スチールファイバーの違いと選び方
i・fc・重量別の振り心地と球筋を比較
アイアンを少し軽くしたい。でも、切り返した瞬間に頼りなくなるのは嫌だ。スチールファイバーが気になるのは、そんなときだと思う。
ただ、名前にスチールが入っているからといって、どれも硬くて低い球になるわけではない。i70とi80では当たり際の動きが違い、i95は同じ95gでもRとSでしなりの感じ方が変わる。重いi110を打って、高さが出たという試打もある。
最初に比べたいのは、軽いか重いかだけではなく、トップから下ろすときにどれだけしなりを感じたいか。そこからiとfc、重量帯と硬さを選んでいこう。
国内公式仕様と試打者本人の記述をもとに執筆。GOLF DNAが全モデルを実打計測した記事ではない。別の打者・ヘッドによる試打を、同条件の性能順位にはしていない。
軽くしても、切り返しの手応えは残したい

中身はカーボンで、その外側に細いスチール繊維を巻いている。スチールシャフトにカーボンを被せた構造ではない。軽量モデルもあるが、振ると頼りない、という感触だけを想像すると少し違う。
i110を約5年使っていた永井延宏は、i80を試しても手元に重さと張りを感じ、当たり際には素早く戻る感触があったと話している。持ったときは軽いのに、下ろすときの手応えは残っていた、という試打だ。
一方、吉田朋広が打ったi70は、先が球を拾い上げる感触があった。同じシリーズでも、i80より当たり際の動きを感じやすかったという。軽くする目的が「最後まで振り切りたい」のか、「球を上げる助けも欲しい」のかで、最初の候補は変わる。
i80は85g。数字だけで並べると選び違える
| モデル | 公表重量 | 国内掲載の硬さ | 調子 |
|---|---|---|---|
| i70cw | 70g | A・R・S | 先中 |
| i80cw | 85g | R・S | 中 |
| i95cw | 95g | R・S・X | R:中/S・X:中元 |
| i110cw | 110g | R・S・X | R:中/S・X:中元 |
| i125cw | 125g | S・X | 中元 |
i80は名前の通り80gではなく、公式のカット前重量は85g。i70cwとの間には15gの差がある。i95からi110も15g違うので、一つ重くするだけでも手元に感じる重さは変わりうる。
cwは番手別のテーパー仕様。同じi70でもパラレル仕様の公表値は74gで、cwの70gとは違う。さらに、i80のパラレルにはAやL、Xもあるが、上のcw表へそのまま足してはいけない。試打クラブと注文する仕様を揃えたい。
2023年5月以降、i80cw・i95cwのラベルにもcw表記が順次付いた。メーカーは、このラベル変更による性能差はないと説明している。表記のない中古品を、見た目だけで別設計の旧型と決めつける必要はない。
i70・i80・i95は、先の動きと切り返しで比べる
吉田朋広は、EPON AF306の7番にi70・i80・i95を装着し、それぞれRとSを試している。重量帯と硬さの違いを読むうえで、今回いちばん参考にした試打だ。
| モデル | 切り返し・当たり際 | 出た球/硬さの違い |
|---|---|---|
| i70 | 先が球を拾う感触 | Rは滑らか。Sは先の戻りが走りすぎず、左への巻き込みが少なかった |
| i80 | i70より重量感があり、先の走りは控えめ | Sは打ち込めると高さが出る感触。Rは下ろすときに手元のしなりを感じた |
| i95 | Sは手元に張りがあり、全体に重厚な手応え | Rは切り返しで間を取りやすく、Sより高い球が出た |
i70の軽快さは欲しいけれど、当たり際に先が動く感じは減らしたい。そういう人なら、i80も並べて打つと違いを探しやすい。逆に、i80Sで球が低くなり、上げようとして強く振ってしまうなら、i80Rやi70へ戻ったときの打ち出しを見たい。
i95は、Sで手応えが強かったからといって、重さまで合わないとは限らない。Rで切り返しの間が取れて高さも出るなら、95gの重さを残す選択ができる。軽量化と軟らかくすることを、一度に済ませようとしなくていい。
i110は重さで間を取り、i125はその重さを使い切れるか
永井延宏がi110で評価していたのは、手元側の重さで切り返しのタイミングが取りやすく、当たり際にも押せる手応えがあったこと。軽さを優先して振り急いでしまう人には、この重さが助けになる可能性がある。
i125では、その手元の重量感がさらに増した。ただ、i110を普段使う永井自身も、打つと少し重いと感じている。重くすれば自動的に方向が揃う、という試打ではなかった。
球筋については、ズバババ!GOLFのたけちゃんがi80Sとi110Sを打ち、どちらも高い球と7000rpm台のスピンを記録している。ヘッドやロフトなど全条件を確定できないため数値の優劣は付けないが、i110Sだから必ず低くて止まらない、とは言えない例だ。
重いスチールから替えるなら、まずi110とi95を比較する方法がある。i110で最後まで振れて距離も合うなら残していい。終盤だけ振り遅れる、抑えたショットでも力が要るなら、i95にしたときの打点と距離の揃い方を見たい。
iで球が上がりにくいなら、fcの長い番手も打ってみたい
fcはフライトコントロールの略。ロング・ミドルは球を上げ、ショートは打ち出しを抑えるという番手別の設計だ。公式の調子も、2〜4番は先中、5〜7番は中、8番〜PWは中元と変わっている。
堀越良和の広告企画での試打では、iは余計に走る感触が少なく振り抜きやすい一方、fcは球を上げやすく、つかまりすぎる感じも少なかったという。ただし重量・硬さ・使用ヘッドの詳細が揃わず、すべてのfcがすべてのiより高くなる、という比較にはできない。
| モデル | 重量 | 硬さ | 先端の仕様 |
|---|---|---|---|
| fc70 | 75g | F2・F3・F4 | パラレル |
| fc80 | 85g | F3・F4 | パラレル |
| fc90cw | 90g | F3・F4 | テーパー |
| fc90 | 95g | F3・F4 | パラレル |
| fc115cw | 115g | F4・F5 | テーパー |
| fc115 | 115g | F4・F5 | パラレル |
fc90cwは90gだが、fc90のパラレルは95g。同じ90という名前でも、公表重量と組み方が違う。i95cwとfc90を「同じ95gだから」と比較する場合も、試打クラブの仕様を確認しておきたい。
7番ではどちらも打ちやすいのに、5番で差が出るかもしれない。fcを選ぶなら長い番手の上がり方と、9番やPWで距離を抑えたときの球を続けて見たい。高さが欲しい番手と、余計に飛ばしたくない番手を両方打って選ぶ。
黒いPrivate Reserveは、もっと硬いiという意味ではない
黒いシャフトのPrivate Reserveは、国内ではi95cwとi110cwのR・Sが掲載されている。メーカーが説明する違いは、振動数を厳格に管理していること。重量の違う新シリーズというより、iの特性を保ちながら管理を詰めたモデルとして考えたい。
公式の振動数表でも、Private Reserveは通常のi95cw・i110cwに準ずる扱いだ。Private Reserveだから通常品より一段硬い、あるいは必ず球が低い、と読む根拠にはならない。
通常iのRとSで、どちらのしなり方が好きか。そこが決まってから、振動数管理や黒い仕上げを選ぶ順番でよさそうだ。なお、厳格な管理という説明だけで、DGのEX Tour Issueと同じ重量公差を保証する製品だとは言えない。
MCI・トラヴィル・ラウネとは、何を打ち比べるか
新MCIなら、当たり際にどれだけ先が動くか
新MCIをAF507の7番で打った吉田朋広は、80Sでは当たり際の先の動きを感じ、90Sではその動きが控えめだったと書いている。スチールファイバーのi80・i95を選ぶときと同じく、ブランド名だけで振り心地を一括りにしにくい。
MCI90Sとi95cwなら公表重量は近いが、しなり方まで同じとは限らない。切り返しの手応えを残しつつ当たり際を落ち着かせたいのか、先が少し戻って球を拾う感じも欲しいのか。試打ではその違いを探したい。
トラヴィルとは、重さが近くてもしなりの手応えを確かめる
マイキャディの投稿者ヴァルは、Private Reserveのi110cw Sを使い、手元から滑らかにしなりながら先が余計に動きにくく、高さも出ると評価している。同じ人は、使用したTRAVIL115Sでは先の戻りを強く感じて左へ曲がることがあったと書いている。
これは一人の使用例で、同一ヘッドでの比較ではない。TRAVIL全仕様が左へ行く、という話には広げられない。それでも、重さだけを揃えて選ぶと、下ろすときのしなりや当たり際の戻りが予想と違うことはある。TRAVILでその動きが合っているなら、無理にiへ替える理由もない。
ラウネとは、長い番手のお助け感と振り抜きの感触
ラウネi90Sを購入したNaoも、購入前にスチールファイバーを試している。長い番手でしなりが増すラウネの助けを好みつつ、スチールファイバーの素早く振り抜ける感触にも迷ったという。スチールファイバー側のモデル・硬さは確認できず、i95やfc90との直接比較とは言えない。
5番の球を上げることが一番の目的なら、ラウネとfcの長い番手も候補になる。7番で気持ちよく振れるだけで決めず、今困っている番手で高さとキャリー差が戻るかを確かめたい。
| SteelFiber i・cw | NEW MCI・7番用 | TRAVIL・7番用 |
|---|---|---|
| i80cw:85g | 80S:86g | 85S:88g |
| i95cw:95g | 90S:96g | 95S:99g |
| i110cw:110g | 100S:106g | 105S:108g |
| i125cw:125g | 近い重量の現行通常モデルなし | 115S:118g |
jとh、ユーティリティ用hlsはiの軽重違いではない
国内にはi・fcのほか、jとhもある。j68・78・88・108は、iから寛容性と飛距離性能を高める狙いのシリーズ。hもh-PLUSとh-TOURに分かれ、アイアン用のパラレル仕様として掲載されている。今回のiの試打結果を、そのままjやhへ当てはめない。
j68は、現行の公式表ではカット前74g。68gのシャフトだと思って選ぶと話がずれる。国内の公式HTMLとカタログで74gを確認している。モデル名だけを見て、i70cwより軽いと決めないようにしたい。
名前が似ているhlsは、ユーティリティ用の別製品で、ロングアイアンも対象に含む。hシリーズのアイアン用シャフトと同じものではない。工房では、シリーズ名だけでなく、モデル・硬さ・番手・先端の仕様まで伝えるのが確実だ。
最初の二本は、いま嫌な球が出る場面から選ぶ
ここからはGOLF DNAの試打候補の提案。ヘッドスピードだけで重量や硬さを割り当てず、今のクラブで気になる場面から二本を選ぶ。
| いま気になること | 比較候補 | 確かめたい球・感触 |
|---|---|---|
| 軽くしたいが、先が走る感じは増やしたくない | i70とi80の同じフレックス | 切り返しの張りと、当たり際の先の動き |
| i95Sでしならせようと力んでしまう | i95Sとi95R | 力を抜いても高さが出るか。左へ巻き込まないか |
| 重いスチールから少し軽くしたい | i110とi95 | 終盤まで振れるか。抑えた球の距離が合うか |
| 7番はいいが5番の高さが足りない | 近い重量のiとfc、またはラウネ | 5番のキャリーと6番との間隔、9番の距離感 |
| 同じ重さのカーボンでも当たり方が違う | 現在のシャフトと候補のR・S | 重さを変える前に、しなる場所と戻るタイミング |
一球だけ高く飛んだかより、いつもの振り方で打点と距離が揃うかを見る。候補を打ったあとで今のクラブへ戻すと、新しい一本で無理をしていたかも分かりやすい。切り返しを強くしたり、球を上げようとすくったりせずに打てる一本を残したい。
よくある疑問
スチールファイバーはスチール? カーボン?
芯はカーボンで、その外側にスチール繊維を巻いた複合シャフト。スチールの管が芯に入っている構造ではない。
i80の重さは80g?
国内公式のi80・i80cwはカット前85g。i70cwは70g、パラレルのi70は74gで、モデル名と公表重量が一致しないものもある。
Sが硬く感じたら、重量を下げるべき?
重さ自体は振りやすいなら、同じモデルのRも比較したい。吉田朋広のi95試打では、Rで切り返しの間が取りやすく、Sより高い球が出た。全員が同じ変化を得る保証ではない。
i95とi110はどちらが低い球になる?
重量だけでは決められない。i110Sでも高い球が出た本人試打がある。ヘッドやロフト、硬さ、打ち方を揃えて、自分の打ち出しとキャリーを比べたい。
iとfcの違いは?
fcはロング・ミドルの高さとショートの抑えた弾道を狙う番手別設計。iで長い番手の高さが足りないなら比較候補になる。ただしiとfcの全仕様の球筋を同一条件で順位付けした資料ではない。
Private Reserveは通常のiより硬い?
振動数を厳格に管理したモデルで、公式の参考振動数は通常のi95cw・i110cwに準ずる。通常品より一段硬い、またはDG EXと同じ重量管理だとする根拠はない。
MCI・トラヴィル・ラウネより球が低い?
ブランド全体の高低は決められない。同じスチールファイバーでもi70とi95、RとSで感触が違う。近い重量の具体的なモデルを選び、同じヘッド・長さで高さと距離の散り方を比べたい。
cwのないラベルは古くて性能が違う?
i80cw・i95cwでは2023年5月以降にcwを付けるラベル変更があり、メーカーはその変更による性能差なしと説明している。ただし、本当にテーパーのcw仕様か、パラレル仕様かは別に確認する必要がある。