ゴルフの科学

ダブルボギーは、どの一打から始まるのか

国内外の公表成績と文献から、ミスと同一ホールのスコア、林・ティー・寄せ・パットの選択を比べる。

公開 2026年10月26日 · 照合 2026年10月26日 · 研究本編

林の中のゴルフボールと、大きな木の横に広がるフェアウェイを描いたAI生成画像
公表された成績と本人の公開記録を使った文献研究です。林からの比較は、過去のPGAデータからの推定打数に、停止位置と確率を仮定した計算。GDが新たに測定した実戦成績ではありません。
研究本編の目次
  1. 概要
  2. ティーショットのあと、何割がダボ以上になるのか
  3. ダボのホールで多いミスは、また別の数字になる
  4. フェアウェイに置いたあとにも、ダボはある
  5. 日本の一般アマにも、実際のラウンドからの集計がある
  6. 国内の記録を、同じホールの罰打とスコアで読む
  7. 国内の学術資料にも、プレーデータは載っていた
  8. プロと競技アマの2025年成績
  9. 一打ずつ数えると、どこでダボになるのかが分かる
  10. 林から攻めるか、戻すか。まず出した先の打数を比べる
  11. 木を抜けた先がラフなら、必要な成功率は変わる
  12. OBがあるなら、失敗を一つにまとめない
  13. 横へ出すショットにも失敗はある
  14. 計算式と、分かっていない入力
  15. 平均打数と、ダボになる確率も別にする
  16. 攻める・刻むを比べた実戦研究は、どこまで参考になるか
  17. 自分のホールを調べるなら、何を残すか
  18. ティーショット:飛距離の便益とOB打ち直しを比べる
  19. 寄せ:近くに寄る確率と、乗らない場合の打数を比べる
  20. パット:入球率の増分が、長い返しを補うか
  21. 調査方法と数値の区分
  22. 計算・集計の付録
  23. 出典と対象範囲

概要

ハンディキャップ指数が7.5~12.5のゴルファーでは、ティーショットに罰打が付いたホールの69%がダボ以上になっていた。寄せを複数回打ったホールでは66%、3パットしたホールでは40%だった。

ArccosのMichael Hutchinsonによる分析を、Lou Stagnerが2025年10月10日に公開している。五つのミスについて、そのホールが何打になったかをハンディ別に集計した表だ。

ティーショットのあと、何割がダボ以上になるのか

【公表集計】そのミスがあったホールのうち、ダボ以上になった割合(%)

指数帯2未満2~7.57.5~12.512.5~2020以上
ティーショットの罰打4759697988
ティー後に脱出等が必要2232425571
3パット1828405673
複数回の寄せ4757667585
アプローチの罰打5668768491

原表のティーショットの罰打にはOB以外も含まれる。林などで脱出が必要になる球も、普通にグリーンを狙えるラフと一緒にしていない。なお、集計人数・期間・男女別・国別、細かい判定方法は記事に記載されていない。指数帯の境界表記も原表に従った。

そのミスをしたホールの、何割がダボ以上か

公表集計 · 海外アマ
ティーショットの罰打
69%
ティー後に脱出等が必要
42%
3パット
40%
複数回の寄せ
66%
アプローチの罰打
76%

「ダボのうち、そのミスが何%か」とは分母が違います。同じホールに複数のミスが重なるため、割合は足せません。人数・期間・国別内訳は非公表。出典

ダボのホールで多いミスは、また別の数字になる

【公表集計】ダボ以上のホールのうち、そのミスがあった割合(%)

指数帯2未満2~7.57.5~12.512.5~2020以上
ティーショットの罰打2925201713
ティー後に脱出等が必要1923263033
3パット2426303541
複数回の寄せ2223232222
アプローチの罰打1614121110

同じホールで林から出し、寄せ直し、3パットすることもある。五つの割合は重なっているため、足して原因を配分することはできない。例えば指数7.5~12.5の列の合計は111%になる。

フェアウェイに置いたあとにも、ダボはある

別のArccos集計は、パー4のティーショットがフェアウェイにある場合について、残り距離ごとのダボ以上の率を出している。150ヤードでは指数0が2.0%、指数20が21.3%だった。指数20の集団は、75ヤードを残した場合でも8.7%、200ヤードでは40.3%になっている。

【公表集計】パー4・ティーショット後のフェアウェイからダボ以上になる割合(%)

残りyd指数0指数5指数10指数15指数20
750.41.83.16.38.7
1000.91.94.28.711.4
1251.42.65.910.916.7
1502.04.49.915.621.3
1753.57.713.520.029.8
2004.010.519.029.040.3

この表は2024年3月29日公開。集計の人数や対象期間は示されていない。距離の違うホールを比べた観察値であり、同じ人が飛距離を50ヤード伸ばした効果を測ったものではない。

ドライバーの結果を「フェアウェイか、ラフか」だけで記録すると、罰打、横へ出すしかない球、セカンドの残り距離が抜け落ちる。フェアウェイに打てても、次が長ければホールアウトまでに打数を使う。この二つの原表は、その違いを確かめる材料になる。

日本の一般アマにも、実際のラウンドからの集計がある

GDOは2019年の公開資料で、約120万ラウンドを基に80台・90台・100台のスタッツを比較している。

【サービス公表集計】80台90台100台
OB回数/ラウンド0.71.31.9
ペナルティ回数/ラウンド0.40.60.8
バンカー回数/ラウンド1.61.81.9
パット数/ラウンド33.435.237.0
フェアウェイキープ率(%)51.145.241.2
パーオン率(%)34.321.112.9
ボギーオン率(%)60.251.640.8

OB回数とペナルティ回数は原表の別項目のまま扱う。記録方法や当時の入力仕様が十分確認できていないため、合算して罰打数に換算しない。バンカー回数も、脱出に失敗した回数ではない。この資料には各ミスと同じホールの最終スコアを対応させた表はない。

スコア帯別に比べる別の資料として、Shot Scopeが2026年5月12日に公開した表もある。ここではティーのトラブルを、紛失球、ハザードや林、位置を戻すショットが必要になる球と定義している。

【サービス公表集計】18H当たり100台90台80台70台60台
ティーショットのトラブル6.54.93.32.00.9
50yd以内からの複数回の寄せ4.13.22.11.20.9
3パット3.22.31.50.90.5

スコアで分けた集団の平均なので、「トラブルを1.6回減らせば10打縮む」とは計算できない。また、国内アマの表ではない。GDOとShot Scopeの値をつないで、日本人のダボ率を推定する使い方もしない。

国内の記録を、同じホールの罰打とスコアで読む

国内の一般アマについても、ホールの出来事とスコアを結び付けた公開資料を探した。全国・技量別の原表には届かなかったが、個人が継続して残した集計と、スコアカードの個別例は確認できた。以下は自己記録であり、GDが同行して測定したデータではない。

2026年9月7日公開の「メタボのゴルフ」では、一人の31ラウンド、558ホールを分析している。パーオンを逃した375ホールを、OB・ペナルティの有無で分けた集計がある。

【著者公表の個人集計】パーオンを逃したホール

ホール種別全体OB・罰打なしOB・罰打あり
パー381H76H/平均+0.705H/平均未掲載
パー4220H187H/平均+0.8733H/平均+2.97
パー574H59H/平均+0.9515H/平均+2.87

平均は各ホールのパーに対する超過打数。OBとその他の罰打は原記事の区分どおり一つにまとめた。

パー4では、罰打がある群とない群で平均2.10打違う。ただし、これは「OBをやめれば必ず2.10打よくなる」という実験結果ではない。難しいホールや、その後のミスも含めた差だ。

同じ人のパー3では、非パーオン81ホールの内訳もある。バーディ1、パー27、ボギー43、ダボ5、トリ以上5。ダボ以上は10/81=12.3%だった。原記事の件数からの再計算であり、日本のアマ全体の率には広げない。元の全558行は公開されていないため、こちらで全ショットを再照合できた集計でもない。

もう一つ、93で回った人が公開した18ホールのカードでは、次の違いを確認できる。

【公開カードと本人の記述を照合した個別例】

ホールパー記録された出来事パットスコア
OUT44ティーショットで1ペナ15
OUT64カードに3パットの記録36
OUT95第3打のSW後に1ペナ、5打目でオン16
IN173第2打がバンカー、1回で脱出36

1ペナでも、OUT4とOUT9はボギーで上がっている。OUT6は罰打なしの3パットでダボ。IN17はバンカーから1回で出ているが、その前のショットと3パットを合わせてトリになった。「バンカーに入った」「3パットした」という回数だけでは、この違いが分からない。

このカードは18ホール合計93、36パットで、各ホールの足し算も一致した。ただしIN16はカードが3パット、本文の振り返りが2パットで食い違う。IN16の正確なショット経過は採用せず、このカードから3パット後のダボ率も算出しなかった。また、本人が記した前進地点からの1ペナ処置を、通常のOBの打ち直しと一緒には扱わない。

別の90のカードは、本文の「ダボ3つ、トリ1つ」と原画像が一致しなかった。カードのパーと打数を読み直すと、ダボ2つ、トリ2つ。OBと記された6番・9番・17番は、それぞれ+3、+3、+2だった。99のカードでも、ティーショットOBの7番・14番、バンカーの脱出失敗が記された16番で計+13になっていた。3枚・54ホールの転記は別表に残した。いずれも本人が公開した一例で、スコア90・93・99をそのまま普段の技量とみなすことはできない。

国内の学術資料にも、プレーデータは載っていた

塩治・川村・鈴木の2014年の研究は、コース上の位置からの期待打数をQ学習で求め、実際の一人分のプレーデータと比較している。18ホールの掲載スコアは126。大札幌CCの396yd・パー4では、3Wで残り225yd、もう一度3Wで48yd、SWで12yd、最後にPTで入れて4打という経過が載っている。

ショット経過と4打というスコアは、著者が掲載したプレーデータ。位置ごとの期待打数やSGはシミュレーションによる値だ。プレーヤーの属性と取得方法は詳述されていない。罰打の簡略化や、全技量で共通のパット基準もあるため、このモデルの値を国内アマの実測平均としては使わない。それでも、合計126だけを見るのと、各ショットを読んで4打のホールを見るのとでは、分かることが違う。

プロと競技アマの2025年成績

PGA TOURの2025年は、コース別の公式表の掲載範囲で集計した。シーズン2025年・全ラウンドの表は50行ある。このうち特殊形式の会場1行はパー以下の主要列が0で、通常のスコア分布として使えない。残る49行の六つのスコア区分を足すと、30万3,786ホールになった。ダボ4,889件と、それより悪いスコア690件を合わせ、ダボ以上は5,579件、掲載範囲の1.836%だった。同じコースが別大会で使われた行はそのまま残した。49会場・49大会という意味ではない。

JLPGAは2025年最終大会後の公式データを取得した。掲載243名の各スコア区分を足したホール数がラウンド数×18と一致し、ダボ以上の順位表とも個別に照合した。243名の18万1,980ホールではダボ2,257件、トリ以上に相当する「その他」264件。合計2,521件で1.385%。ダボ以上のランキング対象92名だけなら、14万8,617ホール中1,837件、1.236%になる。

米LPGAは2025年を指定し、Bogey AvoidanceとBogey Averageの両方に掲載された154名を照合した。前者はボギー以上のホール数、後者はボギーの件数を示す。154名では前者2万7,046件、後者2万4,073件。差の2,973件がダボ以上になる。これは公式2表の定義に基づく再計算だ。

米LPGAの総ホール数には画面上の表示不備があるため、分母を別に確かめた。両表で一致した計9,210ラウンドを18H換算した16万5,780ホールを分母にすると1.793%。この換算は154名全員について、公表されたボギー以上率を四捨五入の範囲内で再現する。選手も、個別の公式ページのダボ22件+トリ以上2件=24件が、223−199=24件と一致した。154名は両表で照合できた範囲であり、米ツアー全選手ではない。

日本アマの男女はJGAのホール別スコア区分をラウンドごとに足した。男子は7,380ホール中、ダボ229件、トリ以上45件。女子は7,452ホール中、ダボ176件、トリ以上23件だった。男子第2ラウンドは2,556ホールで、出場人数を一律に18倍して2,592とする計算は採用していない。

【公表件数から再集計/対象範囲はそれぞれ異なる】

集計対象分母ホールダボ以上割合
PGA2025・通常形式の掲載49行303,7865,5791.836%
JLPGA2025・年末掲載243名181,9802,5211.385%
JLPGA2025・ランキング対象92名148,6171,8371.236%
米LPGA2025・2表共通154名165,780換算2,9731.793%
日本アマ2025・男子7,3802743.713%
日本女子アマ20257,4521992.670%

コース、競技形式、出場者、選別が違う。これを男女やツアーの技量の順位表にはしない。各集計の中に、罰打や3パットと同じホールの最終スコアを結び付ける列があるわけでもない。大叩きの頻度を知る表と、何をしたあとに大叩きになったかを知る表を分けて使う。

一打ずつ数えると、どこでダボになるのかが分かる

以下は実測例ではなく、パー4で打数を数えるための仮例。罰打以外の救済や特殊なローカルルールは加えていない。

  1. 1打目FW → 2打目オン → 3パット = 5打、ボギー
  2. 1打目FW → 2打目を外す → 3打目オン → 3パット = 6打、ダボ
  3. 1打目林 → 2打目は外へ出す → 3打目オン → 2パット = 5打、ボギー
  4. 1打目林 → 2打目は外へ出す → 3打目を外す → 4打目オン → 2パット = 6打、ダボ
  5. 1打目OB → 1罰打 → 3打目をティーから打ち直す → 4打目オン → 2パット = 6打、ダボ

1.と②は同じ3パットでも最後のスコアが違う。③では林から出すだけの一打があってもボギーで済む。④と⑤は同じ6打だが、練習や狙いどころを見直す箇所は違う。

「出すだけ」を選んだ一打が悪かったのかは、横へ出した事実だけでは判断できない。出した先の距離とライ、その後のショットまで見なければ、最初のティーショットと脱出後のミスを一緒に数えてしまう。

出す一打があっても、ダボとは限らない

打数を数える仮例 · パー4

パーオン後の3パット

  1. 1ティー
  2. 2オン
  3. 3パット
  4. 4パット
  5. 5パット

5打 ボギー

横へ出して、次で乗せる

  1. 1林へ
  2. 2出す
  3. 3オン
  4. 4パット
  5. 5パット

5打 ボギー

出したあと、もう一度外す

  1. 1林へ
  2. 2出す
  3. 3外す
  4. 4オン
  5. 5パット
  6. 6パット

6打 ダボ

特定の選手の実測ではなく、罰打のない打順の説明です。3パットも、乗るまでに何打使ったかで最終スコアが変わります。

林から攻めるか、戻すか。まず出した先の打数を比べる

前へ打てば有利になるのは、次のショットが楽になるからだ。木を抜けてもラフやバンカーに止まるなら、短くなった距離の分だけ得をするとは限らない。

Broadie2012のAppendix Bには、PGA TOURの2003~2010年のショットに基づく、距離・ライ別の残り期待打数が載っている。生の平均をそのまま並べた表ではなく、論文で推定した基準値だ。

【原論文の推定基準】その位置からホールアウトまで

残りydFWラフバンカー脱出を要する位置
802.752.963.243.84
1002.803.023.233.80
1402.913.153.223.80
1602.983.233.283.81
1803.083.313.403.82

以下はこの表を使ったGDの条件付き計算。実戦で同じ球から二つの打ち方を試した結果ではなく、国内アマの成績予測でもない。林の形、木を抜ける確率、打ったあとの位置は、この例の条件として置く。

残り160ydの林から、二つの選択肢を考える。

A 横へ出す。1打で残り160ydのFWに置けると仮定する。  ここから先は、出す1打+FWからの2.98打=3.98打。

B 前へ打つ。成功すれば残り80ydのFW。木に当たるなどして失敗すれば、残り160ydで再び脱出が必要になると仮定する。まずOBはない場合を計算する。  成功時は1+2.75=3.75打。失敗時は1+3.81=4.81打。

【GDの条件付き計算】Bの成功率を変えたときの残り期待打数

前へ出せる確率Bの打数Aとの差
60%4.174+0.194
70%4.068+0.088
80%3.962−0.018
90%3.856−0.124

Aは3.98打。プラスはAより多く打ち、マイナスは少なく済むことを示す。

成功すると0.23打得をする一方、失敗すると0.83打余計にかかる。この条件で釣り合う成功率は約78%。80%でも差は0.018打にとどまる。80%という成功率自体を実測したわけではない。基準値が小数第2位までの推定値であることも考えれば、この差を根拠に「攻める方が明確に得」とまでは言えない。

林からの一打。その先まで数える

GDの条件付き計算

スタートは残り160ydの林。前へ出せれば残り80yd、普通の失敗なら残り160ydで再び脱出が必要になる、と置きます。

残り160ヤードの林から、横のフェアウェイか、前の80ヤード地点を選ぶ模式図。距離と停止位置は仮定。今の球:160yd・林A 横へ出す:FW 160ydB 前へ:残り80yd模式図(縮尺なし)距離・経路は仮定縮尺のない模式図。今の球は160ヤードの林。Aは横のフェアウェイ、Bは前の80ヤード地点。停止位置は仮定。模式図・縮尺なしB 80ydA FW 160yd160yd・林
横へ出すショットの失敗も加える
A 横へ出す3.980打

出す一打と、その後を含む

B 前へ狙う3.962打

Aとの差 −0.018打

差は0.02打未満。この小さな差から、実戦の優劣は判断できません。

この条件で釣り合う成功率は 78.3%。

3.5打4.0打4.5打5.0打0%25%50%75%100%3.5打4.0打4.5打5.0打0%25%50%75%100%

A 横へ出すB 前へ狙う横軸:前へ出せる確率

分岐の打数と、計算の条件
成功 80%
1打+80ydのフェアウェイから=3.75打
普通の失敗 20%
1打+160ydの脱出位置から=4.81打
OB 0%
打った1打+1罰打+元位置からAの計画=5.980打

成功・OB・普通の失敗は重ならず、合計100%。OB後はAに切り替えます。Aに出す一打を二重に足していません。

基準の打数はBroadie2012のPGA2003~2010推定値。停止位置・成功率・OB率はGDが置いた仮定で、あなたや国内アマの実績ではありません。平均打数の比較であり、ダボの確率も示しません。小さな差を実戦の優劣と断定できる精度ではありません。出典と適用範囲

木を抜けた先がラフなら、必要な成功率は変わる

同じ80ydでも、FWではなくラフなら成功時の打数は1+2.96=3.96打。横へ出す3.98打との差は0.02打しかない。同じ失敗条件なら、釣り合う成功率は約98%になる。80ydのバンカーなら1+3.24=4.24打なので、この条件では100%そこへ運べてもAより多く打つ。

「80yd前進する」と「80ydのFWに置く」は別の結果だ。木の隙間だけを見て選ぶと、抜けた先のライを落としてしまう。

OBがあるなら、失敗を一つにまとめない

BにOBの可能性を加える。OBになったら、その1打と1罰打を加え、元の位置からAへ切り替えるとする。OB分岐の打数は2+3.98=5.98打。打ち直し後の横へ出す一打はAの3.98打に含まれているので、さらに1打足さない。

【GDの条件付き計算】Aが確実に160ydのFWへ出せる場合

BでOBになる確率Aと釣り合うFW80ydへの成功率成立しうる最大成功率
0%約78%100%
5%約84%95%
10%約89%90%
15%約95%85% → この条件ではAに届かない

成功、OB、それ以外の失敗は、重ならない三つの結果として合計100%になる。OB15%のときに成功95%を要求しても、残り85%しかない。計算上の境目が100%未満でも、選べる確率の範囲に入っているかを確認する必要がある。

池やアンプレヤブルは、罰打数と救済後の位置を別に入れる。OBと同じ5.98打をそのまま当てない。コース独自の前進地点からのプレーも、救済条件が違えば別計算になる。

横へ出すショットにも失敗はある

Aが必ず成功するという仮定も緩めてみる。90%は160ydのFW、10%は元と同じ160ydの脱出位置に残ると置くと、Aは4.063打になる。BにOBがない場合、前へ出す方と釣り合う成功率は約70%に下がる。安全策が実際にどれくらい安全かによっても比較は変わる。

出す先の距離も同様だ。Bの成功先80yd・FW、通常の失敗先160yd・脱出位置を固定し、Aで出せるFWだけを変えると、100ydへ出せるならBに必要な成功率は約95%、140ydなら約85%、180ydまで戻らなければならないなら約69%。どこでも通用する「何割なら攻める」という値にはならない。

計算式と、分かっていない入力

前への成功確率をp、OB確率をqとし、残り1−p−qを通常の失敗とする。上の基準例では、

E(攻める)=3.75p+5.98q+4.81(1−p−q) E(横へ出す)=3.98

0≦p、0≦q、p+q≦1を満たす必要がある。一般には、成功時の打数Cs、通常失敗時Co、罰打分岐Cq、横へ出す打数Esを使い、

pの境目={Co+q(Cq−Co)−Es}÷(Co−Cs)

となる。ただしCo>Csの場合の式であり、計算値が0~1−qに入るかも調べる。

原典から得たのは距離・ライ別の推定打数。特定の木の隙間を本人が何%通せるか、どこへ止まるかは別のデータである。見た目だけでpを高く置けば、式が正しくても選択はよくならない。枝の高さ、足場、打ち出し方向、反対側のトラブル、抜けた球の転がりまでを含めた成功率が必要になる。

平均打数と、ダボになる確率も別にする

期待打数だけから、ダボの率は計算できない。例えばパー4の第1打後に、残り打数が必ず4打なら、ホールのスコアは5でダボ率0%。残り3打と5打が半分ずつなら、平均は同じ4打でも、ホールのスコアは4か6になりダボ率50%。これは違いを示すための数学上の仮例だ。

したがって上の表が比べているのは平均打数の損得であり、ダボ回避率ではない。ダボ以上を減らす目的で比べるには、各分岐から何打で上がったかという分布も必要になる。

攻める・刻むを比べた実戦研究は、どこまで参考になるか

McFallとRotthoffの著者公開稿は、PGA TOURの2004~2013年のパー5第2打を分析している。Table1では、狙うと分類された群が平均4.35打(129,542件)、刻む群が4.79打(116,356件)。選手が状況を見て選んだ観察値で、しかも球の終点から選択を分類している。林からの同条件比較には使えない。表ごとに件数の違いがあるため、各表のNもそのまま残した。

Broadie・Ko2009には、アマの実ショットで校正したシミュレーションがある。典型コースから木をなくすと、100前後の群の計算スコアは100.3から97.0、80前後の群は80.2から78.4になった。木をなくしてもOBは残り、OB率はむしろ上がっている。これはコースの条件を変えた計算で、林から横へ出す指導の効果を測ったものではない。

今回確認した公開原典には、同じ出発位置・同じ技量のプレーヤーを分け、林から攻める群と横へ出す群の最終スコアを比較した実戦試験はなかった。代わりに、原典の推定打数に条件を明示して、どんな入力なら損得が逆転するかまでを計算した。成功率の実測が手に入れば、同じ式のpとqを入れ替えて検証できる。

自分のホールを調べるなら、何を残すか

ティーショットはFW率に加え、罰打、脱出を要したか、セカンドの距離とライを残す。グリーン周りは最初の一打で乗ったか、寄せを何回打ったか、バンカーから一回で出たか。パットは一打目の距離と回数。最後に同じ行へホールのグロススコアを置く。

練習の優先順位を付けるなら、ミスの回数と、その後に使った打数を両方見る。OBが多い人、罰打はないのに寄せ直しが多い人、ボギーオン後に3パットする人では、直すところが違う。これはGDの記録・分析案であり、この方法で何打改善するかを確認した試験ではない。

ティーショット:飛距離の便益とOB打ち直しを比べる

既存ティーショット研究の資料と計算M04を本稿へ接続した。Arccosの全HC公表集計は、Driverが距離中央値226yd・FW率45.5%、3Wが214yd・46.4%。FW率0.9ポイント差をOB率の差へ置き換えない。球数、左右内訳、OB処理などの制約は原研究のまま保持する。

【GD条件付き計算】OB以外の次打状態を同等とし、OBでなければ長いクラブが追加距離Δydぶん有利と置く。距離便益BにはR&A/USGA R56のGame Golf回帰係数0.×Δydを参考使用する。集団回帰の係数を個人の因果効果とは扱わない。

OBになったら1打と1罰打を使い、独立に同じOB率で打ち直す。通常の一打は両クラブに共通。OBに伴う追加打数は2q/(1−q)になる。

長いクラブ−短いクラブ=2q長/(1−q長)−2q短/(1−q短)−B。

20ydの追加距離、短いクラブOB2%なら、長いクラブの分岐点は8.29%。長いクラブOB10%では平均0.041打多い計算になる。池、林、長いクラブだけラフが深い場合、前進ティー等はこの式に含めない。自分の選択には当該ホールの分布と再開位置が必要である。

寄せ:近くに寄る確率と、乗らない場合の打数を比べる

公表実績ではGolfmetrics Am2(原著スコア帯84–97、2005–2007)の20–60ydからの一打グリーンヒット率はFW81%、ラフ72%だった。寄せワン率でも、特定の狭いピンを狙う成功率でもない。

【GD条件付き計算】一つの仮想場面に、異なる資料の歴史的PGA基準を配置した。寄せ後の5ft(1.524m)は残り1.24パット、20ft(6.096m)は1.87パットを2011年草稿から取り、乗らなかった後の20ydラフは2011年4月稿Table9の残り2.59打を使用。一般アマの打数として移植した実測値ではない。

広い場所を狙う球は90%で20ftに乗り、10%で20ydラフに残ると仮定する。ピン寄りを狙う球は、成功なら5ft、失敗なら20ydラフ。比較する一打を含め、広い球は1+0.9×1.87+0.1×2.59=2.942打。ピン寄りの成功60%なら2.780打。釣り合う成功率は48.0%になる。

さらに、ピン寄りの失敗はすべて池で1罰打、救済後は同じ20ydラフと置くストレス例では、失敗時の打数が1打増える。必要成功率は70.1%、成功60%なら3.180打となり、広い球との損得が逆転する。失敗が全て池という強い仮定であり、実戦の池率ではない。広い球の成功率も変更できる。

寄せワン率だけからこの入力は得られない。狙い方ごとに、指定した距離・位置へ止まった割合、乗らない球の場所、罰打、そこからの打数を記録する。

パット:入球率の増分が、長い返しを補うか

Shot Scope公表のHC10では0–3ft成功率96%、3–6ft65%。距離帯の集計であり、0.9mぴったりや1.8mぴったりの返しの条件付き成功率ではない。この二つの率をそのまま下の式へ代入していない。

【GD条件付き計算】2011年草稿の歴史的PGA基準を使い、狙いと強さの二方針を比べる。方針Aは最初の入球率10%、全てのミスが3ftに止まると置く。方針Bは入球率20%、全てのミスが6ftに止まると置く。初回の入球率と停止位置はGDの仮定であり、測った強さの効果ではない。3ftの残りパット数1.05、6ft1.34を使うと、Aは1+0.9×1.05=1.945打、Bは1+0.8×1.34=2.072打になる。

方針Bが釣り合う入球率は1−0.9×1.05/1.34=29.48%。最初の入球率を10%から20%へ上げても、この返し条件では平均打数が増える。入球率が40%ならBは1.804打となってAを下回る。常に弱い方がよいという計算ではない。

実戦で外れた球は一定距離にそろわない。本来は距離・上り下り・線ごとの残りパット数の平均をミス確率で重み付けする。強さで狙い線も変わるので、単に強く打つよう指示した実験結果には読み替えない。

調査方法と数値の区分

本研究の対象はグロスのダブルボギー以上。ハンディキャップ算定用のネットダブルボギー上限とは区別した。対象期間は原典ごとに異なり、2026年10月26日までに取得・照合した公開資料を使用した。

本文では、サービスが公表した観察集計、公式成績からの再集計、本人が公開した記録、論文の推定値、GDの条件付き計算を分けた。今回GDが新たに選手へ計測器を付けて集めた実測はない。表の件数、率の分母、18H換算、罰打をどこに足したかはCSVと計算記録へ残した。

大規模な国内一般アマの「技量帯×ミス×同一ホールの最終スコア」は取得できなかった。国内の継続記録と個別カードで確認できた範囲までを掲載し、海外の率を日本の実測値として代入していない。国内プロの同一ホールの詳細履歴、林から二つの打ち方を比べた実戦効果も未確認。ここを埋める仮の成功率や改善打数は作らなかった。

国内個人記録は一人の複数ラウンドを含み、ホール同士も独立とは限らない。国別・男女別の代表性はなく、抜粋カードをまとめて確率や信頼区間を出す使い方はしない。各人のWHS指数も確認できない。公開された選手・個人の名前を新たな分析用IDとしては使わず、ケース番号に置き換えた。

計算・集計の付録

原著PDF、個人のカード画像、全ショット原本は再配布していません。国内一般アマの全国・技量別対応表と、林から狙う・戻すを同条件で比べた実戦試験は未取得です。

出典と対象範囲

照合日:2026年10月26日。公表集計・公式成績の再集計・個人の自己記録・論文の推定・GDの計算を区別。元の人数、対象年、採録条件が異なる資料は合算していません。

  1. ミスと同一ホールのダボ以上率:Arccos/Michael Hutchinson、Lou Stagner公開 →

    2025-10-10公開。五つの事象×指数5帯。N・期間・男女・国別と詳細な判定方法は非公表。事象は重複する。

  2. パー4・FWからの残距離とダボ以上率:Lou Stagner/Arccos →

    2024-03-29公開。残距離6帯×指数0/5/10/15/20。横断集計で、飛距離を伸ばす介入効果ではない。

  3. GDO/ABeam:日本のスコア帯別スタッツ →

    2019年公開、約120万ラウンド。OB・別枠のペナルティ・バンカー・パットなど。ミスと同一ホールスコアの対応表はない。

  4. Shot Scope 6:スコア帯別の実戦記録 →

    2026-05-12公開。100台~60台のスコア帯でありHC帯ではない。国内アマの集計ではない。

  5. 国内の個人集計:31ラウンド・558ホール →

    2026-09-07公開、一人の自己記録。パーオンの有無・罰打・最終スコア。原ログは未取得で独立検証なし。全国代表値ではない。

  6. 国内の個別カード:93・36パット →

    本人の公開カードと記述を照合。IN16のパット数に不一致があり、その経過と3パット条件付き率は不採用。前進地点からの1ペナ処置を通常のOBと混同しない。

  7. 国内の個別カード:90のラウンド →

    原カードではダボ2・トリ2。記事本文のダボ3・トリ1を訂正して採録。自己記録、選手指数未確認。

  8. 国内の個別カード:99のラウンド →

    2022年8月のプレーを本人が公開。OBとバンカー失敗が記された3ホールで計+13。コンペのHDCP26.4をWHS指数とは扱わない。

  9. 塩治・川村・鈴木(2014)Q学習を用いたゴルフデータ分析に関する研究 →

    4.2、表2・3。一人の掲載プレーデータとモデル期待打数・SGを区別。人物属性と取得方法は詳述されていない。

  10. PGA TOUR:2025 Toughest Courses →

    2025・Round Allの50掲載行中、特殊形式1行を除いた49行。対象303,786H、ダボ以上5,579件。全出場者の全ホールを保証する母集団ではない。

  11. JLPGA:2025年ダブルボギー以上率 →

    年末公式スコア区分243名と独立ランキングを照合。243名と規定対象92名を別集計。

  12. 米LPGA:2025 Scoring →

    Bogey AvoidanceとBogey Averageの共通154名。2表の件数差2,973件。分母165,780Hは9,210ラウンドの18H換算。

  13. JGA:2025日本アマ・ホール別成績 →

    各ラウンドの実掲載件数を合計。7,380H・ダボ以上274。

  14. JGA:2025日本女子アマ・ホール別成績 →

    7,452H・ダボ以上199。男子とはコースと条件が違う。

  15. Broadie(2012)Assessing Golfer Performance on the PGA TOUR →

    Appendix B、Table B.1。2003~2010年・800万超ショットからの推定基準。特定の林や国内アマの実測平均ではない。

  16. Broadie・Ko(2009)Distance and Direction on Golf Scores →

    実ショットで校正したシミュレーション。木をなくしたコースの結果を、横へ出す練習の効果としない。

  17. McFall・Rotthoff:Risk-Taking Dynamics in Tournaments →

    PGA2004~2013年、パー5第2打の観察比較。終点で選択を分類、無作為割付なし。表ごとのN不一致を保持。林からの同条件比較にはしない。

  18. R&A ゴルフ規則18:OB・紛失球 →

    通常のストロークと距離の救済は1罰打と元の位置からのプレー。モデル内の打ち直しを重複して数えない。

  19. Arccos:Driver vs 3 Wood →

    全HCの距離中央値とFW率。各セルの球数・期間、OBの処理等は十分には公開されていない。同一条件のクラブ交換実験ではない。

  20. R&A/USGA Distance Insights:The Value of Distance →

    既存ティー研究S04。Game Golf 2013–2016(主に2014)16万1476打。pp.33–36、距離係数0.007打/yd/ホールを計算の参考に使用。個人が飛距離を伸ばした因果効果や、特定ホールの便益ではない。

  21. Broadie(2008):Golfmetrics・20〜60ydから一打で乗る率 →

    既存寄せ研究GD-AS-0531/0533、Table2。2005–2007、Am2は原著スコア帯84–97。FW81%、ラフ72%。球数はセル別非公表。狙い方を無作為に変えた比較ではない。

  22. Broadie(2011年4月稿):20ydラフからの残り打数 →

    既存寄せ研究GD-AS-0477、Table9。2003–2010年PGAの推定基準、20ydラフ2.59打。生の平均や現在の一般アマの実測値ではない。

  23. Broadie(2011草稿):距離別の残りパット数 →

    既存パター研究historicalExpected。歴史的PGA基準、3ft1.05打、5ft1.24打、6ft1.34打、10ft1.61打、20ft1.87打。2025年や一般アマの実測平均ではない。

  24. Shot Scope:Data with Danny Maude・技量別パット成功率 →

    既存パター研究SHOTSCOPE_DANNY、p.14。HC10の0–3ft96%、3–6ft65%。距離帯全体の集計で、特定の返しの条件付き確率ではない。収集期間・男女国別・セルNは非公表。