公表資料調査 · 2026年10月28日公開
ゴルフ場の芝管理費と機械・資材
コースの裏側で動くお金を、公表会社の規模と複数年の統計から読む。
GOLF DNA編集部 · 調査 2026年10月24日
TURF MANAGEMENT & SUPPLY
芝の管理・資材を担う
会社の3年を追う
48.58 億円
東洋グリーン · 2025年12月期の全社売上
2023年12月期比 +16.4%
グリーンがきれいに刈りそろえられ、フェアウェイには適度な厚みがあり、雨が降ったあともプレーできる。そんなコースを支えているのは、ゴルフ場の運営会社だけではない。芝を管理する人、専用の機械を作る会社、薬剤や肥料、芝や種を供給する会社、散水設備を整える会社がいる。
この仕事は、ゴルファーがクラブを買う市場とは違う動きをする。来場者が増えなくても、芝や設備を維持する仕事はあり、機械の更新や管理の省力化にお金が動く。
公表されている会社と統計から、どのくらいの規模があり、数年でどう変わったのかを追ってみる。 調査基準日は2026年10月24日。外貨には直近営業日の為替による日本円の概算を添えた。
01
芝を支える商売は、管理・機械・資材につながっている
まず、何にお金を払うのかを整理したい。コース管理は、芝刈りだけを指すわけではない。芝の状態を見て、刈り込み、施肥、病害虫への対応、散水などを組み合わせ、季節やコースの条件に合わせて整えていく仕事だ。
| 分野 | ゴルフ場が買うもの・依頼する仕事 |
|---|---|
| 管理 | 日々のコース管理、専門人材、管理の助言 |
| 機械 | 芝刈り機、芝の更新作業に使う機械、作業車、部品と整備 |
| 資材 | 芝・種子、肥料、薬剤、砂、土壌を整える資材 |
| 設備・工事 | 散水・排水設備、芝の張り替え、コースの改修 |
たとえば東洋グリーンは、資材の販売に加えて、芝生管理や工事も手がける。東急グリーンシステムも、コース管理だけでなく設計や改修、資材調達などを支援している。「管理会社」「資材会社」と、きれいに一つずつ分かれている世界ではない。東洋グリーンの事業内容、東急グリーンシステムのコース管理
02
グリーンは、同じ面積ならフェアウェイの約8倍かかる
コースのどこに、特に手間と費用がかかるのか。面積をそろえて比較すると、グリーンは維持費が突出して高い場所だ。
R&Aが公開する2020年作成の調査報告には、米国37コースをもとにした部位別の維持管理費が載っている。グリーンは同じ面積のフェアウェイの約8.0倍、ラフの約38.9倍だった。
| 場所 | 同じ1,000m²の維持費(円概算) |
|---|---|
| グリーン | 約265.6万円 |
| バンカー | 約157.1万円 |
| フェアウェイ | 約33.4万円 |
| ティー | 約30.6万円 |
| ラフ | 約6.8万円 |
出典:R&A公開の管理費調査・PDF7頁表2。原表は米ドル/エーカー。1エーカー=約4,046.86m²、1米ドル=156.96円で換算。過去の米国の維持費比較であり、現在の日本の見積額ではない。標本の調査年度は表に明記されていない。
日本にも手間の集中を示す例がある。関東ゴルフ連盟の2018年講習資料では、刈込作業の労務時間の57%がグリーン、フェアウェイは4%という図が示されている。ただし、これは資料に掲載された事例で、全国平均でも、管理費全体の57%という意味でもない。KGA資料・PDF25頁
なぜ差がつくのか。グリーンは、ボールが転がる面を短く均一に保つため、刈込やローラーがけ、刈り刃の調整・研磨など、頻繁な手入れが要る。ハワイの管理指針では、グリーンは多くのコースで毎日刈り込み、フェアウェイなどは週2〜3回、ラフは週1〜2回という管理例を示している。気候や芝の種類で頻度は変わるが、小さな面積でも人手を繰り返し使う理由が分かる。管理作業の指針
一方、表ではバンカーも高い。面積当たりの費用と、コース全体で払う総額は分けて考えたい。 広いフェアウェイやラフの総額が大きくなる場合もあり、「通常管理費の大半がグリーン」とする日本全体の割合までは確認できなかった。グリーン造成や大規模改修の費用も、この維持費比較に足していない。
03
管理と資材を担う会社は、3年で約16%増収している
その東洋グリーンの売上を見ると、2023年12月期の41.73億円から、2025年12月期の48.58億円へ増えている。2年間の増加率は約16.4%だ。
| 東洋グリーン・12月期 | 全社売上 |
|---|---|
| 2023年 | 41.73億円 |
| 2024年 | 44.49億円 |
| 2025年 | 48.58億円 |
出典:会社概要2026・PDF2頁。ゴルフ場以外の競技場や緑地、資材販売・工事などを含む会社全体の売上。
ゴルフ場の管理だけで48億円売っている、という数字ではない。それでも、普段はプレーヤーの目に入りにくい芝の仕事に、数十億円の規模で事業を営む会社があることは分かる。公表資料では利益や部門別の売上までは確認できず、増収のうち何割が管理の受託増で、何割が資材や工事によるものかは切り分けられない。
東急グリーンシステムは、別の角度から規模が見える。2026年3月末の総資産は20.52億円、公告に記載された当期利益は約7,738万円だった。2024年3月期の約4,091万円、2025年3月期の約7,723万円からの推移になる。ただし、こちらも造園などを含む全社の数字だ。売上やコース管理部門の利益とは分けて読む必要がある。同社の3年分の決算公告
04
国内には約157億円、海外には約7,080億円のメーカーがある
芝を刈る機械にも、ゴルフならではの仕事がある。短く整えるグリーンと、広いフェアウェイ、傾斜したラフでは、必要な機械や使い方が変わる。芝を整える機械は、家庭用の芝刈り機だけを思い浮かべると規模をつかみにくい。
「バロネス」の共栄社は、2025年の公表売上が156.7億円。2023年の英語会社案内には117.2億円とあり、国内の緑地管理機械メーカーとして相応の規模を持つ。ただし、海外販売やゴルフ場以外の緑地向けも含み、集計範囲の説明が限られるため、全国のゴルフ用機械市場そのものとは扱わない。共栄社の日本語会社概要、2023年売上を載せる英語案内
米国のThe Toro Companyはさらに大きい。2025年10月期の全社売上は45.104億米ドル、約7,080億円だった。
| The Toro Company・10月期 | 全社売上(米ドル/日本円概算) |
|---|---|
| 2023年 | 45.532億米ドル/約7,147億円 |
| 2024年 | 45.838億米ドル/約7,195億円 |
| 2025年 | 45.104億米ドル/約7,080億円 |
出典:2024年度発表・PDF8頁、2025年度発表・PDF7頁。全期を1米ドル=156.96円で換算。日本銀行・10月23日17時の相場
Toroはゴルフ場向けの機械や散水設備を持つ一方、建設機械や家庭用製品なども扱う。全社売上が横ばいだからゴルフ向けが伸びていない、とも言えない。会社は2025年度の業務用部門の増収要因に、ゴルフ・グラウンド向け製品などの出荷増を挙げている。全社の大きさと、ゴルフで何が起きているかは、順に分けて見たい。
05
芝そのものは、出荷面積が増えた市場ではない
機械や管理サービスの話から、芝そのものに目を移そう。農林水産省の全国調査では、2024年の芝の出荷額は74.55億円。2021年の訂正後の値と比較すると、金額は約4.3%増えたが、出荷された芝の面積は約8.8%減っている。
表は横にスクロールできます
| 同じ全国調査年で比較 | 芝の出荷面積 | 生産者の出荷額 |
|---|---|---|
| 2021年 | 3,526.31ha | 71.48億円 |
| 2024年 | 3,215.00ha | 74.55億円 |
出典:2021年結果、2021年の訂正、2024年結果。ゴルフ場以外の用途を含む。中間年の主産県調査とは分けて比較。
つまり「売上が増えた」と「たくさんの芝が売れた」は同じではない。売れる芝の種類や価格の変化でも金額は動く。この統計は生産者からの出荷額なので、運送や張り替え工事まで含めた、ゴルフ場が最後に払う代金とも違う。
また、ゴルフ場の芝は毎年全面を買い直すものではない。芝の生産・販売と、既にある芝を育て続ける仕事には、それぞれ需要がある。芝の出荷額だけで、コース管理の市場全体を測ることはできない。
06
芝向け農薬は200億円台。金額と数量は違う動きをする
維持に使う資材では、緑の安全推進協会の出荷統計が参考になる。会員企業が報告した芝向け農薬の金額は、2020農薬年度の195.13億円から、2024年度の217.15億円へ約11.3%増えた。
| 農薬年度 | 芝向け農薬の公表出荷金額 |
|---|---|
| 2020年 | 195.13億円 |
| 2021年 | 202.29億円 |
| 2022年 | 200.97億円 |
| 2023年 | 216.02億円 |
| 2024年 | 217.15億円 |
出典:協会30周年記念誌・PDF34頁。農薬年度は前年10月〜当年9月。ゴルフ以外の芝用途も含む会員報告値で、肥料や資材全体の総額ではない。
同じ長期表では、2020年度から2024年度の数量指標はほぼ横ばいだった。金額の伸びだけを見て「薬剤を使う量が同じ割合で増えた」とは言えない。価格や製品構成も見ていく必要がある。
最新の2025農薬年度は、芝向けの金額が232.66億円と公表されている。ただし、この資料の前年比と、前の長期表から計算した伸び率は一致しない。理由は確認できていないため、最新値は別枠で示し、滑らかにつながる年次グラフにはしなかった。こうした違いも、詳しいレポートに残している。2025年度の公式表
07
ロボットと散水制御が、管理の仕方を変えていく
これからを見るうえで、機械を何台売るかと同じくらい大事なのが、管理の仕事をどう組み直すかだ。共栄社には無人芝刈り機があり、やまびこもロボット芝刈り機や集球機を展開している。集球機は練習用のボールを集める機械で、コース全体の管理を代わりに行うものではない。BARONESSの無人機資料、やまびこ/ECHOの製品案内
無人で刈れる時間が増えれば、人は別の作業に回れる可能性がある。一方、刃の手入れや機械の点検、作業区域の設定、止まったときの対応は残る。購入価格だけでなく、実際に何時間の作業を移せるか、何年使うかまで含めて初めて、導入の得失が見える。
水の管理にも専用の商売がある。Rain Birdは散水ヘッドだけでなく、制御システムやポンプ・フィルターを扱い、Toroも散水設備と管理システムを提供する。機械・設備の販売に、設定や整備、運用支援がつながる分野だ。Rain Birdのゴルフ向け設備、Toroの製品群
暑さも管理を考える背景になる。気象庁によると、日本の夏の平均気温は2023〜2025年に3年連続で最高を記録した。ただし、そのことだけで、特定の薬剤や散水設備の売上増を説明できるわけではない。芝をどう維持するかという課題と、企業がどれだけ売り上げたかは、根拠を確かめながらつなげたい。気象庁の解説
08
この業界は、プレーする人数だけでは読めない
今回、管理受託・機械・資材を合わせた、日本のゴルフ向け市場の総額までは確認できなかった。それでも、見えたことはある。国内には数十億〜百億円台の関連企業があり、芝や薬剤には継続的な供給がある。海外には、ゴルフ以外も含めて数千億円規模で機械や設備を提供する会社がいる。
その動きも一様ではない。管理・資材会社は増収し、芝の出荷面積は減り、農薬では数量と金額が違う動きをする。新しいゴルフ場が増えるかだけでなく、今あるコースを、どのくらいの費用と人手で、どんな状態に保つかがお金の動きを左右する。
ゴルファーから見ると、コースの仕上がりはプレー体験そのものだ。その裏側では、管理する技術、機械の整備、毎年使う資材、長く使う設備が商売としてつながっている。芝・コース管理の市場は、その「維持する仕事」の広がりとして見ると分かりやすい。
出典・参考資料
- 緑の安全推進協会・設立30周年記念誌
PDF33–34頁。会員会社33〜28社の出荷調査。芝の長期表2015〜2024、数量の単位表記にも留意。
- 2025農薬年度 緑地・ゴルフ場向け農薬出荷実績
2024年10月〜2025年9月、報告28社。芝/樹木/緑地の区別、金額・数量・前年比。
- 緑の安全推進協会・情報の窓
2026年1月14日公表。2025年度の集計説明。2024長期表からの比率と不一致あり。
- 緑の安全推進協会・2024年度事業報告
PDF4頁の2024農薬年度出荷表。長期表の2024金額と一致。
- 農林水産省・2024年産花木等生産状況調査結果
2026年8月18日公表、全国調査。芝の作付・出荷面積・出荷額。ゴルフ専用ではない。
- 農林水産省・2021年産結果(e-Statの更新済みPDF)
全国調査。取得時の表は2026年訂正と一致。表題の花木額は今回の採用対象外。
- 2021年産統計の2026年訂正
全国の芝出荷額7,148,390千円、出荷面積352,631aを採用。
- 農林水産省・2022年産結果(e-Stat)
主産県調査。全国調査とは直接接続しない。
- 農林水産省・2023年産結果(e-Statの更新済みPDF)
主産県調査。日本芝・西洋芝は2026年訂正後を採用。
- 2023年産統計の2026年訂正
日本芝5,687,000千円、西洋芝908,800千円への訂正を確認。
- 農林水産省・統計公表一覧と正誤情報
全国調査と主産県調査、最新公表年、訂正資料への導線。
- 農林水産省・調査の概要
調査対象・作付/出荷等の定義。種子や施工・管理費の総市場額ではない。
- 東洋グリーン・会社概要2026
2026年4月1日現在。PDF2頁の2023〜2025年12月期全社売上、事業内容・272名。
- 東洋グリーン・会社概要掲載ページ
日本語版2026PDFの正規参照元。
- 東洋グリーン・英語会社概要
2023〜2025売上の補助照合。古い基準日表記が残るため日本語2026PDFを優先。
- 東急グリーンシステム・コースメンテナンス事業
管理受託、設計改修、資材調達、人材・労務支援。単独売上は未開示。
- 東急グリーンシステム・会社概要
2026年4月1日現在、221名。ゴルフ以外の造園・緑地管理等を含む。
- 東急グリーンシステム・電子公告一覧
貸借対照表の公開入口。売上や営業利益の表ではない。
- 共栄社・日本語会社概要
売上156.7億円(2025年実績)、354名(2026年3月)。単体/連結範囲の明記なし。
- 共栄社・英語会社概要
2023年売上117.2億円。現行日本語と基準年が違う。ゴルフ以外・海外を含む。
- 共栄社・会社情報と製品カテゴリ
BARONESS、自社製品と取扱いSHIBAURA/Rain Bird等を混同しない。
- BARONESS・ULM271無人芝刈機カタログ
無人芝刈機の作業計画や運用の説明。全国普及率・実測投資回収の資料ではない。
- The Toro Company・2024年度決算発表
2023/2024年10月期、PDF8頁。全社とProfessional、GAAP/調整後を区別。web読取、直接取得403。
- The Toro Company・2025年度決算発表
2024/2025年10月期、PDF7頁。全社・Professional部門、減損と調整後。web読取、直接取得403。
- The Toro Company・2026年度第3四半期決算
2026年9月3日公表。2026年7月31日までの3か月/9か月。web読取、直接取得403。
- Toro・ゴルフ場向け製品とサービス
刈込・更新・散水・デジタル管理の製品範囲。マーケティング表示を市場シェア扱いしない。
- 日本銀行・2026年10月23日外国為替市況
17時ドル/円156.95〜156.97、中間値156.96円を本稿の全期換算に固定。
- 理研グリーン・会社概要
緑化薬剤/資材、製紙・産業薬剤、造園。2019年クミアイ化学の完全子会社化。
- 理研グリーン・IR情報
過去の上場期情報。2025年ゴルフ向け売上の系列に読み替えない。
- Rain Bird・ゴルフ向け散水設備
散水ヘッド・制御・ポンプ等。全社/日本/ゴルフ向け売上は今回未確認。
- やまびこ/ECHO・ロボット芝刈機と集球機
製品提供と用途の確認。集球機と芝刈機、練習場とコースを区別。
- やまびこ/ECHO・2026年芝地管理展示会出展
2026年10月6〜7日の出展。TM-850/TM-2050SLOPE等。性能は会社表示。
- 気象庁・気象業務はいま2026 第III章
2025年夏の全国平均気温は3年連続で最高。個社売上への因果や2026年の状況は推定しない。
- John Deere・Golf and Commercial
ゴルフ・スポーツターフ向け機械の事業確認。親会社全体をゴルフ売上としない。
- Textron・Industrial Segment
Jacobsenのターフ管理製品とグループ内の位置づけ。Industrial全体を芝管理売上としない。
- 東急グリーンシステム・2024年3月期貸借対照表
個別の総資産・純資産・当期利益。ゴルフ管理部門の売上/利益ではない。
- 東急グリーンシステム・2025年3月期貸借対照表
個別の総資産・純資産・当期利益。ゴルフ管理部門の売上/利益ではない。
- 東急グリーンシステム・2026年3月期貸借対照表
個別の総資産・純資産・当期利益。ゴルフ管理部門の売上/利益ではない。
- R&A公開・Costs of Golf Course Maintenance – Past, Present and Future
2020年1月作成。PDF7頁表2はUSGA Facility Tool用の米国37コースによる部位別面積単価。標本年度・詳細費目は未記載。8頁の刈込労務の説明も区別。
- KGA・「日本型サスティナビリティ」を探る
2018年6月の講習資料。PDF25頁の刈込労務時間はグリーン57%、FW4%。掲載事例で、総管理費の比率や全国平均ではない。
- KGA・第2回サステナビリティ講習会
2018年6月25日開催、牛木雄一郎氏の講習資料の正規掲載元。調査対象年度とは区別。
- Hawai‘i Golf Course Maintenance・8 Cultural Practices
2019年3月15日の管理指針。部位別の刈込頻度、グリーンの刈り刃調整・研磨、定期更新作業。日本全国の作業回数にはしない。