ鉛でもAGMなどの密閉式は扱いが異なる。「鉛は全部同じ」「リチウムなら何年でも交換不要」とまとめるのは粗い。寿命は充電、温度、使い方などでも変わる。Trojanの製品区分、保守ガイド
電池が軽く、管理しやすく、安くなれば、車両を使い続ける費用を下げる余地がある。ただし、実際にいくら下がるかを知るには、車両価格に加え、電池交換と作業の費用まで比べなければならない。
05
借りるなら5~7年。月額と総額は別に見る
ヤマハの国内レンタル案内には、5年・6年・7年のプランがある。初期の支払いを小さくできることは、まとまった台数を導入するゴルフ場には意味がある。
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| プラン | 利用期間 | 支払期間 |
|---|---|---|
| 5年 | 60か月 | 60か月 |
| 6年 | 72か月 | 72か月 |
| 7年 | 84か月 | 84か月 |
| 6か月据置 | 72か月 | 据置後の66か月 |
6か月据置は、最初の半年の支払いを後ろにずらす仕組みで、半年分が無料になるという意味ではない。長く借りて月額が下がっても、契約全体の総額まで安くなるかは、見積もりを並べてみないと分からない。
また、案内には動産総合保険料が含まれるが、それだけで電池の劣化や消耗品、日常の点検まで全部込みとはいえない。返却時の負担、修理の範囲、電池交換の扱いまでそろえて比較する必要がある。ヤマハのレンタルシステム
06
売上は減っても、貸したお金の残高は増えていた
販売と違う動きが見えるのが、貸し手の数字だ。ヤマハ発動機の有価証券報告書には、主にゴルフカーのリース契約から生じる債権が載っている。
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| 公表された数字 | 2024年 | 2025年 |
|---|---|---|
| 主にゴルフカーのファイナンス・リース債権・年末残高 | 431.44億円 | 450.50億円 |
| ゴルフカー等のオペレーティング・リースの年間収益 | 65.08億円 | 68.53億円 |
前者は、貸したものについてこれから回収していく金額の残高で、1年間の売上ではない。2025年末の残高は前年より約4.4%増えていた。後者は1年間の賃貸収益で、ゴルフカー以外も含む可能性がある。契約や対象が違うため、この二つを足して市場規模にはできない。有価証券報告書・143、154頁
それでも、カートを作って販売する事業とは別に、貸して長期間回収する事業が相応の規模で存在することは分かる。新車販売が減った年に、過去から積み上がった契約まで一緒に消えるわけではない。この点が、カート業界を見るうえで面白いところだ。
07
工事、保守、中古まで続く。車両メーカーの外にも市場がある
国内のエナジーシステムサービス ジャパンは、カート販売に加えて、走路の設計・工事、電源設備の設置、電磁誘導線の埋設、アフターサービスまで扱っている。カート導入は、コース内の移動を支える設備の仕事でもある。同社カート事業
メーカー側も、納入後の接点を持つ。ヤマハの延長保証は、通常の1年に、条件を満たすと2年を追加して計3年。有償の定期点検や必要な部品交換などが条件になる。保証期間は車両や電池の寿命とは別の話だが、売った後の点検・交換が事業として続くことは分かる。ヤマハの延長保証
リースが終わった車両にも次の行き先がある。ヤマハは統合報告書で、満了車両を活用する中古車販売を事業機会として挙げている。新車の納入から、保守・電池交換、満了後の再販売まで、一台が複数回のお金の動きを生む構造だ。統合報告書2025・PDF45頁
08
次に見るのは「売れた台数」と「使い続ける費用」
2025年までの数字では、世界需要とヤマハのゴルフカー売上は減った。一方、貸し手側の残高や賃貸収益は増えた。今後も、販売の回復だけでなく、電池・保守・中古を含む利用期間全体の商売を見る必要がある。
2026年上期のヤマハのLSM売上は291億円で、前年同期の295億円からわずかに減った。LSMはゴルフカー等を扱う区分であり、ゴルフカー単独の年間売上553億円と直接つないで回復・悪化を判断する数字ではない。2026年上期決算資料・20頁
なお、ヤマハ株式会社のゴルフ用品事業終了のニュースと、ヤマハ発動機のカート事業は別の話だ。発動機側は2026年4月、ゴルフカーの製造・販売・サービスは継続すると案内している。事業継続のお知らせ
今回の公開資料から、世界のカート・交換電池・リースを全部まとめた金額までは確定できなかった。ただ、どこにお金が動くのかは見えている。ゴルフ場が何年使い、その間に何を交換し、最後に車両をどう扱うか。その流れを追うと、カートは「買うときの一度きりの費用」から、継続して支払う大きな設備の商売に見えてくる。
出典・参考資料
- ヤマハ発動機 ファクトブック2026
世界需要・地域別需要とゴルフカー出荷・売上。PDF24頁/冊子22頁。2025年実績。
- ヤマハ発動機 ファクトブック2025
PDF26頁/冊子24頁。2023・24年売上、2021~24年出荷。
- ヤマハ発動機 ファクトブック2024
PDF28頁/冊子26頁。2023年の世界・地域別需要。不可視の旧チャート数値は採用しない。
- ヤマハ発動機 第91期有価証券報告書
2024・25年の比較財務。PDF143頁:主にゴルフカーのリース債権・金融収益。154頁:ゴルフカー等の賃貸収益。
- 同報告書の2026年4月8日訂正
ブラジル子会社の資本金の訂正を確認。今回採用のリース注記への変更ではない。
- 同報告書の2026年8月5日訂正
地理的情報の訂正を確認。今回採用の143・154頁のリース数値への変更ではない。
- ヤマハ発動機 2026年12月期 第2四半期決算説明会資料
PDF20頁:LSM売上は2025年上期295億円、2026年上期291億円。ゴルフカー単独との同一視はしない。8頁:OLV事業再構築。
- ヤマハ発動機 技報No.60「ゴルフカー向け内製リチウムイオン電池パック開発」
2026年1月発行。PDF2頁/冊子49頁:4.1・6.1kWh、重量、従来電池比の6kWhパックの約50%コスト低減。製品販売価格ではない。
- ヤマハ発動機 G30Es・G31EPs 製品情報
5人乗り電動モデル、電池容量の選択肢。公開定価として使える金額は確認できず。
- ヤマハ発動機 ゴルフカー レンタルシステム
5・6・7年、6か月据置は72か月利用/66回払い。保険込み、審査会社、個別見積。
- ヤマハ発動機 ゴルフカー よくある質問
車両価格は問い合わせ。電源などはモデル別確認。異なる車種の公道条件を一般化しない。
- ヤマハ発動機 ゴルフカー 延長保証
通常1年に条件付き2年追加、計3年。有償点検・部品交換等の条件。電池寿命の資料ではない。
- ヤマハ発動機 統合報告書2025(英文)
PDF45頁:リース満了ゴルフカーの中古販売を事業機会として記載。2024年実績を扱う資料。
- ゴルフカー事業は今後も継続(2026年4月16日)
ヤマハ株式会社の用品事業終了の発表と、ヤマハ発動機のゴルフカー事業を区別。
- Textron Annual Report 2025
PDF37頁/冊子25頁:TSVの2023~25年売上、パワースポーツ事業売却の影響。E-Z-GO単独の数字ではない。
- Platinum Equity:Club Car
2021年6月取得、現在の保有先と事業範囲。今回の資料では現在の連続年売上を確認できず。
- Platinum Equity:Club Car取得合意(2021年4月12日)
約17億ドルの取得取引。過去の企業取得額であり、年間売上ではない。
- エナジーシステムサービス ジャパン:カート部
CARRYECO等、車両販売・走路設計施工・電源工事・誘導線工事・アフターサービス。
- Trojan Battery:Golf Carts and Utility Vehicles
液式鉛、AGM系、リチウムイオン等の製品区分。メーカーの製品情報として採用。
- Trojan Battery:Battery Maintenance
液式と密閉式の管理の違い、温度・放電深度・充電等で寿命が変わること。
- 日本銀行 外国為替市況 2026年10月23日
17時のドル円156.95~156.97円、仲値156.96円で全ての年を参考換算。