公表資料調査 · 2026年10月28日公開
ゴルフカートの市場と電池・リースの費用|調査レポート
世界需要3年・出荷5年と企業財務、電池の進展、長期契約・保守・中古を公式資料から調べる。
GOLF DNA編集部 · 調査 2026年10月25日
GOLF CART · BATTERY · LEASE
車両の販売から、
使い続ける商売へ
553 億円
ヤマハ発動機のゴルフカー売上 · 2025年
前年比 約25%減
世界需要・電池・貸し手の数字も追う
ゴルフ場で使う乗用カートを中心に、メーカーの販売、電池と充電・保守、リース・レンタル、中古流通までを調べた。期間の取れる資料では複数年を並べ、財務数値はゴルフに近い開示単位まで掘り下げている。
調査基準日は2026年10月25日。公表企業から規模と変化を追う方式であり、非開示企業を推計で埋めた世界売上ランキングではない。企業・団体の公式資料21件を採用し、原本、抽出テキスト、図表の確認画像、集計データを保存した。
先に主要な結果を挙げると、ヤマハ調べのゴルフカー世界需要は2023年18.1万台、2024年19.9万台、2025年17.6万台。ヤマハのゴルフカー売上は2024年737億円から2025年553億円へ減った。一方、同社の主にゴルフカーに関わるファイナンス・リース債権は、2024年末431.44億円から2025年末450.50億円へ増えた。販売、継続利用、資金回収を分けると、業界の動きを読みやすくなる。
1.調査対象と、確認できた規模
対象は、ゴルフ場向け乗用カート、その電源・電池、導入設備、維持管理、借り方、満了後の車両利用である。コース管理用の芝刈機や散布機は、前回の芝・コース管理調査の対象として分けた。今回、特殊車両メーカーの財務にはゴルフ以外が含まれるため、開示範囲を併記している。
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| 指標 | 最新値 | 何を表すか |
|---|---|---|
| ゴルフカー世界需要 | 2025年17.6万台 | ヤマハ調べの年間需要。全社の合計売上ではない |
| 日本の需要 | 2025年0.6万台 | 同調査の地域別概数。稼働車両の総数ではない |
| ヤマハのゴルフカー売上 | 2025年553億円 | ゴルフカー事業の年間売上 |
| Textron Specialized Vehicles(TSV)の売上 | 2025年13.30億米ドル、約2,088億円 | ゴルフ以外の特殊車両も含む年間売上 |
| ヤマハのファイナンス・リース債権 | 2025年末450.50億円 | 主にゴルフカー。引当金控除前の残高 |
| ヤマハのオペレーティング・リース収益 | 2025年68.53億円 | ゴルフカー等を貸した年間収益 |
車両の世界需要は台数で把握できるが、交換電池、設備、保守、リースを合算したゴルフ専用の市場金額は、この資料群からは確定できない。公表企業の数字は市場を理解する手掛かりとして扱い、範囲が違う数字の合算は行わない。
外貨は日本銀行の2026年10月23日17時のドル円156.95~156.97円の仲値、1米ドル=156.96円で換算した。日曜日の調査日に対する直前営業日の参考値で、全年度に同じ為替を使う。過去の決算を当時の円売上に直したものではない。日本銀行
2.商流――誰が買い、誰に継続して支払うのか
ゴルフ場は、一台だけを私用で買う人と違い、複数台をまとめて導入し、営業日に安定して動かす必要がある。車両選びと同時に、充電場所、電源、走路、誘導方式、点検対応を決める。導入後も電池や消耗部品の交換が発生する。
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| 段階 | 主な仕事 | 収入を得る事業者 | 規模を確認する指標 |
|---|---|---|---|
| 新規導入・更新 | 車両の製造、販売、納入 | メーカー、販売会社 | 売上、出荷・販売台数 |
| 設備整備 | 走路、充電電源、誘導線など | 設備・施工会社 | 工事売上、受注額 |
| 稼働中 | 点検、修理、電池・部品交換 | サービス会社、電池会社 | 保守契約、交換売上 |
| 資金手当・長期利用 | 購入資金の立替、車両賃貸 | 販売金融会社、リース・レンタル会社 | 債権残高、金融収益、賃貸収益 |
| 契約満了・更新 | 返却、整備、再販売 | 貸し手、中古販売会社など | 返却台数、中古販売額、残存価値 |
同じ車両がこの流れを通るため、各段階の収入を足せば「新品市場」が大きく見える。メーカーの販売と販売金融との関係では、会計上の連結消去や取引の分類も関わる。全体金額を作るには、対象と重複を統一した別の調査が必要になる。
国内の一例として、エナジーシステムサービス ジャパンは、車両販売から走路工事、電源設備、誘導線工事、アフターサービスまでを事業として明記している。車両の外にも実際の供給者がいることを確かめられる。同社カート事業
3.世界需要の3年推移――2024年の増加後に反落
以下はヤマハのファクトブックに掲載された「世界需要」の原公表値である。単位は万台、地域は北米、日本、その他。政府統計ではなくヤマハ調べで、調査方法の詳細を資料上で十分に確認できないため、確定的な世界全車両の悉皆統計とは扱わない。
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| 暦年 | 世界 | 北米 | 日本 | その他 |
|---|---|---|---|---|
| 2023年 | 18.1 | 13.0 | 0.9 | 4.1 |
| 2024年 | 19.9 | 15.3 | 1.0 | 3.6 |
| 2025年 | 17.6 | 14.0 | 0.6 | 3.0 |
2024年から2025年の世界需要は約11.6%減。2023年との比較でも2025年は約2.8%少ない。2024年だけを起点にしても、2025年だけを見ても、市場の勢いを読み違えやすい。3年間では「いったん増加した後、前年と2023年を下回った」という推移になる。
地域構成比も原資料の公表値を採用する。
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| 暦年 | 北米 | 日本 | その他 |
|---|---|---|---|
| 2023年 | 72.2% | 5.0% | 22.8% |
| 2024年 | 76.9% | 5.0% | 18.1% |
| 2025年 | 79.5% | 3.3% | 17.2% |
2025年は全地域で需要台数が前年を下回る一方、北米の構成比は上昇した。北米の減少が相対的に小さかったためであり、「シェアが上がったので北米需要が増えた」とは読めない。
台数は丸められている。例えば2023年の地域合計は18.0万台だが、世界の公表値は18.1万台である。構成比を丸めた台数から逆算し直したり、合計に合わせて地域の数字を書き換えたりせず、元の数値を残した。2024年版・PDF28頁、2025年版・PDF26頁、2026年版・PDF24頁
4.国内と北米は、同じ一台でも中身が違う
ヤマハの説明では、日本は5人乗り、北米は2人乗りが主流である。座席数、使い方、走路・誘導の設備、車両の仕様が違えば、一台あたりの金額も変わる。同じ台数の増減を、そのまま同じ金額の市場変化と見なすことはできない。
国内需要は2024年の約1万台から2025年の約6千台へ減少している。ただし万台単位の小数1桁の概数であり、精緻な前年比の議論には限界がある。これがゴルフ場数や年間ラウンド数の同率減少を示すものでもない。
理由は、新車の年間需要と、すでに動いている車両の蓄積が違うからだ。更新の時期を後ろにずらせば、新車需要は減っても、その車両はコースで動き続ける可能性がある。これは設備市場の読み方としての説明であり、2025年の減少原因を更新延期だけで特定できたわけではない。
また、メーカーの低速モビリティにはゴルフ場以外の敷地内移動などもある。世界の公道走行可能な低速車、工場用車両、個人向け車両をすべて含む市場予測と、本表のゴルフカー需要を同じ系列としてつなげない。ヤマハの市場・用途説明
5.ヤマハの出荷は5年でどう動いたか
ゴルフカーの出荷は、確認できた5年を並べると次のとおり。暦年の台数で、販売金額ではない。
| 年 | ゴルフカー出荷台数 |
|---|---|
| 2021年 | 6.2万台 |
| 2022年 | 4.4万台 |
| 2023年 | 5.3万台 |
| 2024年 | 5.5万台 |
| 2025年 | 4.4万台 |
2022年に落ち、2023・24年に戻し、2025年に再び減った。公表された概数では2025年は2024年比約20%減、2021年比約29%減である。この推移からも、長期の成長率を単年度だけで決めることはできない。
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| 年 | 合計 | 北米 | 日本 | その他 |
|---|---|---|---|---|
| 2023年 | 5.3万台 | 3.8万台 | 0.8万台 | 0.7万台 |
| 2024年 | 5.5万台 | 4.2万台 | 0.9万台 | 0.4万台 |
| 2025年 | 4.4万台 | 3.4万台 | 0.5万台 | 0.4万台 |
同社の出荷も北米が大きい。こちらも2025年の地域合計は4.3万台となり、公表合計4.4万台と丸め差がある。世界需要と同社出荷は集計段階・時点が同じとは限らず、丸めもあるため、割り算だけで精密なメーカー市場シェアは作らない。2025年版・PDF26頁、2026年版・PDF24頁
6.ヤマハのゴルフカー売上――737億円から553億円へ
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| 年 | ゴルフカー売上 | 前年比 |
|---|---|---|
| 2023年 | 692億円 | 本表では算出しない |
| 2024年 | 737億円 | 約6.5%増 |
| 2025年 | 553億円 | 約25.0%減 |
2025年は2023年より約20.1%少ない。出荷が約20%減ったのに対し、売上の減少率は約25%だった。価格、製品構成、為替などの影響を切り分けられる開示は、この表にはない。したがって差を全部「値下げ」とは断定しない。
この売上はゴルフカー事業の規模を示すために使えるが、出荷台数で割った値を、ゴルフ場が買うカートの店頭価格としては使えない。地域、車種、付随する事業の範囲が違うほか、メーカーの売上と顧客向けの販売条件も同一ではないからだ。
2023年は2025年版、2024年は2025年版と2026年版、2025年は2026年版の表示を確認した。古いPDFの不可視オブジェクトから抽出された数値は採用せず、表示されている図表を根拠としている。2025年版・PDF26頁、2026年版・PDF24頁
7.2026年上期の補足――LSMの売上と事業方針
2026年の途中経過として、第2四半期決算説明資料のLSM売上を確認した。LSMは低速モビリティを扱う区分で、ゴルフカー等を含む。
| 期間 | LSM売上 |
|---|---|
| 2025年1~6月 | 295億円 |
| 2026年1~6月 | 291億円 |
同じ上期同士では約1.4%減。通年のゴルフカー売上とは期間も区分も違うため、2025年553億円に2026年291億円を並べて「ほぼ半減」とすることや、単純に2倍して2026年通年の実績とすることはできない。決算説明資料・20頁
同資料の事業再構築では、ゴルフカーは商品力とサービスの向上による収益基盤強化の対象になっている。ROVの生産体制に関する記述を、ゴルフカー製造終了と読み替えない。同資料・8頁
また、ヤマハ株式会社のゴルフ用品事業終了と、ヤマハ発動機のゴルフカー事業は別である。発動機は2026年4月16日、別法人である用品事業側の終了は、ゴルフカーの製造・販売・サービスに影響せず、継続すると案内している。ブランド一覧から事業を追う際に混同しやすい点である。公式のお知らせ
8.主な企業・ブランドと、数字が見える範囲
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| 企業・事業 | 主なブランド・製品 | 役割 | 今回確認できた開示 |
|---|---|---|---|
| ヤマハ発動機 | Yamaha Golf Car、G30Es・G31EPs | 車両、電池パック、販売金融・サービス | ゴルフカー売上・出荷、主にゴルフカーのリース債権など |
| エナジーシステムサービス ジャパン | CARRYECO、キャリーECO5-Z、フォーサム、キャリー | 車両販売、設備・誘導線工事、保守 | 事業内容。カート単独の年次売上は今回未確認 |
| Textron Specialized Vehicles | E-Z-GO、Cushmanなど | ゴルフカー・その他特殊車両 | TSV全体の売上。ゴルフ専用は未確認 |
| Club Car/Platinum Equity | Club Car、Garia | ゴルフ・業務・個人向け車両、関連サービス | 保有先、取得時期、過去の企業取得額。現在の連続年売上は未確認 |
| Trojan Battery | Trojan | ゴルフ・業務用車両向け電池 | 種類、保守方法。ゴルフ専用の年次売上は未確認 |
| 三井住友ファイナンス&リース | ヤマハのレンタル案内に記載 | 同案内での審査 | ゴルフ専用の取扱額は今回未確認 |
これを全メーカー・全販売会社の網羅一覧とはしない。地域販売店、他の電池会社、独立整備会社などが存在する余地はあるが、今回の表では一次資料で役割を確認した対象を載せた。
各社の規模を比較するときは、「会社全体」「ゴルフを含む事業」「ゴルフカー単独」「金融残高」のどれかを先に確認する。数字が非開示だから小さい、開示部門が広いからゴルフでも大きい、という判断はできない。ヤマハ、ESSジャパン、Textron、Club Car、Trojan、国内レンタル
9.E-Z-GOを持つTextron――減収には事業売却も含まれる
Textronの年次報告書から、Industrial部門の内訳であるTextron Specialized Vehicles(TSV)を取り出した。Industrial全体には自動車向け樹脂製品などのKautexもあるので、それをゴルフの数字にはしない。
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| 年 | TSV売上 | 円の参考換算 |
|---|---|---|
| 2023年 | 18.87億米ドル | 約2,962億円 |
| 2024年 | 16.24億米ドル | 約2,549億円 |
| 2025年 | 13.30億米ドル | 約2,088億円 |
2024年は前年比約13.9%減、2025年は約18.1%減だった。ただし、2025年の2.94億米ドルの減収のうち、1.95億米ドルは同年4月のパワースポーツ事業売却によるものと説明されている。残りの全額をゴルフの減収と特定することもできない。
同社はゴルフ関連製品の販売数量・構成の低下も挙げているため、ゴルフに減速要因があったことは読み取れる。一方で、事業売却を含むTSV全体の18.1%減を、カート市場の減少率として引用するのは誤りになる。
TSVにはゴルフカーのほか、業務用、芝管理、空港関連などの車両も含まれる。円換算した2,088億円をヤマハのゴルフカー553億円と直接比較して、シェアや順位を出すことはできない。Textronの金融事業も主に航空機等を対象としており、その全体をゴルフカーのリースに割り当てない。年次報告書・PDF37頁/冊子25頁
10.Club Car――現在の売上と、過去の買収価格を分ける
Platinum Equityの保有企業ページでは、Club Carは2021年6月取得の企業として掲載され、ゴルフ、業務、個人向け車両、関連部品・サービスを扱う。Gariaを2022年6月に取得したことも記載されている。保有企業ページ
2021年4月の取得合意発表には、Ingersoll Randからの取得額が約17億米ドルとある。今回の共通為替なら約2,668億円に相当するが、これは当時の企業取得取引の金額である。2025年の売上でも、ゴルフカーの年間市場金額でもない。取得合意の公式発表
今回採用した公開一次資料だけでは、同社の現在の売上を2023~25年の系列として確定できなかった。主要ブランドであることと、現在の規模を精密に数値比較できることは別なので、欠損を推定値で埋めない。
11.国内の設備・施工――カート道と電源も事業になる
エナジーシステムサービス ジャパンは、カート販売に加えて、ゴルフ場のカート道路の設計・工事、電源設備の設置、電磁誘導線の埋設工事、アフターサービスを明記している。
電磁誘導は車両だけで完結せず、コース側の設備と組み合わせる。充電も、車両仕様と台数に合う設備が必要になる。導入時に生まれる支出には、こうした設備を使える状態にする仕事が含まれる。
同社の用途はゴルフ場以外にも、工場施設、敷地内移動、荷物運搬、リゾート施設の送迎などに広がる。したがって同社全体の売上が仮に分かっても、それをゴルフ市場と同一視できない。今回は、役割と製品・サービスを確認し、ゴルフ専用の工事売上や受注額は未確認としている。公式事業紹介
ここからの分析として、車両更新時には本体価格以外の負担が発生し得る。既存の走路、誘導方式、電源をどこまで使えるかで、導入条件は変わる。ただし、メーカー変更の追加費用や工事単価を一律の金額で示せる資料は今回見つからなかった。
12.電池の種類――鉛とリチウムだけの二択にしない
Trojanのゴルフ・業務用車両向け製品には、液式鉛、AGM系の鉛、リチウムイオンがある。鉛という言葉だけで、全部が同じ保守作業を要すると考えない方がよい。
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| 種類 | 管理上の主な違い | 費用を見るときの確認点 |
|---|---|---|
| 液式鉛電池 | 水位確認や適切な補水管理などがある | 電池代に加え、点検・補水の作業負担 |
| AGMなど密閉式鉛電池 | 液式と構造が異なり、補水の扱いも違う | 対応する充電条件、製品ごとの交換条件 |
| リチウムイオン電池 | パック、電池管理システム、対応充電器などで運用 | 購入・交換代、保証条件、対応車両・充電器 |
この表は製品区分と管理項目の整理で、特定方式が必ず最安という評価ではない。各社の「長寿命」「高性能」という宣伝文句をそのまま費用比較に変換しない。使う条件と、保証が何を対象にしているかの確認が必要になる。Trojanの製品区分、保守情報
13.ヤマハの新電池パック――容量・重量・開発範囲
ヤマハ技報No.60は、2025年6月の5人乗り電動モデル向けに開発した電池パックを説明している。正極材はリン酸鉄リチウムを用いるLFPである。
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| 項目 | 4kWhモデル | 6kWhモデル |
|---|---|---|
| 電池容量 | 4.1kWh | 6.1kWh |
| 定格電圧 | 51.2V | 51.2V |
| 公称容量 | 80Ah | 120Ah |
| 電池パックの質量 | 約63kg | 約79kg |
kWhは蓄えるエネルギー量の単位であり、モーターの出力を示すkWとは違う。また63kg・79kgはパックの重量で、カート全体の重量ではない。単純に容量を比較して「何ホール走れる」とは算出しない。コースの勾配、距離、乗車・積載、運用条件が関わる。
技報で確認できる内製化の範囲は、パックの開発・製造である。電池セルのメーカーとの協業についても説明されており、「ヤマハがセルからすべて自社生産している」とは解釈しない。
現行のG30Es・G31EPsの製品ページも確認した。容量の選択肢は確認できるが、顧客向けの交換電池価格や車両価格を、この技報の仕様から算出することはできない。技報・PDF1~2頁/冊子48~49頁、製品情報
14.「約50%のコスト低減」は、何が半分なのか
同技報では、6kWhモデルについて、従来搭載していた電池との比較でパックのコストを約50%下げたと説明している。比較対象と対象製品を限ったメーカー側の成果である。
| 読み取れること | この資料からは読み取れないこと |
|---|---|
| 特定の電池パックのコスト低減があった | 車両本体の販売価格が半額になった |
| パック開発・製造の見直しが進んでいる | すべてのリチウム電池が鉛の半額になった |
| 6kWhモデルの比較として約50%が示される | ゴルフ場が払う交換電池代が一律半額になった |
| 供給側のコスト改善余地を示す | 顧客向け交換価格、工賃、回収費を含む総額 |
コスト低減は、価格を下げる余地やメーカーの収益性に影響し得る。ただし販売価格にどの程度反映されたか、実際の利益がどれだけ増えたかの開示は、ここにはない。メーカーの技術成果と、導入者が受け取る金銭的効果を切り分けて読む必要がある。技報・PDF2頁
15.電池の寿命と充電設備――一律の交換年数は置かない
電池の寿命は、容量だけで決まらない。Trojanの保守情報でも、温度、放電の深さ、充電、保守などの条件が関係する。保証が長い製品があることと、その期間まで全使用条件で容量や走行が保証されることも同じではない。
今回のレポートでは「鉛は必ず何年、リチウムは必ず何年」という統一年数を置かなかった。製品別の保証条件、想定する使用頻度、必要な走行を満たせる状態、交換工賃などを見ないと、費用を計算できないためである。Trojanの保守情報
充電設備もモデルに合わせて確認する。ヤマハのFAQには単相AC200Vなどの案内があるが、全メーカー・全モデルが同じ電源という意味ではない。既存の充電器を流用できるかも、電池方式を替えただけで自動的に決まるものではない。ヤマハFAQ
費用項目としては、電池代だけでなく、充電器、電源工事、点検に使う時間、交換作業、使えない時間、回収・処理の扱いがある。このうち電気代を精密に出すには、使用日数、充電量、充電損失、契約電力などの入力が必要になる。容量kWhに電気料金を掛けただけの「毎日必ず発生する実費」は作っていない。
16.国内レンタルの条件――60・72・84か月の違い
ヤマハの公式案内は「レンタルシステム」という名称を使う。そこで確認できる標準的な期間は以下である。
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| プラン | 利用期間 | 支払期間 | 読み方 |
|---|---|---|---|
| 5年 | 60か月 | 60か月 | 標準プラン |
| 6年 | 72か月 | 72か月 | 長期化により月額を抑える案内 |
| 7年 | 84か月 | 84か月 | さらに長い利用期間 |
| 6か月据置 | 72か月 | 据置後の66か月 | 8月~2月の導入など条件あり |
据置期間は支払開始の延期である。6年利用して66か月払うという条件から、6か月が無料と推定しない。また、長期化による月額低下だけでは、期間全体の支払総額が下がるかは分からない。車両の仕様・台数・期間をそろえた見積もりが必要になる。
同案内には動産総合保険料が含まれ、三井住友ファイナンス&リースによる審査が記載されている。保険は対象の事故や免責条件があり、自然の消耗などの対象外もある。車両損害の保険と、対人・対物の補償、日常点検、故障修理、電池の通常劣化を一括して「全部込み」としない。
公開月額は確認できなかった。したがって本レポートに書かれた期間から、市場相場となる1台月額を作ることはしていない。なお、商品の「レンタル」という呼び名と、財務諸表上のファイナンス・リース/オペレーティング・リースは分類の観点が異なる。国内案内の契約を、次章の連結金融数値と一対一対応させない。レンタルシステム
17.貸し手の財務①――主にゴルフカーの債権450.50億円
ヤマハ発動機の2025年12月期有価証券報告書は、ファイナンス・リース債権について「主に、ゴルフカーのリース契約に係る債権」で構成されると説明している。貸し手として長期契約から回収する金額を残高で見ることができる。
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| 項目 | 2024年 | 2025年 | 性質 |
|---|---|---|---|
| ファイナンス・リース債権 | 431.44億円 | 450.50億円 | 各年末の残高、引当金控除前 |
| 同債権の損失評価引当金 | 10.41億円 | 5.83億円 | 回収損失に備えた評価額 |
| 正味リース投資未回収額に対する金融収益 | 24.05億円 | 24.58億円 | 各年1~12月の収益 |
原表の単位は百万円。43,144百万円を431.44億円、45,050百万円を450.50億円に換算した。債権は前年末比約4.4%増である。ただし、これだけで契約件数や台数の増加、利幅の改善を確定できない。契約期間、回収、新規契約、為替等の複数要因が残高に関わり得る。
450.50億円は、2025年に新しく貸した額ではなく、過去の契約から残っている部分を含む期末残高である。年間売上553億円と足せば業界売上になる、という数字ではない。また「主に」なので、全額を純粋なゴルフカー専用残高と断定しない。
同じ注記には消費者・ディーラー向けの販売金融も載っているが、それらは二輪や船外機等を含むグループの金融活動であり、全体をカートの資金調達としない。4月・8月の訂正報告書も確認し、今回採用したリース注記の変更ではないことを確認した。有価証券報告書・143頁、4月の訂正、8月の訂正
18.貸し手の財務②――ゴルフカー等の年間賃貸収益68.53億円
同じ報告書には、グループが有形固定資産として保有する「ゴルフカー等」を、オペレーティング・リースで賃貸する説明がある。
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| 項目 | 2024年 | 2025年 |
|---|---|---|
| オペレーティング・リース収益 | 65.08億円 | 68.53億円 |
こちらは残高ではなく、1年間の収益である。前年比約5.3%増となった。先の債権450.50億円とは契約の会計分類も指標の性質も異なる。「ゴルフカー等」の「等」に含むものを分離できないため、ゴルフ専用の賃貸収益と確定はしない。
報告書154頁の上部には、グループが借りる側のリース負債もある。これは貸し手の収入とは逆の立場の数字であり、カートを貸した売上として使わない。また将来受け取る契約リース料の期日別残高も、当期の売上とは別の指標である。有価証券報告書・154頁
販売が落ちた2025年にも、主にゴルフカーの債権残高と、ゴルフカー等の賃貸収益は増えた。ここから言えるのは、販売時点と継続回収の時点では変動が一致しないということまでである。カートの販売不振が将来の金融収益にどれだけ影響するかは、契約満了や新規契約の詳細がないため確定できない。
19.購入と借入・賃貸の比較――同じ利用期間にそろえる
借りれば必ず安い、購入すれば必ず得、と結論を固定する資料は今回得られていない。比較には、同じ車種・台数・期間と、維持する状態をそろえる必要がある。
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| 費用・条件 | 購入側で確かめるもの | リース・レンタル側で確かめるもの |
|---|---|---|
| 初期支出 | 車両・オプション、設置・工事 | 初回支払、設備・工事の別途負担 |
| 定期支払 | 購入資金を借りる場合の返済・利息 | 月額、期間、据置・再契約条件 |
| 電池・消耗品 | 交換回数、電池代、作業費 | 月額に含まれるか、通常劣化の扱い |
| 点検・修理 | 定期点検、保証範囲、代替車 | 保守契約、故障・停止時の対応 |
| 保険 | 保険料と補償範囲 | 料金に含む範囲、免責・対象外 |
| 利用終了 | 売却額、撤去・処分費用 | 返却時の精算、延長、買取の可否 |
期間全体の支出は、購入なら「本体・設備・資金・電気・保守・交換・終了時費用から売却回収額を引く」、賃貸なら「期間内の支払総額と、料金に含まれない費用を足す」という考え方になる。資金の支払時期まで比較するなら追加の計算条件が要るが、ここでは公開価格が不足しているため現在価値の優劣まで作っていない。
金額の大きさをつかむ計算例として、50台、月額差1台1,000円、72か月なら差は360万円になる。これは実際の見積もりや市場相場ではない。月額の小さな差が、台数と期間で大きくなることだけを示している。
20.保証、保守、中古――車両が売れた後の収入機会
ヤマハの延長保証は、通常保証1年に対し、条件を満たすと2年を追加する仕組みで、合計3年である。対象車種や、有償の定期点検・部品交換などの条件がある。これを「追加で3年、合計4年」とはしない。
保証は、不具合が起きたときの取り扱いを決める制度であり、その車両や電池が使える年数の上限・下限を示すものではない。また保証が付いても、消耗品や点検が無条件で無料になるとは限らない。延長保証の公式説明
満了後の車両について、ヤマハは統合報告書2025の事業機会として、リース満了ゴルフカーを活用する中古車販売を挙げる。これは中古・再利用が収益機会になることを示すが、その記載だけで現在の中古販売額や利益額を確定はできない。なお同報告書は2025年発行で、2024年実績を扱う。統合報告書・PDF45頁
業界構造としては、新車を一度売って終えるよりも、点検、部品、電池、返却後の整備・販売まで接点が続く。貸し手にとっても、満了時の状態や再利用価値は契約条件を考える要素になる。ただし、全契約で同じ主体が残価リスクを負うとは限らない。
21.何が分かり、何がまだ分からないか
| 確認項目 | 今回の到達点 |
|---|---|
| 市場の台数推移 | ヤマハ調べの世界・地域別3年を確認 |
| メーカーの長期推移 | ヤマハ出荷5年、ゴルフカー売上3年、TSV売上3年 |
| 2026年の途中経過 | ヤマハLSMの上期同士を比較。通年ゴルフカー系列とは分ける |
| 貸し手側の規模 | 主にゴルフカーの債権2年と金融収益、ゴルフカー等の賃貸収益2年 |
| 電池の進展 | 特定パックの容量・重量と、メーカー公表の約50%コスト低減 |
| 国内の契約条件 | 5~7年、据置プラン、保険・審査・保証条件 |
| 未確定の大きな項目 | 世界の車両売上総額、交換電池・工事・保守・リースのゴルフ専用市場総額 |
| 未確定の実務項目 | 車両・交換電池の実売価格、統一的な寿命・交換周期、国内の残存台数、メーカー別の精密シェア |
今後の観察項目は、新車需要が2025年の落ち込みから戻るか、電池のコスト改善が顧客価格や維持費に反映されるか、保守・中古・販売金融の収益がどう動くか、である。これらは今後確認したい論点であり、すでに回復・拡大が決まったという予測ではない。
今回の範囲では、世界需要と公表メーカーの販売に減速が見えた一方、長期利用に伴う金融・賃貸の数字は異なる動きをした。カート関連の事業を見るには、新車、使い続けるための支出、契約満了後の価値という時間の流れを追う必要がある。
22.調査方法、検算、保存データ
一次資料は、企業の年次報告書、有価証券報告書・訂正、決算説明資料、ファクトブック、技報、公式商品・契約案内、日本銀行の為替資料を中心にした。有料の市場調査推計や、出所を遡れないまとめサイトの市場規模は採用していない。
図表の数字はテキスト抽出だけでは誤る場合がある。ヤマハの一部図表は一般的なPDF抽出で文字が崩れ、Textronにも数字の文字化けがあったため、保存原本をPDFiumで描画して目視確認した。非表示の旧図表オブジェクトや、読めなかった抽出値を本文に入れていない。
主な計算は次のとおり。元データの単位と公表精度を保ち、記事では読みやすく丸めた。
| 計算 | 入力と結果 |
|---|---|
| 2025年の世界需要増減 | 17.6÷19.9−1=約11.6%減 |
| 2025年のヤマハ売上増減 | 553÷737−1=約25.0%減 |
| 2025年末リース債権増減 | 45,050÷43,144−1=約4.4%増 |
| 2025年の賃貸収益増減 | 6,853÷6,508−1=約5.3%増 |
| 米ドルから億円 | 百万米ドル×156.96÷100 |
| 台数・期間の計算例 | 50台×1,000円×72か月=360万円 |
保存用の付録は、世界需要・出荷、企業財務、企業・ブランド対応、電池・契約条件、計算式、出典の6種類。各出典に公式URLと原本のハッシュを付け、図表の確認画像も調査フォルダーに保持した。公開プレビューでは原本PDF自体を再配布せず、公式の参照先へリンクする。
訂正資料も出典一覧に含む。4月訂正は子会社の資本金、8月訂正は地理的情報の修正で、今回採用したリース注記を置き換えるものではなかった。到達できなかった公式ページの取得記録は調査ログとして保持し、読めた原本の代わりには採用していない。
23.主要出典と、数値を使った場所
| 出典 | 主な採用範囲 |
|---|---|
| ヤマハ ファクトブック2024 | PDF28頁:2023年の世界・地域別需要 |
| 同2025 | PDF26頁:2021~24年出荷、2023・24年売上、2024年需要 |
| 同2026 | PDF24頁:2025年需要・出荷・売上 |
| 2025年12月期有価証券報告書 | 143・154頁:貸し手の残高・収益 |
| 4月訂正・8月訂正 | 訂正対象を照合 |
| 2026年上期決算資料 | 8・20頁:事業方針、LSM売上 |
| ヤマハ技報No.60 | PDF1~2頁:電池パックの開発・仕様・コスト |
| G30Es・G31EPs・FAQ | 現行製品、価格・電源案内 |
| レンタル・延長保証 | 利用期間、支払・保険・点検条件 |
| 統合報告書2025 | PDF45頁:満了車両の中古販売という機会 |
| ゴルフカー事業継続のお知らせ | 用品事業終了との区別 |
| Textron Annual Report 2025 | PDF37頁:TSV売上と減収要因 |
| Club Car保有企業情報・取得合意 | 所有・事業範囲、過去の取得額 |
| ESSジャパン カート事業 | 国内の車両、走路・電源・誘導線工事、保守 |
| Trojan製品・保守 | 電池方式と管理条件 |
| 日本銀行 10月23日為替 | 外貨の共通参考換算 |
元数値と集計データ
世界需要・出荷、企業財務、企業・ブランド、電池・契約、計算式、出典の6件を保存できます。ゴルフ専用と他用途込み、年間の売上と期末残高、メーカーのコストと顧客向け価格を区別しています。原本PDFの再配布は行わず、公式の参照元へつなぎます。
出典・参考資料
- ヤマハ発動機 ファクトブック2026
世界需要・地域別需要とゴルフカー出荷・売上。PDF24頁/冊子22頁。2025年実績。
- ヤマハ発動機 ファクトブック2025
PDF26頁/冊子24頁。2023・24年売上、2021~24年出荷。
- ヤマハ発動機 ファクトブック2024
PDF28頁/冊子26頁。2023年の世界・地域別需要。不可視の旧チャート数値は採用しない。
- ヤマハ発動機 第91期有価証券報告書
2024・25年の比較財務。PDF143頁:主にゴルフカーのリース債権・金融収益。154頁:ゴルフカー等の賃貸収益。
- 同報告書の2026年4月8日訂正
ブラジル子会社の資本金の訂正を確認。今回採用のリース注記への変更ではない。
- 同報告書の2026年8月5日訂正
地理的情報の訂正を確認。今回採用の143・154頁のリース数値への変更ではない。
- ヤマハ発動機 2026年12月期 第2四半期決算説明会資料
PDF20頁:LSM売上は2025年上期295億円、2026年上期291億円。ゴルフカー単独との同一視はしない。8頁:OLV事業再構築。
- ヤマハ発動機 技報No.60「ゴルフカー向け内製リチウムイオン電池パック開発」
2026年1月発行。PDF2頁/冊子49頁:4.1・6.1kWh、重量、従来電池比の6kWhパックの約50%コスト低減。製品販売価格ではない。
- ヤマハ発動機 G30Es・G31EPs 製品情報
5人乗り電動モデル、電池容量の選択肢。公開定価として使える金額は確認できず。
- ヤマハ発動機 ゴルフカー レンタルシステム
5・6・7年、6か月据置は72か月利用/66回払い。保険込み、審査会社、個別見積。
- ヤマハ発動機 ゴルフカー よくある質問
車両価格は問い合わせ。電源などはモデル別確認。異なる車種の公道条件を一般化しない。
- ヤマハ発動機 ゴルフカー 延長保証
通常1年に条件付き2年追加、計3年。有償点検・部品交換等の条件。電池寿命の資料ではない。
- ヤマハ発動機 統合報告書2025(英文)
PDF45頁:リース満了ゴルフカーの中古販売を事業機会として記載。2024年実績を扱う資料。
- ゴルフカー事業は今後も継続(2026年4月16日)
ヤマハ株式会社の用品事業終了の発表と、ヤマハ発動機のゴルフカー事業を区別。
- Textron Annual Report 2025
PDF37頁/冊子25頁:TSVの2023~25年売上、パワースポーツ事業売却の影響。E-Z-GO単独の数字ではない。
- Platinum Equity:Club Car
2021年6月取得、現在の保有先と事業範囲。今回の資料では現在の連続年売上を確認できず。
- Platinum Equity:Club Car取得合意(2021年4月12日)
約17億ドルの取得取引。過去の企業取得額であり、年間売上ではない。
- エナジーシステムサービス ジャパン:カート部
CARRYECO等、車両販売・走路設計施工・電源工事・誘導線工事・アフターサービス。
- Trojan Battery:Golf Carts and Utility Vehicles
液式鉛、AGM系、リチウムイオン等の製品区分。メーカーの製品情報として採用。
- Trojan Battery:Battery Maintenance
液式と密閉式の管理の違い、温度・放電深度・充電等で寿命が変わること。
- 日本銀行 外国為替市況 2026年10月23日
17時のドル円156.95~156.97円、仲値156.96円で全ての年を参考換算。