風とゴルフボールの飛行――実測原表・弾道計算と6場面の比較
木・雲・鳥から風をどう読むか。向かい風、追い風、横風、林、打ち下ろし、持ち球の6場面で、飛距離と着地点から狙いと番手を考える。実測・原著モデル・GDの条件付き計算を区別して掲載。

本研究は、自然風中の実測、送風による転がりの実測、原著者の弾道計算を採録し、不足する風向・風速と狙い・番手の比較をGDの条件付き計算で補った。
原著のモデル10条件、風向・風速95条件、狙いと番手の6場面55候補を別表で保存した。全45球の個票など未取得の値は欠測として残し、実測に置き換えていない。
実測=測った値。原著の計算=研究者・メーカーのモデル。GDの条件付き計算=今回の入力で求めた比較。各図に種別を記載。距離はyd、風速はm/s、短いずれはcm。
まず、飛んでいる球の高さで何が起きているか
ティーで頬に感じる風、グリーンの旗を動かす風、樹冠を揺らす風は、観察している場所も高さも違う。福岡の新宮海岸で行われた国内研究は、この違いを測るため、高さ1.5〜5.5mに風速計を並べた。30m付近までの上空の風は、その測定結果を使った対数則による推定値だ。1、2、3
対数則は、地表近くで遅く、上で速くなる風を表す近似の一つだ。今回も比較用に、10m高で5m/s、地表の凹凸を表す粗度を0.04mと仮定した風を計算した。同じ「5m/s」でも、全高度で一定という条件とは異なる。4
林や建物の風下では渦ができ、日射による地面の温まり方にも上昇流の差が出る。海沿いでは海陸風も加わる。気象庁の説明では、気圧の傾きが小さいと海陸風が明瞭になりやすい。「午後は必ず海から吹く」「谷では必ず何倍になる」とは決められない。16、12
足元が静かなのに樹冠が動いていれば、球が上がった先でも風を受けると考えて候補を比べたい。観察する場所を増やすと、ティーで感じる風だけでは気付けなかった条件が見つかる。
観察する場所・高さの模式図
風を感じる場所と、球が飛ぶ場所を見比べるその高さの流れ。球の高さの風速へ直接換算しない。
林を抜けた先の揺れ、強まる瞬間を見る。
球が落ちる先の方向・強弱を確かめる。
手元の風。林の中では弱まることがある。
縮尺・風速を表す図ではありません。雲、樹冠、旗、足元の風向が揃うとは限りません。
木・雲・鳥は、どこまで手掛かりになるか
木と旗:まず変化と方向を見る
風力階級の陸上記述では、葉がざわつく、葉と小枝が絶えず動く、小さな枝が動く、小さな木が揺れる、といった段階が使われる。下表はNWSの陸上記述を風力番号で気象庁の相当風速範囲に対応させたもの。個々の木や旗を校正した表ではない。13、12
| 観察 | 風力 | 相当風速の範囲 |
|---|---|---|
| 葉がざわつく | 2 | 1.6以上3.4未満m/s |
| 葉と小枝が動き続け、軽い旗が伸びる | 3 | 3.4以上5.5未満m/s |
| 小さい枝が動き、紙やほこりが舞う | 4 | 5.5以上8.0未満m/s |
| 小さな木が揺れ、水面に波頭が出る | 5 | 8.0以上10.8未満m/s |
同じ木の動きが強まったか、旗と樹冠の向きが揃うかは観察できる。ただし樹種、葉の量、枝の硬さ、遮蔽が変わると、同じ風でも見え方が変わる。
2026年の英国の研究は、ナシとオークの動画から3秒突風を推定した。動画処理後の解析は161クリップ。ナシ樹冠の映像と風速計を比較したRMSE(推定値と測定値のずれをまとめた指標)は0.71m/s、決定係数R²は0.65だった。この成績を得るには映像の解析と校正を行っている。オーク近傍には独立した風速計がなく、樹種を替えた検証にも制約がある。9
雲:動いていないから無風、とは読めない
気象研究所の大気追跡風は、雲画像の移動に加えて気圧高度と品質情報を持つ。「どの高さの風を捉えたか」という情報と一緒に使うデータだ。14
山の風下にできるレンズ状の雲は、強い風が流れ込んでも同じ場所に見えることがある。空気が通過しながら雲ができ、消えるからだ。WMOは、こうした雲を山岳波の手掛かりとして説明している。雲が止まって見える日は無風、という判断はここで崩れる。15
雲は上の空気の流れや山の影響を考える材料になる。ただし、目に見える雲の移動をそのまま「7番は右へ何yd」と換算する検証済みの表は得られなかった。球の通る高さに近い木や旗と食い違うときも、雲だけで地上の観察を上書きしない。
鳥:飛ぶ向きだけでは足りない。旋回には情報がある
鳥を使って風を調べた研究は実在する。Weinzierlらはコウノトリ60羽のGPSから24,495回の旋回を解析し、地面から見た移動速度(対地速度)の変化から風を逆算した。1秒間隔の19点を使い、近くを逆向きに旋回する鳥の組と照合している。モデルが出した95%信頼区間の半幅は、全旋回の50%で0.47m/s以内、95%で0.87m/s以内だった。10
日本の米原らの研究も、オオミズナギドリやアホウドリのGPSを使う。飛行方向ごとの速度差を利用する方法で、風下へ飛んだ一瞬や頭の向きだけから風を決めてはいない。11
ゴルファーが鳥の旋回から得られるのは、まず「そこで鳥が上昇流を使っているらしい」「旋回のまとまりが流れている」といった候補だ。種も飛び方も分からない鳥が一羽通っただけで、風向・風速を確定する根拠はない。木や旗と同じく、単独の答えではなく照合する手掛かりとして使う。
実測では何が公開されていたか
国内の自然風中ショット
鳴尾・溝田2009はプロによる45球を扱う。ドライバー、3W、5番、9番などの打出条件と落下地点を測り、風を入れた計算と比較している。Table1に掲載された1球の入力は次の通り。1
| クラブ | 初速 | 上下角 | 左右角 | 軸の傾き | 回転数 | 基準風速 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ドライバー | 66.3m/s | 18.9° | 6.1° | 12.3° | 2293rpm | 5.17m/s |
Fig6の実測着地点は、図の概読で前方約231m(約253yd)、横方向約44m(約48yd)。読み取り幅は各±2m程度とした。横ずれには最初の打出方向と持ち球も含まれる。この48yd全部を風で流された距離にしてはいけない。
全45球の数値表は、今回入手した公開原著にはない。図の重なる点から45球の個票を復元したとはしていない。公開された入力表1行、実測着地点の図、全体比較の回帰係数を保存した。原著の「風なし」は同じ球を実際に無風で打った対照群ではなく、風を省いた計算だ。
2004年の短報・詳報と2009年の比較には、同じ海岸の実験との重複の可能性がある。別々の独立した標本として合計しない。比較図の傾きが約0.948から約0.981に変わったことを「精度98.1%」とも書かない。
転がる球を風に当てた国内実験
Suzukiら2025は、12ftの人工芝上で3m(3.28yd)先に止まるようにした球を、ランプから転がした。各条件20球、芝上5cmの風を2m/sまたは4m/sに合わせている。8
| 風の条件 | 主に調べたずれ | 目標からの平均±SD |
|---|---|---|
| 無風 | 前後 | 0.0±5.5cm |
| 向かい2m/s | 前後 | 手前28.0±9.1cm |
| 向かい4m/s | 前後 | 手前41.8±9.8cm |
| 追い2m/s | 前後 | 奥31.0±8.8cm |
| 追い4m/s | 前後 | 奥65.5±7.2cm |
| 右から2m/s | 左右 | 左17.0±2.5cm |
| 右から4m/s | 左右 | 左35.8±5.7cm |
ランプから転がした球でも、風の向きと強さで止まる場所が変わった。カップイン率や人のストロークへの影響は、この実験の測定対象から外れる。風速の基準も芝上5cmで、ティーや木の高さの値とは揃えていない。
実測
転がる球も、風で止まる場所が変わるSuzukiほか2025。3.28yd(3m)のランプ転がし。12ft人工芝、芝上5cmの風、各条件20球。
| 風 | 平均のずれ | SD |
|---|---|---|
| 向かい2m/s | 手前28.0cm | 9.1cm |
| 向かい4m/s | 手前41.8cm | 9.8cm |
| 追い2m/s | 奥31.0cm | 8.8cm |
| 追い4m/s | 奥65.5cm | 7.2cm |
| 右から2m/s | 左17.0cm | 2.5cm |
| 右から4m/s | 左35.8cm | 5.7cm |
SDは球ごとのばらつき。カップイン率と人のストロークは測っていません。
原著の計算は何ydを示したか
同じ6番の向かい風・追い風
TrackManの原表は、球の初期条件を固定し、全飛行中に同じ風を与えるモデル。PGA側の入力は初速130mph・打出角14.7度・6088rpm、LPGA側は110mph・18.6度・5950rpm。5
| 入力 | 風 | キャリー | 無風との差 | 落下角 |
|---|---|---|---|---|
| 130mph | 無風 | 184yd | 0yd | 48.0° |
| 130mph | 向かい4.47m/s | 166yd | -18yd | 58.1° |
| 130mph | 向かい8.94m/s | 143yd | -41yd | 69.5° |
| 130mph | 追い4.47m/s | 198yd | +14yd | 39.5° |
| 130mph | 追い8.94m/s | 207yd | +23yd | 32.7° |
| 110mph | 無風 | 152yd | 0yd | 45.6° |
| 110mph | 向かい4.47m/s | 139yd | -13yd | 55.6° |
| 110mph | 向かい8.94m/s | 121yd | -31yd | 67.4° |
| 110mph | 追い4.47m/s | 161yd | +9yd | 37.7° |
| 110mph | 追い8.94m/s | 167yd | +15yd | 31.7° |
向かい風で失った距離と、追い風で増えた距離は釣り合っていない。同じ「6番」でも二つの入力で減り方が違う。原著は全高度で一定風という強い仮定を明記しており、そのまま現地の予報値へ適用する表ではない。
番手別の原著計算
Malik・Ranjan・Saha2018のTable2は、10m高で5m/s、粗度0.04mの対数風を使っている。風で増減したキャリーの割合は以下。今回のGD計算とは球の係数も入力も違う。4
| 番手 | 追い風 | 向かい風 |
|---|---|---|
| Hybrid | +5.7% | -8.3% |
| 3番 | +5.5% | -8.2% |
| 4番 | +5.4% | -8.3% |
| 5番 | +5.9% | -9.1% |
| 6番 | +7.9% | -11.9% |
| 7番 | +10.3% | -15.9% |
| 8番 | +13.4% | -20.4% |
| 9番 | +15.4% | -23.5% |
7番の15.9%を自分のキャリーへ掛ければ、自分の実測になるわけではない。原著の球と打出条件における結果として保持する。また、原著Table1の検証用データはCrossfieldの動画に由来しており、著者らが風中で打った実験ではなかった。今回の実測原表からは隔離した。
原著の計算 · TrackMan 2014。原著の6番、初速130mph・14.7度・6088rpm。
- 向かい8.94m/s
- 143yd
無風より41yd短い
- 無風
- 184yd
比較の基準
- 追い8.94m/s
- 207yd
無風より23yd長い
球の初期条件を固定したメーカーのモデル。実測3球の比較ではありません。図の線は無風184ydの位置です。
今回の計算で、足りない風向・風速を埋める
GD計算はJGA掲載2007年報告の球の空力係数を使い、球に対する空気の相対速度で抗力・揚力を求めた。基準は気温25℃、101325Pa、湿度50%、同じ高さで発射・着地、一定風。スピンは飛行中に減衰する。バウンド、地面でのラン、雨、風によるスイングの変化は入れていない。
初速・角度・回転はTrackManが公開する旧版の参照入力を使う。旧版のキャリー値へ合わせて計算を調整してはいない。6場面では150ydを8番で打つ人を想定し、番手名を例として設定した。元資料の番手名は保持し、記事の例の番手とは区別する。飛行の計算に使うのは初速・打出角・回転数で、番手番号そのものは計算に入れない。6、7
5m/sでの結果(C、yd。前後はターゲット方向への投影距離) | 入力 | 無風 | 向かい | 追い | 左からの風の右ずれ | | --- | --- | --- | --- | --- | | ドライバー 初速140mph | 222.0 | 211.0 | 229.5 | 11.7 | | 8番 初速109mph | 149.9 | 137.9 | 157.1 | 11.4 | | 9番 初速104mph | 140.2 | 127.7 | 147.9 | 11.3 | | 短距離入力 初速86mph(元資料のPW) | 107.3 | 96.3 | 114.1 | 9.3 |
主表は2/5/8m/s、向かい・追い・左右・斜め45度を含む95条件。ドライバーの初速167mphも感度比較に含めたが、高風速の一部は原係数の図のRe範囲を越えるため、CSVに外挿の印を付けた。初速140mphの行やアイアンの行と同じ検証度にはしない。
横風の右11.4ydは「自分の散らばりが11.4yd」という意味ではない。軸の傾きゼロ、打出方向ゼロの同じ球について、風の条件だけを替えた着地点の変化だ。自分のいつもの曲がりやミス幅を加えて考えるのは次の段階になる。
モデルの照合結果
無風では、JGA原著のロボット4条件と比較したキャリー差は最大1.82yd。TrackManの風モデル10条件との比較では最大8.07yd違った。後者は異なるモデル同士の差であり、現実の誤差が±8.07ydに収まるという検証ではない。左右の風中着弾について、今回のコードに同じ精度の実測検証はない。 RK4の刻みを0.02秒から0.005秒へ変えた着地点差は、一定風の検査で最大0.0005yd未満、高さで変わる風の検査で約0.0026ydだった。数値計算が安定していても、球の係数・現地風・本人の入力の違いは残る。
球筋と補正量
番手名と無風キャリーが同じでも、打出角、回転数、回転軸が違えば、風中の飛行は同じにならない。今回の6場面は初期条件を固定した比較であり、読者全員に共通する番手表ではない。S6では同じ右曲がり相当の軸+5度の球に、無風と左右5m/sを与えた3軌道も図示する。線は保存したGD計算の座標を使い、左右の違いが読めるよう横方向を拡大している。7、1
GDの条件付き計算
同じ5m/sでも、球の入力で変わる補正量25℃・同じ着地高さ・一定風。初速、打出角、回転数を固定。
| 参照入力 | 無風 | 向かい | 追い | 横風の右ずれ |
|---|---|---|---|---|
| ドライバー140mph | 222.0yd | 211.0yd | 229.5yd | 11.7yd |
| 8番109mph(例) | 149.9yd | 137.9yd | 157.1yd | 11.4yd |
| 9番104mph(例) | 140.2yd | 127.7yd | 147.9yd | 11.3yd |
| 短距離入力86mph | 107.3yd | 96.3yd | 114.1yd | 9.3yd |
狙いと番手を選ぶ6場面
たとえば、普段8番で150ydほど飛ぶ人を想定し、前後の番手も仮に置いて比較する。番手別の平均飛距離を示す表ではない。
以下はC。現場の成功率を測った試験ではなく、何を比較すれば判断が変わるかを見る具体例だ。風速4〜6m/sの幅は、入力として選んだシナリオの範囲であり、95%区間ではない。ランや自分の散らばりを仮定する箇所はその場で明記する。
残り150yd、145ydで池を越える。向かい風を4〜6m/sと読む
| 候補 | 5m/sでの着弾 | 4〜6m/sでの着弾幅 |
|---|---|---|
| 8番 | 137.9yd | 134.9〜140.7yd |
| 7番 | 145.7yd | 143.1〜148.0yd |
| 6番 | 153.5yd | 150.8〜155.9yd |
7番は中央の風なら池を約0.7yd越えるが、6m/sでは手前へ落ちる。今回の条件内では6番が手前145ydを越え、奥165ydにも届かない。ピンまでの距離だけを合わせる判断と、必要キャリーを越える判断では選ぶ候補が変わる。 本人のキャリー誤差を仮に±3yd加えると、6番は147.8〜158.9yd、7番は140.1〜151.0ydになる。この±3ydは仮定で、実測分布ではない。実戦では本人の計測値に入れ替え、モデル差も踏まえて手前の余裕を取る。
GDの条件付き計算 · たとえば8番で150ydの人。池を越える距離145yd、グリーン奥165yd。
- 8番
- 137.9yd
145ydに届かず、手前の池
- 7番
- 145.7yd
池を越える余裕は約0.7yd。6m/sでは143.1ydとなり池側へ
- 6番
- 153.5yd
4〜6m/sの3条件でも150.8〜155.9yd。距離はグリーン内
図は5m/sの着地点。4/6m/sの値は本文に記載。本人のミス幅は足していません。コースの形は説明用です。
左から4〜6m/s。右12ydから池がある
8番をピン方向へ打つと、着地点は右9.1〜13.7yd。150yd先で左10ydへ向く狙いに替えると、着地点は左0.8〜右3.9ydになる。計算では打出方向を変え、風はコース上の同じ方向に固定した。 さらに本人の左右幅を仮に±5ydとすると、ピン方向は右4.1〜18.7yd、左10yd狙いは左5.8〜右8.9yd。後者はこの入力範囲では池側の境界へ触れない。±5ydの外にもミスがある人なら、この表の範囲外が増える。池に入る確率を表してはいない。 使うときは、風による中心のずれを補正してから、自分の通常の幅が危険側へはみ出すかを確認する。
GDの条件付き計算 · 左から5m/s、例の8番。池はピンの右12ydから。真上から見て左右を比較。
ピンを狙う
着地点は右11.4yd
さらに右5yd外すと右16.4yd。池側へ出る。
150yd先の左10ydを狙う
着地点は右1.6yd
さらに右5yd外すと右6.6yd。右12ydの池まで余裕が残る。
右へ追加した5ydは仮定のミス。風が球を運んだ距離と、自分のミスを区別した比較です。確率や実測の分布ではありません。
追い風5m/s。グリーンの奥は155yd
| 候補 | 着弾 | 落下角 | ランを仮に5ydとした停止位置 | 10ydなら |
|---|---|---|---|---|
| PW | 140.6yd | 35.9° | 145.6yd | 150.6yd |
| 9番 | 147.9yd | 34.3° | 152.9yd | 157.9yd |
| 8番 | 157.1yd | 32.7° | 162.1yd | 167.1yd |
9番は着弾だけなら奥に余裕がある。しかし10yd転がる条件なら奥へ出る。PWなら着弾を手前に移せる。ここでの5/10ydは、地面を測った結果ではなく、地面条件が変わると選択が変わることを確認する入力だ。 実際に何yd転がるかは硬さ・芝・斜面・着地速度と回転にもよる。今回の飛翔モデルはそこを予測していない。硬いグリーンで奥が危険なら、ピンへの着弾を満たしただけで番手を確定しない。
GDの条件付き計算 · 追い風5m/s。グリーン奥155yd。ここではラン10ydを仮定。
- PW
- 140.6 → 150.6yd
このランの仮定なら、155ydより手前で止まる
- 9番
- 147.9 → 157.9yd
着弾から転がり、奥155ydを越える
- 8番
- 157.1 → 167.1yd
着弾から転がり、奥155ydを越える
青い点が着弾、茶色の矢印が仮のラン、矢印の先が停止位置。実際の芝・硬さ・斜面からランを予測した図ではありません。
林の中では弱い風。60yd先から開けているティー
初速140mphのドライバーを比較すると、右へのずれは次の通り。 | 全区間1m/sと置く | 2.3yd | | --- | --- | | 最初は弱く、60〜70ydで5m/sへ移る仮定 | 8.1yd | | 全区間5m/sと置く | 11.7yd | | 全区間5m/sで、222yd先の左10ydを狙う | 1.7yd |
ここでは60〜70yd先で風が強まる遮蔽形状を仮定した。「ティーで1m/sだから、ずれは2yd程度」という読みは、球の先にも弱い風が続くことを前提にしている。 同じ5m/sで5Wの参照入力へ替えると、キャリー約186.0yd、右ずれ約12.3yd。この例では短いクラブにしただけで風の横ずれは小さくならない。短く打つことで危険な場所へ届かなくなるのか、風への補正を変えたいのか、クラブ変更の目的を確かめる。
GDの条件付き計算 · 初速140mphのドライバー。左からの風、林の位置は仮定。
- 全区間を弱い1m/sと置く
- 右2.3yd
手元の弱い風が、最後まで続く仮定
- 林の先で5m/sに変わる
- 右8.1yd
60〜70yd先で風が強まる仮定
- 全区間を5m/sと置く
- 右11.7yd
最初から強い風を受ける仮定
狙い・番手を替えた比較
全区間5m/sで222yd先の左10ydを狙うと右1.7yd。5Wの別入力ではキャリー186.0yd、右12.3yd。短いクラブでも、この例では風の横ずれは減っていません。
線は保存した計算座標。左右を拡大した図で、縦横の縮尺は異なります。実在する林の風を測った結果ではありません。
10yd打ち下ろし。向かい風が弱まる可能性もある
| 候補 | 無風 | 向かい4m/s | 向かい6m/s |
|---|---|---|---|
| 8番 | 160.6yd | 148.8yd | 141.8yd |
| 7番 | 167.5yd | 157.3yd | 151.0yd |
| 6番 | 175.9yd | 165.3yd | 158.9yd |
145〜170ydの間へ落としたいとすると、強い風の手前だけを見る6番は、風が落ちたとき奥へ出る。8番は強い風で手前に届かない。7番はこの3条件では151.0〜167.5ydへ収まるが、本人の散らばりやランまで足す余裕は別に必要になる。 また、8番・10yd打ち下ろしで、最初は弱く飛行2〜3秒後に5m/sへ強まる仮定では155.9ydだった。全飛行中の一定風と、途中からの突風は同じ結果にならない。 計算したのは低い着地平面までの飛行で、途中の谷の地形や上昇流は入れていない。手前を越える最小距離と、風が落ちたときの最大距離を両方並べるための例だ。
GDの条件付き計算 · 着地点が10yd低い。落としたい範囲は145〜170yd。
向かい風6m/sの場合
風が止んだ場合
- 8番
- 141.8〜160.6yd
6m/sでは手前145ydに届かない
- 7番
- 151.0〜167.5yd
無風・4・6m/sの3条件で、距離は範囲内
- 6番
- 158.9〜175.9yd
風が止むと奥170ydを越える
図は無風と6m/s。本人のミス幅、ラン、谷の上昇流は含めていません。
普段の右曲がりに、横風が重なる
8番・同じ初速/打出角/回転数で、軸を右曲がり相当の+5度に固定すると、無風の着地点は右5.6yd。左から5m/sなら右17.1yd、反対向き5m/sなら左5.7ydになった。
| 入力 | 無風 | 左から5m/s | 右から5m/s |
|---|---|---|---|
| 軸0度 | 0.0yd | 右11.4yd | 左11.4yd |
| 軸+5度 | 右5.6yd | 右17.1yd | 左5.7yd |
| 軸-5度 | 左5.6yd | 右5.7yd | 左17.1yd |
風が逆なら、普段の曲がりを打ち消して反対側へも出る。狙いを決めるときは、自分の打出方向・回転軸の傾き・高さと、その日の風を組み合わせる。表の軸-5度は、違う持ち球の人と比べるために置いた条件だ。
GDの条件付き計算 · 例の8番。回転軸+5度の同じ球で、風だけを替える。
- 右から5m/s
- 左5.7yd
普段の右曲がりを打ち消し、左側へ
- 無風
- 右5.6yd
この入力での、元の右曲がり
- 左から5m/s
- 右17.1yd
風と右曲がりが重なり、右側へ
線は計算した飛行を真上から見たもの。左右を拡大し、縦横の縮尺は変えています。高さや回転も変われば結果は別になるため、すべての8番に共通する値ではありません。
ラウンドで何を見て、何を残すか
GDの実戦上の提案として、次の順で情報を揃える。 ・無風に近い条件で測った自分のキャリーと、普段の前後左右の幅を出発点にする。 ・足元、離れた旗、樹冠を見比べる。鳥や雲は、風が違う場所や自然現象を疑う補助に使う。 ・風を一点に決めず、弱い側/強い側と風向の候補で、手前・奥・左右の着地点を比べる。 ・池や崖なら、ピンに近い平均値より、障害までのキャリーと余裕を見る。 ・打った後は、風だけでなく打点、打出方向、使用球、着地位置も残す。ミスヒットを風の補正表に取り込まない。
この手順自体のスコア改善量は検証していない。今回の数字は、何を知らないと番手を誤るのかを整理するために使う。
研究用の計測装置には使う場面の制限がある。現行R&A規則4.3aは、予報の気象情報取得と、コース上での風速測定や人工物による風の判定を区別している。装置からその場の推奨番手・狙いを得る使い方にも制限がある。計測・計算を行う練習と、競技中の判断は規則に沿って運用する。18
原表・計算データと照合
原著の集計表、図の概読、GDの計算を別ファイルで配布。原著PDFや未公開の個票は再配布していません。風中のGD計算は、十分な球数の独立実測で検証された予測器には達していません。
TrackManの全10条件を見る
| 初速 | 風 | キャリー | 落下角 |
|---|---|---|---|
| 130mph | 無風 | 184yd | 48.0° |
| 130mph | 向かい4.47m/s | 166yd | 58.1° |
| 130mph | 向かい8.94m/s | 143yd | 69.5° |
| 130mph | 追い4.47m/s | 198yd | 39.5° |
| 130mph | 追い8.94m/s | 207yd | 32.7° |
| 110mph | 無風 | 152yd | 45.6° |
| 110mph | 向かい4.47m/s | 139yd | 55.6° |
| 110mph | 向かい8.94m/s | 121yd | 67.4° |
| 110mph | 追い4.47m/s | 161yd | 37.7° |
| 110mph | 追い8.94m/s | 167yd | 31.7° |
出典
2026年10月30日に原典照合。自然観察の公式尺度、実測、原著モデル、今回の計算を本文と図で区別しました。
- 鳴尾丈司・溝田武人 (2009) 3次元ゴルフ飛翔軌道の自然風による影響 →
Table1,Fig6-7 PDF3/印刷154;Fig8-14 PDF3-4。全45球の数表なし。Table1は1例の初期条件。Fig6黒丸は実測着地点、線は計算。仮想5m/s格子は原著計算。
- 溝田武人・朴盛敏・深町友和・鳴尾丈司 (2004) 自然風境界層中を飛翔するゴルフボールの3次元軌道の実験と解析 →
PDF2,Fig4-5;2003-09-30新宮海岸。著者順はPDFを採用。J-STAGE書誌は深町・溝田・朴・鳴尾の順。PDF文書名の訂正版を後年の正式訂正告示と解釈しない。数表なし。2009年の45球と独立と数えない。
- 溝田武人・朴盛敏・鳴尾丈司・深町友和 (2004会議/2005書誌) 自然風境界層中を飛翔するゴルフボールの3次元飛翔軌道の実験と解析 →
印刷281-286,Fig4-5,Fig8。13.68m/9.26mはモデルと実測の比較図で定義した偏差。個人の散らばり/予測区間にしない。
- Shantanu Malik, Subodh Ranjan, Sandeep Saha (2018) Effect of Wind on the Trajectory of Approach Shots in Golf →
Table1-2,Eq7,参考文献4。Table1は著者らの風中フィールド実験ではなくCrossfield動画由来の検証用値。原動画未照合。査読誌の2020年原著とは呼ばない。
- TrackMan Editorial Team (2014-07-09) The Normalization feature explained →
PGA/LPGA Tour 6 iron 画像表2点。10条件を10打球の実測にしない。横風やウェッジへの倍率流用はしない。
- TrackMan (旧版;2024比較リンクで提供) PGA TOUR AVERAGES / LPGA TOUR AVERAGES 旧版 →
2024記事のwhat changedリンク先旧表。2023/2024年の新平均と取り違えない。測定高度/天候未補正。一人の連続したバッグではない。球の実測散らばりは収録なし。
- R&A/USGA;JGA掲載 (2007報告/AppendixC 2006-08-25) Second Report on the Study of Spin Generation →
AppendixC Eq5,7,8;Fig7-8;Table3 PDF140。当時の球。今回の風/3次元拡張を検証した原著ではない。Reの10万正規化は図と表の再現による実装上の解釈。
- Takeru suzuki, Taishi Asai, Tetsuro Kita (2025) Wind Effect in Short-Range Putting →
Methods PDF3/6;Results PDF6,Fig6 PDF7;印刷41-54。人のパットではなくランプ。カップなし。飛翔中の横ずれへ流用しない。±はSD。
- Sai Kulkarni et al. (2026) Seeing Gusty Winds: Optical Tracking of Tree Motion Captures Peak 3-s Gust Velocities →
Methods2.2;Table1;Discussion4.2。ナシ近傍の風速計を使用。オーク近傍に風速計なし。目視や無校正映像の精度ではない。
- Rolf Weinzierl et al. (2016) Wind estimation based on thermal soaring of birds →
Methods2.4-2.5;Results3.1.1-3.1.3。風速計による同位置の直接検証なし。±0.47/0.87m/sはモデルCIの分布。肉眼の誤差でも95%一律精度でもない。
- Yoshinari Yonehara et al. (2016) Flight paths of seabirds soaring over the ocean surface enable measurement of fine-scale wind speed and direction →
本文;東京大学2016-07-26発表も照合。飛行戦略と高度差に偏り。海上のGPS推定であり、コースで鳥の頭を見る方法の検証ではない。
- 気象庁 (2026-10-30確認) 風について/予報用語・風 →
風向・風速・瞬間風速・風力階級表・海陸風。観測点と球の飛行経路の風を同一視しない。
- NOAA/NWS (2026-10-30確認) Beaufort Wind Scale →
風力2-5の陸上記述。風力番号を気象庁相当m/s範囲に接続。個々の樹種/旗の校正式ではない。
- 気象研究所 (2026-10-30確認) 気象コンソーシアムデータ(大気追跡風)の内容 →
項目1,3,5。衛星画像の高度付き推定。地上から見た雲速を球高度へ適用しない。
- WMO (2026-10-30確認) International Cloud Atlas 2.4.3 →
山岳波/レンズ雲/ローター雲。雲の有無から球高度の風速や横補正を定量化しない。
- NOAA/NWS (2026-10-30確認) Turbulence →
Mechanical/thermal turbulence。場所ごとの増速倍率は掲載なし。任意の谷に一定倍率を使わない。
- Rick V.;Mike Madson(Titleist R&D) (2019) Golf Ball Physics and the Anatomy of the Stinger Shot →
A Golf Ball for Consistent Results。off the teeでありcarryと特定しない。入力/標本/測定方法がなく、今回の数表の校正には不使用。
- R&A (現行規則2026-10-30確認) Rule4.3a(1)-(3) →
Distance/directional;wind/weather;information during round。この研究の計算表と装置は競技中の自動番手推薦や風測定を勧めるものではない。