キネマティックシークエンスと 骨盤ピーク角速度は、 どう 区別する?
セグメント協調・3D解析
まず答え
キネマティックシークエンスは、骨盤・胸郭・腕・クラブなど複数部位の回転速度が「どの順番・タイミングでピークを迎えるか」を見る指標です。骨盤ピーク角速度は、その中の骨盤だけについて記録された最大回転速度です。速さの大きさと、複数部位の時間関係は別の情報です。
詳しい解説
キネマティックシークエンスと骨盤ピーク角速度は、どちらも3Dスイング解析で使われますが、見ているものが違います。
骨盤ピーク角速度は、スイング中に骨盤の回転速度が最も高くなった値です。たとえば「最大で何度/秒まで回ったか」という、骨盤という1つの身体部位の速度の大きさを表します。Callawayらは低ハンデ群と高ハンデ群の骨盤ピーク回転速度を比較し、技能群で平均値に差があることを報告しています。ただし、これは骨盤単独の最大値です。
一方、キネマティックシークエンスは、骨盤、胸郭、腕・手、クラブなど複数の部位について、角速度のピークがいつ現れたかを並べ、その時間的な順序や間隔を見ます。Tinmarkらはエリートゴルファー45人を3次元計測し、部分ショットからフルショットまで、近位側から遠位側へピーク時刻が移る時間関係を報告しました。つまりシークエンスは「誰が一番速いか」ではなく、「各部位の速度ピークがどうつながったか」を見る情報です。
そのため、骨盤ピーク角速度が高いだけでは、キネマティックシークエンスが適切かどうかは決まりません。骨盤の最大速度が同じでも、胸郭や腕、クラブのピーク時刻が違えばシークエンスは変わります。逆に、ピーク順序が似ていても、骨盤の最大回転速度そのものは別の値になり得ます。
さらに、キネマティックシークエンスの判定は計測方法にも影響されます。Marsanらは、どの角速度成分を使うかによって同じゴルファーでも識別されるシークエンスが変わり得ると報告しました。別機器や別研究の順序を単純比較しない方が安全です。
実用上は、①骨盤ピーク角速度=骨盤単独の最大速度、②キネマティックシークエンス=複数部位のピーク時刻・順序、と分けて読みます。速度を上げたいから骨盤ピークだけを追う、あるいは理想順序へ無理に合わせるのではなく、クラブヘッド速度、打点、球筋、本人内の再現性と一緒に評価します。