ゴルフ百科事典

ゴルフ場のIPMでいう「防除のしきい値」は、害虫の数だけで決めるの?

IPM・防除判断

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まず答え

いいえ。防除のしきい値は害虫の数だけではなく、場所、芝の状態、予想される被害、プレー品質、気象、回復力などを踏まえて「対策を始める水準」を決めます。グリーンとフェアウェイ、ラフでは許容できる被害が違うため、同じ害でも基準は変わります。

詳しい解説

IPM(総合的病害虫・雑草管理)では、害虫や病害、雑草を見つけた瞬間に一律で薬剤を使うのではなく、まず発生量と被害の進み方を監視し、「どこまでなら許容できるか」を決めます。その対策開始の判断点が、防除のしきい値(action threshold)です。

GCSAAのIPM資料では、このしきい値は単純な害虫数だけでなく、芝の健康状態、水分・排水、刈込み、栄養、日陰や風通し、、利用目的、地形、季節、回復力、大会日程、予算など複数の条件で変わるとしています。害虫数や雑草被覆率のような数値を使う場合もありますが、すべてのゴルフ場に共通する一つの固定値があるわけではありません。

特に場所による違いが重要です。Penn State Extensionは、パッティンググリーンでは滑らかで傷の少ない表面がプレーに直結するため、フェアウェイやラフより許容できる被害が小さく、しきい値も低くなりやすいと説明しています。同じ害虫が同じ数だけいても、グリーンとラフで同じ判断になるとは限りません。

また、しきい値を超えたからといって、必ず広範囲へ薬剤を散布するという意味でもありません。発生場所や原因を確認し、耕種的・機械的・物理的・生物的な方法で抑えられるかを検討し、それでは許容水準を維持できない場合に必要な防除を選びます。IPMの狙いは害をゼロにすることではなく、芝の健康とプレー品質を保ちながら、必要な時に必要な対策を選ぶことです。

したがって実務では、「何匹いたら散布」という数字だけを覚えるより、①どの場所か、②どの程度の被害まで許容できるか、③芝が回復できる季節か、④被害が増える条件か、⑤薬剤以外で抑えられるか、をセットで判断します。