ゴルフの 「胸郭切り返し」とは?
切り返し・胸郭
詳しい解説
胸郭切り返しは、胸郭がバックスイング方向の回転からダウンスイング方向の回転へ移る瞬間・短い移行区間を指します。3次元動作解析では、胸郭セグメントの回旋角度と角速度を時間軸で追い、回旋角速度がバックスイング方向から減速してゼロ付近を通り、その後ダウンスイング方向へ変わる時点を一つの定義として使えます。
ここでいう胸郭は、個々の胸椎の動きを直接測るものとは限りません。モーションキャプチャでは胸部に付けたマーカーなどから一つの胸郭セグメントを作り、その向きを計算することが一般的です。また、実験室の固定座標に対する胸郭回旋を見る方法と、骨盤に対する相対回旋を見る方法では数値の意味が違います。
Horanらの2010年研究では、熟練ゴルファーの男性19人・女性19人を対象に、ダウンスイング中の胸郭と骨盤の3次元運動を連続的に計測しました。胸郭と骨盤はそれぞれ独立したセグメントとして軸回旋・前後傾・側屈を持ち、両者の動きは時間の中で変化します。したがって、胸郭の切り返しを骨盤やクラブの一つのイベントへそのまま置き換えることはできません。
Hanらの2019年研究では、ハンデ3以下の熟練男性74人について、骨盤、胸郭、肩、上肢、クラブなどがバックスイングからダウンスイングへ移る時点を比較しました。切り返しの順序は完全または部分的な近位から遠位への並びを示す傾向がありましたが、スイングタイプによる違いもありました。つまり『胸だけを何秒遅らせる』ような一律の正解値が示されたわけではありません。
実用上は、①胸郭が方向転換した時刻、②骨盤の方向転換との時間差、③胸郭の角速度がその後どう立ち上がるか、④クラブ速度・打点・球筋がどう変わるかを同じ条件で確認します。胸郭切り返しは運動順序を記述する指標であり、単独で早い・遅いを良否判定するものではありません。